2016年12月10日

2016.12.9 人形浄瑠璃12月文楽公演@国立小劇場(その2)

2016.12.9 人形浄瑠璃12月文楽公演@国立小劇場・第二部

演目
−国立劇場開場50周年記念−
 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」
   七段目  祇園一力茶屋の段
           太夫 由良助=(前)豊竹咲太夫、(後)豊竹英太夫
               力弥=豊竹咲寿太夫、十太郎=竹本津國太夫、
               喜多八=竹本文字栄太夫、弥五郎=竹本南都太夫、
               おかる=豊竹呂勢太夫、仲居=豊竹亘太夫、
               一力亭主=豊竹始太夫、伴内=豊竹靖太夫、
               九太夫=竹本三輪太夫、平右衛門=豊竹咲甫太夫
           三味線=(前)鶴澤清介、(後)鶴澤清治
           長唄 唄=山口太郎、芳村辰三郎
               三味線=塚原勝利、芳村伊十治郎、
                      山口聡、杵屋正叡
   (休   憩)
   八段目  道行旅路の嫁入
           太夫 小浪=竹本津駒太夫、戸無瀬=豊竹芳穂太夫、
               ツレ=豊竹靖太夫、豊竹咲寿太夫、豊竹亘太夫
           三味線=鶴澤清介、鶴澤清志郎、鶴澤清𠀋、
                 鶴澤燕二郎、鶴澤清允
   九段目  雪転し(ゆきこかし)の段
           太夫=豊竹松香太夫、三味線=野澤喜一朗
         山科閑居の段
           太夫=(前)竹本三輪太夫、(後)竹本文字久太夫
           三味線=(前)豊澤富助、(後)鶴澤藤蔵
           尺八=川瀬順輔
    (休   憩)
   十段目  天河屋の段
           太夫=豊竹睦太夫、三味線=鶴澤清友
   十一段目  花水橋引揚の段
           太夫 由良助=豊竹芳穂太夫、若狭助=豊竹希太夫、
               竹本文字栄太夫
           三味線=竹澤團吾
   <人形役割>(各段共通)
     寺岡平右衛門・加古川本蔵=桐竹勘十郎、
     大星由良助=吉田玉男、本蔵妻戸無瀬=吉田和生、
     本蔵娘小浪=吉田勘彌、大石妻お石=吉田蓑二郎、
     斧九太夫=桐竹勘壽、鷺坂伴内・天河屋義平=吉田玉志、
     おかる=吉田蓑助、力弥=吉田玉佳、若狭助=吉田幸助  外

一日置いて、文楽の忠臣蔵後半である。
先月までの歌舞伎公演で、七段目までの“予習”は済んでい
るが、今月はまだ歌舞伎を見ていないので、八段目以降は、
“未知の世界”(笑)

七段目、茶屋場は、登場人物の多い段で、しかも、これをひ
とりの太夫がそれぞれ一役を演じる(掛合というらしい)かた
ちで上演するので、太夫さんの出入りが頻繁にある。

しかも、平右衛門役は、最初の登場場面では、上手の定位
置(床)に席がなく?、下手に仮の出床を設けて登場。見台
を置くスペースもないようで、本なしでの語りになる。

そんな珍しい人の行き来に気をとられもしたが、由良助の、
酔ったふりの演技、おかると平右衛門の掛け合いの緊迫感
など、見どころはが多いのは歌舞伎と同じで、長丁場を飽き
させない要素はたっぷりだ。

歌舞伎の七段目は、1時間50分かかったが、文楽ではそれ
よりも30分ほど短い。そのためより一層、凝縮された面白さ
があるようだ。(歌舞伎では、“役者を見せる”ための入れ事が多く
て、長くなるのだろう)

八段目以降は、塩谷浪人たちと関わった、周囲の人々に物
語の中心が移る。

まずは、桃井家の家老であり、殿中刃傷の際に判官を抱き
とめた加古川本蔵とその妻子の件。

本蔵の娘・小浪と、大星の息子・力弥が許婚の間柄だった
ことは、歌舞伎では二段目にちらっと出てきたが、今回の文
楽公演では演じられていない。

なので、少々唐突な感も否めないけれど、まあ、常識の範囲
内、ということなのか。

力弥を思う小浪の一途な、しかし幼い恋心を、道行で情感豊
かに、たっぷりと描いた後、山科の大石家では、戸無瀬とお
石、そして、由良助と本蔵の、“大人同士”の切迫したやりとり
が見どころとなる。

ともに、家老という役職にいた大星家と加古川家、何かひとつ
掛け違っていれば、由良助と本蔵、お石と戸無瀬、それぞれ
の立場は、まったく逆になっていたかもしれない。

主君のためを思ってのことではあるが、自分が師直に賄賂を
贈ったことが、塩谷家の苦難の元となったと悔やむ本蔵・・・
そして、それが、愛しい娘の悲しみを招いたのだ・・・。

武士としての節を曲げた悔いと、娘を不幸にしてしまった父と
しての悔い。本蔵の中で、どちらが重かったのか・・・江戸時代
の武士の倫理観では、前者ということになるのだろうけれど、
庶民の涙を誘うのは、当然、後者であったろう。

十段目は、天河屋義平の男気がなんと言っても見せ場なのだ
けれど、義士たる者たちが、義平を騙してその心底を確かめ
ようなんて・・・ちょっとどうなの?と思わないでもないね。

大詰に、討入りそのものの場がなかったのは、かなり意外だっ
たけれど、考えてみれば、たくさんの人形たちに立ち回りを演
じさせるのって、無理・・・だよな。しょうがないですね。

ひとつひとつの段が割に短くて、テンポよく進んで行った第一
部と対照的に、七段目と山科閑居がともに1時間半ほど。
じっくり、たっぷりと、人々の心情を語る場面に、文字通り、息
を詰めて見入ってしまった・・・・ほんと、疲れたよ。

でも、その疲れが、なんとも心地よいのです。

さて、来週は、いよいよ歌舞伎の方の大詰を見に行く。
今度は文楽の“予習”が、どう役立つか?・・・それもまた楽しみ。
posted by JTm at 10:57| 文楽 | 更新情報をチェックする

2016年12月09日

2016.12.8 月例三三独演@イイノホール

2016.12.8 月例三三独演

演目
柳家ろべえ      替り目
柳家三三       嶋鵆沖白浪(十一)
  (仲 入 り)
柳家三三       嶋鵆沖白浪(十二)

ろべえ「替り目」。元帳までの前半。
ラバウル小唄で俥屋を呼んでしまうところや、酔っ払い
が下唇を突き出すところなど、明らかに白酒師の替り目。

ただ、持ち味として、白酒師ほどの明るさがないから、な
んとなく、人情噺っぽく感じられる・・・まぁ、好き好きだが。

さて、一か月抜けたけれど、「嶋鵆」ついに大詰め。
前回は、島抜けして銚子に流れ着いた一行が、三手に分
かれるところから、喜三郎とお虎の動向を追ったらしい。

今回は、前半は、小菅の勝五郎と、義兄弟となった三日
月小僧庄吉のその後。

後半は、ふたたび喜三郎・お虎に戻り、ここに玄若坊と
梅津長門がからんで、すべての物語が終結する。

5年前の口演と、内容はほぼ同じだったようだ。

前半では、父を殺して店を乗っ取った、おせん婆と目明し
の湯屋重を、勝五郎と庄吉が襲う。

勝五郎の実家の旅籠に泊まった庄吉が、「これが最後」と
遊びつくす挿話は愉快。ただ、肝心の?殺しの場面を、な
んだかラジオドラマみたいな、擬音で語ったのは、なぜ?

派手な血しぶきの残酷描写を避けたのか?・・・まあ、あん
まりやり過ぎると、講談調になってしまうけれど。

仲入り後は、「中の舞」で上がる。これも前回の連続口演と
同様だが、正直、噺の内容にはあまりそぐわないなという
印象も・・・ないでもない。

ここで際立つのは、なんと言ってもお虎の、見事なまでの
悪女ぶり。冒頭、春木某と名乗る梅津長門を脅す、しんね
りとした口調に、圧倒的な凄味が感じられる。

貞女よりも悪女が得意な三三師・・・まさに、面目躍如。
(またまた思ってしまう・・ ・この人、きっと、女性不信だ・・・と。)

そのお虎に比べて、最初は颯爽としてカッコよかったはず
の喜三郎は、なんとも精細を欠くと、言わざるを得ない。

なんかなー、お虎と出会って、いいところをみんな持って行
かれちゃったんじゃない?って感じ。
・・・女は強し。 と言ったら、あまりにも月並みだけどね。
posted by JTm at 11:03| 落語 | 更新情報をチェックする

2016年12月08日

2016.12.7 人形浄瑠璃12月文楽公演@国立小劇場(その1)

2016.12.7 人形浄瑠璃12月文楽公演@国立小劇場・第一部

演目
−国立劇場開場50周年記念−
 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」
   大 序  鶴が岡兜改めの段
           太夫=豊竹亘太夫、竹本小住太夫、豊竹咲寿太夫
           三味線=鶴澤清允、鶴澤燕二郎、野澤錦吾、鶴澤清公
         恋歌の段
           太夫 師直=豊竹始太夫、顔世=竹本南都太夫、
               若狭助=豊竹希太夫
           三味線=豊澤龍爾
   二段目  桃井館本蔵松切りの段
           太夫=豊竹睦太夫、三味線=野澤錦糸
   三段目  下馬先進物の段
           太夫=豊竹希太夫、三味線=鶴澤清公
         腰元おかる文使いの段
           太夫=竹本三輪太夫、三味線=野澤喜一朗
         殿中刃傷の段
           太夫=竹本津駒太夫、三味線=鶴澤寛治
         裏門の段
           太夫=豊竹芳穂太夫、三味線=鶴澤清馗
  (休   憩)
   四段目  花籠の段
           太夫=豊竹呂勢太夫、三味線=竹澤宗助
         塩谷判官切腹の段
           (切)太夫=豊竹咲太夫、三味線=鶴澤燕三
         城明渡しの段
           太夫=豊竹亘太夫、三味線=野澤錦吾
  (休   憩)
   五段目  山崎街道出合いの段
           太夫=竹本小住太夫、三味線=鶴澤寛太郎
         二つ玉の段
           太夫=豊竹靖太夫、
           三味線=鶴澤清𠀋、胡弓=鶴澤燕二郎
   六段目  身売りの段
           太夫=豊竹咲甫太夫、三味線=鶴澤清志郎
           長唄 唄=山口太郎、芳村辰三郎
               三味線=塚原勝利、芳村伊十治郎、
                     山口聡、杵屋正叡
         早野勘平腹切の段
           太夫=豊竹英太夫、三味線=竹澤團七
   <人形役割>(各段共通)
     塩谷判官・本蔵妻戸無瀬=吉田和生、高師直=吉田玉也、
     顔世御前=吉田文昇、若狭助=吉田幸助、足利公=桐竹亀次、
     加古川本蔵=桐竹勘十郎、鷺坂伴内=吉田玉志、
     早野勘平=豊松清十郎、おかる=吉田一輔、
     大星由良助=吉田玉男、力弥=吉田玉佳、石堂=吉田清五郎、
     薬師寺=吉田文哉、与市兵衛=吉田勘市、定九郎=吉田蓑紫郎、
     千崎弥五郎=吉田蓑一郎、原郷右衛門=吉田玉輝、
     与市兵衛女房=桐竹勘壽、一文字屋=吉田玉勢   外

文楽の忠臣蔵は、たぶん、初見である。国立劇場でも、
過去に、全篇通しでの上演記録はないのかもしれない。

10時半開演で、終演は16時過ぎ。間の休憩時間もい
つもより短くて、さすがに長い。

しかし、各段がそれぞれ意外に短く、40分を超えるのは
判官と勘平の切腹の段だけだから、トントンとテンポよく
進み、思ったよりは疲れない。
(だからと言って、二部も続けて・・・という気にはならないが)

物語は、歌舞伎で見たのと同じ(当たり前)なので、詳し
くは書かない。つまらない感想をいくつか・・・。

ひとつは、兜改めで、櫃の中から出てくる兜が、歌舞伎
のそれよりも立派に出来てるなーということ。

歌舞伎だと、義貞の兜だけが立派で、あとはとんでもな
く貧弱で、こんなん、誰だって分かるじゃん!てなものな
のだが、今回は、これなら顔世を呼び出して改めさせる
必要があるな、と感じた。

あと、人形の表情の変化のすごさ。よく、能面の表情の
豊かさが語られるけれど、文楽の人形も同じである。

特に、今回、怒りの表情に魅せられた思い。師直にいた
ぶられる、若狭助、塩谷判官、ともに、こめかみに青筋
が立つ様子が、はっきりと見て取れた。

歌舞伎との演出の違いという点では、五段目の山崎街
道で、定九郎が掛け稲の中からではなく、与市兵衛を
追いかけて登場するところ。

落語「中村仲蔵」に出てくるのは、こちらの演出なのだ
と、疑問氷解。

人形浄瑠璃と歌舞伎、どっちが先かと言えば、もちろん
人形浄瑠璃の方だ。それに、人間ならともかく、人形を
掛け稲の中から登場させるのは難しいだろうから、こち
らの演出の方が、古い型なのだろうと推測する。

歌舞伎でもおそらく、最初はこの型で演じられていたの
だろう・・・たぶん。だから、「仲蔵」の中で、定九郎が花
道から登場するのも、決しておかしくはない訳だ。

最後に、これは歌舞伎にもあったセリフなのかしれない
が、今回、初めて気づいたので。

三段目、おかるの文使いの場面。おかるは顔世の言葉
をこんな風に伝えている。

まず最初は、「どうぞ勘平に逢うてこの文箱、判官様の
御手に渡し、『御慮外ながらこの返歌を御前の手から直
ぐに師直様に御渡しなされくださいませ』と伝えよ」と。

しかし、顔世は思い直し、「しかし御取り込みの中、間違
ふものでなし。マア今宵はよしにせう」と、命令を取り消し
たのだ。

しかし、おかるは、勘平に逢いたい一心で、この“取り消
し”を無視して、当初の言いつけ通りの行動を取ってし
まう・・・・。

思えば、これが、間違いの始まり、すべての悲劇の元に
なるのである。

いやー、怖いですね。おかるさん、自分のしでかしたこと、
ちゃんと分かっていただろうか?

・・・そんなこと考えていたら、プログラムに載っていた、
橋本治氏の文章に、同じことが書かれていた。
「新発見!」と喜んだ自分が、ちとナサケナイ。
posted by JTm at 12:37| 文楽 | 更新情報をチェックする