2018年11月15日

2018.11.14 国立劇場十一月歌舞伎公演

2018.11.14 国立劇場十一月歌舞伎公演

演目
通し狂言「名高大岡越前裁(なもたかしおおおかさばき)」
         六幕九場     河竹黙阿弥=作
 序 幕 第一場 紀州平沢村お三住居の場
     第二場 紀州加田の浦の場
  (休   憩)
 二幕目     美濃長洞常楽院本堂の場
  (休   憩)
 三幕目 第一場 大岡邸奥の間の場
     第二場 同  無常門の場
     第三場 小石川水戸家奥殿の場
  (休   憩)
 四幕目     南町奉行屋敷内広書院の場
  (休   憩)
 五幕目     大岡邸奥の間庭先の場
          浄瑠璃=竹本葵太夫、三味線=鶴澤慎治
 大 詰     大岡役宅奥殿の場
  (配役)大岡越前守忠相=中村梅玉、天一坊=市川右團次、
      山内伊賀亮=坂東彌十郎、大岡妻小沢=中村魁春、
      下男久助・池田大助=坂東彦三郎、
      徳川綱條=坂東楽善、大岡忠右衛門=市川右近 外

河竹黙阿弥が、明治になってから書いた作だそうで、
神田伯山(初代)の講談「天一坊」を下敷きにしてい
る。元の外題は「扇音々大岡政談(おうぎびょうしお
おおかせいだん)」と言い、明治8(1875)年初演。

国立劇場では昭和47(1972)年に復活上演しているそ
うだが、さすがに見ていない。今回は外題を変えて、
46年ぶりの上演である。

天一坊事件というのは、大岡政談の中でも有名な物語
で、講談こそ聞いたことがないが、TV時代劇などで
あらすじは知っている。

実際にあった事件ではあるが、実は大岡忠相はほとん
ど関与しなかったらしい。ま、それを言っちゃあオシ
マイだけれど。

八代将軍吉宗には、本当にご落胤がいて、でも、その
子は、出産と同時に母もろとも亡くなった・・という
設定。

序幕に登場するお三という婆さんが、そのご落胤の祖
母にあたる人物で、吉宗のお墨付きと証拠の刀(葵の
紋章がちりばめられたこしらえ)を、持っている。

後に天一坊となる僧・法沢は、序幕ではこのお三に、
好きな酒を持って行ってやろうという、気のいい若者
であるが、酔ったお三から、死んだ孫(つまりご落胤)
の話を聞き、証拠の品まで見せられて、ふと、悪心を
抱く。

この、ふとしたきっかけで悪に捕らわれて行く、法沢
の心の動きを右團次丈が丁寧に見せる。

お三を殺した法沢は、ついでに師匠である感応院住職
まで毒殺。・・・自分の身元を知る人間を消して、ご
落胤に成りすまそうとする。

ここで、感応院の下男久助と、下女のお霜という駆け
落ちカップルが登場するのだが、これが何だかよくわ
からない。

前回上演時の台本を整理したというのだが、整理しす
ぎちゃってない?・・このふたり、なぜ、駆け落ちを?

訳がわからないが、このふたりは最後に重要な役目を
果たすことになるので、カットするわけには行かない。

ともあれ、これを上手く利用した法沢は、住職殺しの
罪を久助になすりつけたばかりか、自分もまた、久助
に殺されたと偽装する。

やがて、美濃国までやって来た法沢は、ご落胤を自称
して、常楽院という寺に滞在。ここで、悪僧・天忠と、
山内伊賀亮という、“ブレーン”に出会う。

三幕目でようやく、大岡様の登場。

天一坊と名を変えた法沢は、すでに老中の吟味で、真
実、ご落胤に違いないと認められている。しかし、大
岡はひとり疑問を抱き、再吟味を願うが、上様のご不
興を買って、閉門蟄居を命じられる。

このままだと、翌日には切腹を命じられる・・死ぬこ
とは構わないが、偽ご落胤をこのままには出来ない。
大岡は、死人に化けて、無常門(死者が出た時に、閉
門中でも唯一出入りを許される門)から脱出、水戸家
の力を借りて、ついに、再吟味を認められる。

四幕目、広書院は、大岡と伊賀亮・天一坊の直接対決。

ふとしたことから悪心に捕らわれた天一坊は、意外に
底の浅い悪党で、伊賀亮にしてみれば、「豎子ともに
謀るに足らず」の思いだったのではないか?・・と思
いつつ見ていた。

ここでは、伊賀亮の周到さが勝り、なかなか尻尾を出
させることが出来ない。次の五幕目では、大岡は、妻
子とともに切腹の瀬戸際である。

正しいことをしていると信じているのに、妻子まで道
連れにして死ななくてはならない、大岡の無念さが、
ひしひしと心に迫る。大岡の息子・忠右衛門の健気さ
も手伝って、涙があふれて困った。忠右衛門役、市川
右近ちゃん・・かわいいし。

最後、あわや!というところで、紀州に探索に行った
部下たちが帰着し、やれやれ・・となるのは、なんだ
か、TVの娯楽時代劇みたいだけれど、やっぱり、こ
こは素直に拍手ーー!

・・だけど、10日で紀州まで往復出来るんですかね?
現地で探索もしなくちゃならないのに。
(なーんて言うのは、野暮です、野暮)

そして、大詰、大団円。
住職殺し、法沢殺しの罪を着せられていた久助は、ど
うやら捕らえられて入牢中だった模様。(殺しの罪な
ら死罪だと思うけど・・まだ処刑されてなくてヨカッタ)

この久助・お霜夫婦との対決で、天一坊=法沢が明ら
かとなり、めでたし、めでたし・・という次第。

大岡忠相役の梅玉丈、いつもながらスッキリとしたた
たずまい。これが、正邪を見極める役どころにピッタ
リで、きりっと一本芯の通った、見事なお奉行様ぶり
でした。

一階席は、花道の向こうと、上手側ブロックに高校生
らしき団体が入っていたが、そのほかの一般客は、あ
まり多くない・・・おかげで見やすかったのはありが
たいが、大向こうからの掛声が、ひとつも無かったの
は、とても残念だった。
posted by JTm at 22:37| 芝居 | 更新情報をチェックする

2018年11月12日

2018.11.11 左龍・甚語楼二人会@お江戸日本橋亭

2018.11.11 第20回 左龍・甚語楼二人会

演目
左龍&甚語楼      (トーク)
柳亭市若        のめる
柳家甚語楼       粗忽長屋
柳亭左龍        不動坊
  (仲 入 り)
柳亭左龍        浮世床
柳家甚語楼       火事息子

オープニングトークは、松戸の仕事から駆け付けたと
いう甚語楼師は“休憩時間”。左龍師、頑張ってしゃべっ
たけれど、5分でおしまいに。

市若「のめる」。市若さんのこの噺はお初かな。表情
が豊かで、見ていて楽しい。時に大きすぎると感じた
声も、だいぶコントロール出来てきたようで。

甚語楼「粗忽長屋」。これ、めちゃくちゃ面白かった。
たぶん初めてではないと思うが・・えー、前からこん
なだった?って感じ。

真剣に混乱しちゃってる粗忽なふたりが、奇妙にリア
ル。特に長屋に呼びに来られた熊さんが、「あ、熊、
俺だ!」って気づくところ・・その絶妙の間が、わた
しにはツボでした。

左龍の二席。
「不動坊」。初演とのこと。そういえばさん喬師匠の
不動坊って、聞いた記憶がないが演られるのだろうか。

左龍師版は、権太楼師匠に似てるかな。鉄瓶提げて湯
屋に行っちゃうところとか。

ただ、後半、やや間延びしたような感が無きにしも非
ずで、屋根の上でのお馬鹿トリオのドタバタのところ
で、しばし意識喪失してしまったのは残念だった。

「浮世床」。やや端折り気味の“本”から続けて“夢”へ。
半ちゃんの艶っぽい夢の話が佳境に入っても、なお、
読めない本を読み続けている源ちゃんの姿を、一瞬、
描写したのは上手い工夫。

甚語楼「火事息子」。こちらも初演とのこと。そうい
えば権太楼師匠の火事息子って、聞いた記憶がないけ
れど・・・。

今回は、それぞれ、相手の師匠のニンに合った噺をネ
タ下ろし・・という趣向なんだろうか?

そして、甚語楼版は、さん喬師匠に似てたりする・・
バァさんが猫を放り投げちゃうところとか。まあ、他
にも演る人はいるけれどね。

ただ、湿っぽさのない明るい雰囲気は、やはり権太楼
師匠譲りかな。おっ母さんの繰り言も、こっけいさが
先に立つ・・・あふれる愛は、どこかこっけいなもの
なのかもしれない。

トークよりも、それぞれのマクラにオフレコの裏話が
満載されたようで、それも含めて聞きごたえのある良
い会でした。
posted by JTm at 09:47| 落語 | 更新情報をチェックする

2018年11月11日

2018.11.10 国立能楽堂普及公演

2018.11.10 国立能楽堂普及公演

演目
解説・能楽あんない
  「橋姫伝説、鬼、呪術」  林 望(作家・書誌学者)
狂言「梟山伏(ふくろうやまぶし)」(和泉流)
   シテ(山伏)=井上松次郎、
   アド(兄)=鹿島俊裕、(弟)=今枝郁雄
  (休   憩)
能「鉄輪(かなわ)-早鼓之伝」(観世流)
   シテ(前・女、後・女の生霊)=観世恭秀、
   ワキ(安倍晴明)=舘田善博、ワキツレ(男)=野口啄弘、
   アイ(社人)=佐藤友彦
   囃子方 笛=寺井宏明、小鼓=幸清次郎、
       大鼓=柿原崇志、太鼓=梶谷英樹
   後見=寺井 榮、清水義也
   地謡=木月章行、津田和忠、武田祥照、中島志津夫、
      坂井音晴、坂井音重、坂井音隆、関根知孝

丑の刻詣の“原型”とも言える「鉄輪」という演目が出る
というのに、なぜか、女子中高生の団体が・・・確かに
初心者にもわかりやすい演目ではあるけれど。

というわけで、リンボウ先生の解説は、「鉄輪」の物語
を、噛み砕いてわかりやすく。中高生からは程遠い当方
も、おおいに助かった。

まずは狂言「梟山伏」。今回は和泉流だが、大蔵流では
「梟」という題で何度か見ている。

山へ行った弟が、病?に倒れ、兄は山伏に祈祷を依頼す
る。山伏の見立てでは、山で梟の巣を取り下ろしたため、
梟が取り憑いた・・で、早速に梟の嫌うカラスの印を結
んで呪文を唱えるが・・・

後半になると、セリフは「ポーッ!」だけ。客席の女子
中高生たちに大ウケ・・・なんか、いつもより余分に鳴
いてたんじゃない?

そんなのんきな狂言から一変して、いよいよおどろおど
ろしい「鉄輪」へ。

夫に新しい妻が出来たために離縁された女が、夫と後妻
を呪い殺そうと、真夜中の京の町を駆け抜けて、貴船の
山中へ。

冒頭の解説によると、女のたどる道筋は、貴船に続く本
街道ではなく、一直線に山を目指す、険しくて恐ろしい
道だとか。一刻も早く貴船に着きたい女の思いの強さ。

一方、呪われた元夫は、身体の不調を感じて、陰陽師の
安倍晴明を訪れる。

ひと目で呪いの存在を察知する晴明・・そして女の呪い
を「転じ変え」る祈祷を行うことに。

結局、女の呪いは晴明に退けられて、女は「時節を待つ
べしや、まづこの度は」と、帰って行く・・って、つま
り、まだ諦めてないのね。

後半の、女と晴明の“呪い合戦”の方に、つい、意識が向
いてしまうけれど、今回は、リンボウ先生の解説のおか
げで、前半の女の“変貌”ぶりに大いに心を惹かれた。

この演目、能としては珍しく、最初に狂言方の演じるア
イが登場する。「狂言口開」と言うそうだ。

これが貴船神社の社人で、神様の夢のお告げを、深夜に
訪れる女に伝えに来た、と言う。

そのお告げが、「鉄輪を被ってその三つ足に火を灯し、
身に赤い丹(赤い土、またそれからとれる染料)を塗り、
赤い衣を着て、怒る心を持つならば、女の願いはかなう」
というのだ。

女と出会った社人は、「あなたがその方ですか?」と問
うけれど、女は否定。

しかし、この神様からの“伝言”を聞くうちに、女は次第
に恐ろしく見えて来るのだ・・・

まさに、女が「鬼」に変じる瞬間。
いやー、恐ろしい・・・やっぱり、こんなの中高生に見
せちゃダメ!

それにしても、こんな恐ろしいご託宣を下される神様っ
て、いったい何?と、思わざるを得ない。

これ、キリスト教だったら、絶対に、悪魔の声だよなぁ。
・・・もっとも、旧約の神様なら、あり、かも?だけど。
posted by JTm at 10:17| | 更新情報をチェックする