2017年09月24日

2017.9.23 円生と志ん生@紀伊國屋サザンシアター

2017.9.23 こまつ座公演「円生と志ん生」

 円生と志ん生-209x300.png

第一場   昭和20年8月  大連・宿屋「日本館」
第二場   昭和20年12月 大連・遊郭の置屋
      ー中入・大連の街角-
第三場   昭和21年春   大連・街はずれの小屋
  (休   憩) 
第四場   昭和21年7月  大連・喫茶コロンバン
      ー中入・大連の街角-
第五場   昭和21年晩秋  大連・修道院の物干し場
第六場   昭和22年1月  大連・港

 井上ひさし=作、鵜山 仁=演出
<出演> 五代目古今亭志ん生=ラサール石井、
     六代目三遊亭圓生=大森博史、
     女優陣(各5役)=大空ゆうひ、前田亜季、
            太田緑ロランズ、池谷のぶえ
     ピアノ演奏=朴 勝哲

こまつ座の芝居を見に行くなんて、何十年ぶりだ
ろう・・・樋口一葉以来じゃないか?

そして、井上ひさし氏の愛読者でもないわたしが、
突然、これ、行ってみよう!と思ったのは、ひと
えに、“落語のチカラ”にほかならない。

古今亭志ん生と三遊亭圓生が、第二次世界大戦の
終戦間際に中国大陸(当時は満州国)に慰問に行っ
て、敗戦で帰れなくなり、大連に2年近く足止め
された・・というのは、落語史上、かなり有名な
出来事だ(と、わたしは思っているが、さて?)。

この作品は、ふたりのその約2年の大連での生活
を描いたものだが、もちろん、エピソードの多く
は創作だろう。

冒頭の宿屋・日本館の場で、まず、彼らの置かれ
ている立場が説明され、宿を追い出されてころが
りこんだ、遊郭の置屋の場では、こともあろうに
「文化戦犯」として、占領したソ連軍に追われて
いることを知る。

ソ連軍の手入れをかいくぐっての逃亡生活・・や
がて、街の統治は中国人の手に移り、一安心。

休憩後は、圓生は役者として劇場に出演しており、
一方、志ん生は相変わらずの放浪生活。密航船で
帰国を試みて詐欺に遭ったり、修道院の炊き出し
でなんとか生き延びている。

最後の場は、ようやく引揚げ船が出ることになり、
ひと足先に帰国する志ん生を、圓生が見送る。

命の保証すらないどん底の生活の中で、「落語が
演りたい! ちゃんと言葉の通じる人たちの前で
しゃべりたい」と、落語のことばかり考えている
ふたり・・・この、“渇望”こそが、戦後の大躍進
につながるのだろう。

そして、破天荒な志ん生と生真面目な圓生、同じ
噺家でありながら、水と油のようなふたりが、苦
労を共にする中で、「お互いがお互いの師匠だっ
た」というほどに、影響を与え合う。

それもまた、大躍進の起爆剤だ。

そして、このふたりの姿を通じて、なによりも作
者が言いたいのは、やはり、戦争への怒りと、庶
民をないがしろにする軍と軍人の醜さでだろう。

ソ連軍の侵攻を聞いて、「世界一強い関東軍が、
きっと押し戻す」・・ところが、そのころ、関東
軍はとっくに朝鮮半島まで逃げていた。一般国民
を置き去りにして。

敗戦間際の「根こそぎ動員」で、男手を奪われた
開拓村は、ソ連軍を前に集団自決・・それを辛く
も逃れたものの、大連の街に入れずに射殺された
女たちの亡霊が、第三場には登場する。

北朝鮮のミサイルがいつ飛んで来るかもしれない、
妙にキナクサイ雰囲気の昨今、いろいろと考えさ
せられることの多い舞台だった。

志ん生役のラサール石井氏、圓生役の大森博史氏、
ともに、よく特徴をつかんでご本人に似せている。

そして、娼婦から修道女、亡霊に至るまで、振れ
幅の広い各5役を演じ切った4人の女優陣には、
心からの大きな拍手を贈りたい。
posted by JTm at 11:59| 芝居 | 更新情報をチェックする

2017年09月23日

2017.9.22 鈴本演芸場下席・夜の部(その1)

2017.9.22 鈴本演芸場下席・夜の部
      柳亭こみち真打昇進披露興行

来ました!!
はん治師ののぼりの下に立っているのは、前日、一
足先にお披露目をした五代目三木助師匠。

客席には・・・
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開場と同時に、ほぼ半分の席が埋まり、6時過ぎに
は満席・・後半は立見も出たようです。すごい!

演目
三遊亭伊織      真田小僧
松旭斎美智、美登   (奇術)
五明楼玉の輔     紙入れ
三遊亭歌る多     替り目
ホンキートンク    (漫才)
柳亭燕路       狸の札
鈴々舎馬風      (漫談)
林家楽一       (紙切り)
     横綱土俵入、お月見、こみち師匠
三遊亭金馬      表彰状
  (仲 入 り)
「真打昇進披露口上」
 (下手から)
  玉の輔(司会)、さん喬、金馬、こみち、燕路、馬風、市馬
ストレート松浦    (ジャグリング)
柳亭市馬       のめる
柳家さん喬      長短
三遊亭小円歌     (三味線漫談)
 真打昇進
 柳亭こみち     稽古屋
      (三味線:あき、あさ、ふゆ)

伊織「真田小僧」。帰宅したカミさんが、金坊の話
ではなく、「真田三代記」を聞きたがる・・って、
とっても珍しいかも。

玉の輔「紙入れ」。いつものマクラ、いつもの噺だ
けれど、久々のせいか、よく笑った。

歌る多「替り目」。遠慮なしにポンポン言っている
女房だが、心根の優しさがちゃんと感じられる。

燕路。パーティの時と同じで、抑えても抑えても、
笑みが浮かんでしまう・・という雰囲気。
「狸の札」。おめでたく、化ける噺を。演者が小柄
だから?、仔ダヌキが可愛らしい。

馬風。いつもの漫談。相撲の結果も教えてくれた。

金馬「表彰状」。泥棒が、悪いことをしようとする
のに、どんどん善行を積むことになる・・二倍、お
めでたい?

「口上」。こみち師には“初日”とあって、あまりお
ふざけにならない、真面目な、でも、とても温かく
ユーモアあふれた口上。

こみち師、ぐっとこみ上げるものがあったようで、
うつむいた顔が、だんだん怖くなって来る・・堪え
ていたのでしょうね。見ている方が泣けて来た。

ここからは、トントンと進む。
ストレート松浦。7分。
市馬「のめる」。10分。
さん喬「長短」。11分。

小円歌。11月の立花家橘之助襲名に向けて「狸」を
かなり弾き込んでいる様子・・頑張れ!・・10分。

そして、こみち師匠。
口上では堪えていた涙が、ついにあふれ出し、なか
なか言葉が出ない・・客席は、みんなじっと待つ。

ようやく、諸先輩やお席亭、そしてお客様への感謝
を述べて心を落ち着かせ、「稽古屋」へ。

まさに、満を持しての一席でした。
極上のスタートでしたよ、こみち師匠!
posted by JTm at 10:42| 落語 | 更新情報をチェックする

2017年09月21日

2017.9.20 鈴本演芸場中席・夜の部(その2)

2017.9.20 鈴本演芸場中席・夜の部(主任・白鳥)

演目
三遊亭あおもり    浮世根問
古今亭ちよりん    新浮世床
アサダ二世      (奇術)
春風亭一朝      牛ほめ
柳家小ゑん      顔の男
ホンキートンク    (漫才)
桃月庵白酒      茗荷宿
春風亭百栄      マザコン調べ
  (仲 入 り)
ぺぺ桜井       (ギター漫談)
橘家文蔵       時そば
林家楽一       (紙切り)
       横綱土俵入、カープの胴上げ、月影千草
三遊亭白鳥      高座への螺旋階段(『落語の仮面』8)
           (三味線:のり、あさ)

あおもり「浮世根問」。東京での前座さんの噺
としては、珍しいのでは?・・どうでもいいこ
とを、しつこく隠居に尋ねる八五郎・・見た目、
強情そうな演者の雰囲気にピッタリ。

ちよりん「新浮世床」。古典落語の浮世床の夢
のくだりを、お婆ちゃんに置き換えた噺。以前
に一度、黒門亭で聞いている。

お婆ちゃんが、なんだか可愛らしい・・似合っ
てるって言ったら申し訳ないけどね。

一朝「牛ほめ」。お弟子さんたちのこの噺は、
ごくごくお馴染みだけど、まさか師匠から聞く
日が来るとは思わなかった・・・記憶にある限
りはお初です。

面白さを減ずることなく、細かな部分を切り詰
め、ピタッ!と時間に収める・・お見事。

小ゑん「顔の男」。まさに、“見る”落語・・顔
だけで注文する寿司屋の噺である。なんか、本
番?の寿司屋より、前段のハンダ付けパプや、
溶接バーの方が面白そう・・かも?

白酒「茗荷宿」。最初に聞いた時には、飛脚が
脚を痛めて仕方なく妙な宿屋に泊まることになっ
たという設定だったが、川止めでと、理由が変
わっていた。・・ま、別にどっちでも良いが。

百栄「マザコン調べ」。大工調べのパロディ。
勤め先のスーパーの社長の息子を振った女性の
家に、その母(つまり社長夫人)が乗り込んで
くる。

役どころは、社長夫人が棟梁、息子が与太郎、
迎え撃つ女性が大家・・・なんかなー、この配
役だと、上下関係が“原作”とは逆のような。

文蔵「時そば」。4日目に来た時と同じ・・た
またまなのか、毎日演ってるのか?

楽一。月影先生は、お見事! 客席から感嘆の
声が上がった。

白鳥「高座への螺旋階段」。『落語の仮面』、
第8話である。

第7話で、石神井公園での落語会を成功させた
花だったが、それでもなかなか、寄席や落語会
へのお呼びは掛からない。

一方、ライバルの鮎三(あゆみ)は、一躍、ス
ターダムに駆け上がり、師匠・談春をもしのぐ
活躍ぶり。

その鮎三の新しい落語会、「三題噺の会」の相
手役を、オーディションで募集することを知り、
花は大急ぎで会場へ・・・。

このくだりは、原作では、「ふたりの王女」の
オーディションの場面らしい・・これ、昨年、
舞台を見ました。

一次審査は、露天風呂・生前退位・革財布の三
つで作る三題噺。そして、二次審査は「毒をテー
マに、“わたしの切り札”をオチに噺を作る」。

これ、白鳥師自身の創作方法や考え方を反映し
ているみたいで、大いに興味深かった。

4日目に聞いた第7話と違い、実在の人物が実
名でバンバン登場してしまうので、残念ながら
詳しくは書けない・・演者に止められたし。

ただ、この日のオチは、先日、「ガラスの仮面」
展を見ておいてよかったー!と、思えるものだっ
た・・ということは、書いておいてもいいかな。

最後、美内先生への感謝を述べ、来年もまた、
このおまつりがありますように・・と、一本締
で、終演。
posted by JTm at 09:50| 落語 | 更新情報をチェックする