2018年01月12日

2018.1.8 人形浄瑠璃 新春文楽公演@文楽劇場

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2018.1.8 人形浄瑠璃 新春文楽公演 第一部・第二部

第一部演目
「花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)」
  万才・鷺娘(楳茂都陸平=振付)
   太夫=豊竹睦太夫、竹本津國太夫、豊竹咲寿太夫、
      竹本小住太夫、竹本文字栄太夫
   三味線=鶴澤清友、野澤喜一朗、鶴澤清𠀋、
       野澤錦吾、鶴澤燕二郎
   人形役割 太夫=吉田玉勢、才蔵=桐竹紋臣、
        鷺娘=吉田文昇
   (休   憩)
「平家女護島(へいけにょごのしま)」
  鬼界が島の段
   太夫=豊竹呂太夫、三味線=鶴澤清介
   人形役割 俊寛僧都=吉田玉男、平判官康頼=吉田清五郎
        丹波少将成経=吉田文司、蜑千鳥=吉田蓑助、
        瀬尾太郎=吉田玉志、丹左衛門基康=吉田玉輝 外
   (休   憩)
八代目竹本綱太夫五十回忌追善
豊竹咲甫太夫改め       「口上」
 六代目竹本織太夫襲名披露 
   (上手より)豊竹咲太夫、竹本織太夫
   (休   憩)
追善・襲名披露狂言
「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)」
  合邦住家の段
   太夫=(中)竹本南都太夫、(切)豊竹咲太夫、
      (後)豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫
   三味線=(中)鶴澤清馗、(切)鶴澤清治、
       (後)鶴澤燕三
   人形役割 合邦道心=吉田和生、合邦女房=桐竹勘壽、
        玉手御前=桐竹勘十郎、奴入平=吉田玉佳、
        浅香姫=吉田蓑二郎、俊徳丸=吉田一輔  外
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第二部演目
南都二月堂 良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)」
  志賀の里の段
   太夫 渚の方=竹本三輪太夫、乳母小枝=竹本小住太夫、
      腰元=豊竹亘太夫、竹本碩太夫
   三味線=竹澤團七、(ツレ、八雲)=鶴澤友之助、野澤錦吾
   (休   憩)
  桜の宮物狂いの段
   太夫=竹本津駒太夫、豊竹始太夫、豊竹芳穂太夫、
      豊竹咲寿太夫、
   三味線=鶴澤藤蔵、鶴澤清志郎、鶴澤寛太郎、
       鶴澤清公、鶴澤清允   
  東大寺の段
   太夫=豊竹靖太夫、三味線=野澤錦糸
  二月堂の段
   太夫=竹本千歳太夫、三味線=豊澤富助
   人形役割(各段共通)
    渚の方=吉田和生、船頭=桐竹亀次、
    良弁僧正=吉田玉男、雲弥坊=吉田幸助  外
   (休   憩)
「傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)」
  新口村の段
   太夫=(口)豊竹希太夫、(前)豊竹呂勢太夫、
      (後)竹本文字久太夫
   三味線=(口)竹澤團吾、(前)鶴澤寛治、(後)竹澤宗助
   人形役割 忠兵衛=吉田勘彌、梅川=豊松清十郎、
        親・孫右衛門=吉田玉也、忠三女房=吉田蓑一郎  外
   (一部・二部とも、はやし:望月太明藏社中)

「花競四季寿」。まずは華やかな舞踊の演目から。
万才は、現在では万歳と表記されることが多いよう
だ・・落語「掛取万歳」に出てくる、あれである。

太夫と才蔵の掛け合いで、賑やかに新年を言祝ぐ。

鷺娘は、一転してしんしんと降り積む雪景色の中に、
真っ白な衣装の娘がひとり舞う・・・

浄瑠璃の歌詞は、降り積もる雪に、つのる恋の思い
を重ねているようだが、そんなものには縁なき衆生
の身には、寒い冬の中で来るべき春を待ちわびる舞
のように見えた。

これは、後半、引き抜いて白から淡いピンクに衣装
が変わるためかもしれない。春爛漫の桜の花の色だ。

「平家女護島」。昨年2月に、東京で通し公演を見
ているが、今回は一番ポピュラーな鬼界が島のみで。

太夫、三味線は、前回と同じ・・呂太夫師は、前名
の英太夫だったけれど。

前回は通しで見て、色々と発見も多かったが、やは
り、見せ場はこの段であることを確信。

妻を亡くしたことを知って、島に残る決意をしたも
のの、どうしようもない望郷の念にさいなまれる俊
寛の思いが、ストレートに胸に迫った。

長い休憩の後、追善と襲名の口上。舞台に並んだの
が、咲太夫師と新・織太夫師のふたりだけ・・とい
うのは、ちと驚いた。

五十回忌を迎えるのは、咲太夫師の父・八代目綱太
夫。そして、この綱太夫の前名であった織太夫を、
弟子の咲甫太夫に襲名させた。

新・織大夫は、もちろんただ座っているだけだから、
口上を述べたのは咲太夫師ひとり。・・意外なくら
い、あっさりと、でも感慨深い口上ではあった。

「摂州合邦辻」。これは大昔に歌舞伎で見た印象が
強い演目だ。その時、玉手御前を演じたのは尾上梅
幸丈、合邦は市村羽左衛門丈だった・・・
(調べたら昭和60(1985)年!・・・やだねー)

“年月揃った女の生き血”ってのは、落語の「肝つぶ
し」の原型かと思うが、なんだか気味の悪い話で好
きになれなかったのだが・・・。

これが、人形だと、案外抵抗なく受け入れられてし
まうのは不思議。生き血の件ばかりでなく、継子へ
の横恋慕という道ならぬ恋も、逆に応援したくなる。

玉手の母は言う・・「二十歳そこらの色盛り、年寄っ
た左衛門(玉手の夫)様より、美しいお若衆様なら、
惚れいでなんとするものぞ」。

いいなぁ、これ。不倫の肯定じゃん!?

中段を語る咲太夫師に、さっとお茶を置いたのは、
新・織太夫・・・次が出番だから、さすがに片付け
は別の方だつたけれど。

そして、ラスト30分超のくだりを、その新・織太夫
師が飾る。襲名披露にふさわしい、力の入った良い
語りだった。・・・満足、満足。



居続けで第二部へ。
「良弁杉の由来」。これもまた、歌舞伎で見た記憶
がある。良弁を演じたのは十七世中村勘三郎丈・・
昭和58(1983)年、国立劇場。

良弁は、30歳そこそこで僧正になった秀才という設
定だが、当時すでに70歳以上だった勘三郎丈を、そ
の年齢の青年僧と見るのは、なかなか難しかった。

大鷲にさらわれた幼子は、奈良・東大寺の杉の木に
置き去られて一命をとりとめ、長じてその寺の僧と
なる。

一方、我が子を探し求める母は、狂乱の末に、この
良弁僧正の噂を聞きつけ、我が子では?と思う。

東大寺二月堂の大杉の前で、30年ぶりに巡り合う母
と息子・・親子の情は、いつの時代も同じである。

冒頭の志賀の里の場面で、舞の伴奏に「八雲」とい
う古楽器?が用いられる。初めて見た。四角い箱の
ような形で、上部に二本の弦が張られている。二弦
の琴である。

文楽の技芸員さん、こんな珍しい楽器も弾けなきゃ
ならないんですねぇ。大変。

そして、二月堂の場面、舞台中央に設えられた大杉
の葉が、どうやら“本物”らしいのに驚く・・もっと
も、後の休憩時間に、「あれ、杉じゃなくて、ビャ
クシンだ」って、誰かが言っていたけれど。
(どっちだっていいよ、と突っ込みたくなった)

     0110.JPGこれは現在の良弁杉。後ろは二月堂。1/10撮影

「傾城恋飛脚」。昨年2月の東京公演で見ているが、
その時はこの「新口村」は出なかった。

心中覚悟で忠兵衛の故郷に落ちてきた梅川・忠兵衛
が、よそながら父・孫右衛門に別れを告げようとす
る。

思いがけなく、ふっと出会ってしまう忠兵衛と孫右
衛門・・・互いに合いながらも、様々な義理としが
らみで、親子として向かい合うことが出来ない。

ふたりの心を知り、なんとかしたいと願う梅川・・
目隠しして抱き合う父と子の、その目隠しをそっと
ほどく。

義理もしがらみも、父子の情を越えることはない。

追手到着の知らせに、抜け道を教えてしまう孫右衛
門・・・しかし、忠兵衛と梅川には、もはや未来は
ない。

中盤から後半、呂勢太夫、文字久太夫の両師による
語りと、それをより一層盛り上げる三味線が、父子
の情を、切々と歌い上げた。

母と子、父と子、親子二題の、第二部だった。
posted by JTm at 14:05| 文楽 | 更新情報をチェックする