2019年01月16日

2019.1.14 人形浄瑠璃 新春文楽公演@文楽劇場

2019.1.14 人形浄瑠璃 新春文楽公演 第一部

演目
「二人禿(ににんかむろ)」
   太夫=豊竹睦太夫、竹本南都太夫、
      豊竹咲寿太夫、竹本碩太夫
   三味線=野澤勝平、鶴澤清𠀋、野澤錦吾、
       鶴澤燕二郎
   人形役割 禿=吉田一輔、桐竹紋臣
  (休  憩)
「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」
  竹の間の段
   太夫=竹本織大夫、三味線=竹澤團七
  (休  憩)
  御殿の段
   太夫=竹本千歳太夫、三味線=豊澤富助
  政岡忠義の段
   太夫=竹本織太夫(咲太夫休演のため)
   三味線=鶴澤燕三
   人形役割(各段共通)
    政岡=吉田和生、八汐=桐竹勘壽、沖の井=吉田文昇、
    鶴喜代君=吉田蓑太郎、千松=吉田玉翔、
    栄御前=吉田蓑助、小巻=吉田蓑紫郎    外
  (休  憩)
「壺坂観音霊験記」
  土佐町松原の段
   太夫=豊竹亘太夫、三味線=鶴澤清允
  沢市内より山の段
   太夫=(前)豊竹靖太夫、(奥)豊竹呂勢太夫
   三味線=(前)野澤錦糸、(奥)鶴澤清治、ツレ=鶴澤清公
   人形役割(各段共通)
    沢市=吉田玉也、女房お里=吉田勘彌、
    茶屋の嬶=桐竹勘次郎、観音=吉田玉峻  外
   はやし 望月太明藏社中

昼夜公演の昼の部、第一部のみ観劇。第二部は、2月
の東京公演と演目が被ったので。

入場すると、咲太夫師の病気休演の掲示。残念だが、
一日も早くお元気に・・と祈る。

「二人禿」。廓という大人の遊び場に暮していても、
少女は少女、お正月になれば羽根つきや鞠遊びもした
いだろう・・という優しい気持ちが感じられる。

明るく華やかなお正月の情景。

「伽羅先代萩」。奥州伊達家のお家騒動に取材した演
目で、江戸時代の作なので憚って実名にはしていない
が、先代はもちろん仙台に通じ、舞台上に散りばめら
れた竹に雀の絵柄は伊達家の紋章に通じる。

歌舞伎では、六代目歌右衛門丈が得意とした演目で、
歌舞伎を見始めたころに、何度も拝見した。

そのころからいわゆる「飯炊き」の場面が苦手で、ま
ともに見ていられたためしがないのだが、何年、何十
年たってもそれが変わらない・・というのは我ながら
情けない。

ただね・・幼い子どもがお腹を空かせているのに、茶
道の?お作法にのっとって、ご飯を炊くのって、どう
考えてもまだるっこしいよね・・と、思っちゃう。
・・縁なき衆生で、すいません。

前段の竹の間、後段の政岡が我が子の仇を討つ場面は、
緊迫感にあふれ、手に汗握る展開で面白い。

最後、政岡が八汐を討つところで、ほんの一瞬、殺さ
れた千松の人形を出し、政岡と共に刀を手にするのは、
人形ならでは・・なんだろうな。
ドキッ!とする演出である。

「壺坂観音霊験記」。お里沢市の名はどこかで聞いて
いるが、この演目をちゃんと見るのは初めてだった。

壺阪(現在はこの文字)寺は、正式名称を南法華寺と
言い、奈良県高取町にある寺院。8世紀初の創建と伝
えられ、本尊・十一面千手観音は、眼病に霊験がある
という。

この浄瑠璃は、明治になってからの作とのこと。私見
だが、多分に、お寺の宣伝?という気がしないでもな
い。その時代、お寺さんはどこも経営が大変だったは
ずだ。

目の見えない夫をいたわる女房のお里は、毎夜、壺坂
寺にお参りして、夫の目が見えるように・・と願をか
けているが、夫の沢市は、それを誤解して女房を問い
詰める。

しかし、この誤解はすぐに解け、ふたりは共に壺坂寺
に行くことに。

だが、その実、沢市は、自分が女房を疑ったことを悔
い、さらに、自分が女房の重荷になっていると感じて、
秘かに死を覚悟する。

「・・見えぬこの目は枯れたる木。アアどうぞ花が咲
かしたいな。と言うたところが、罪深いこの身の上。
せめて未来を」

この世での願いは叶わぬと覚悟した沢市が、来世での
大願成就を期して、死を覚悟するセリフ・・この“せめ
て未来”に、なんとも切なさを感じた。

最後はまあ、観音様の出現で、その霊験あらたか、「目
の無い男に目が出来た」という、まことにおめでたい
結末に・・・なんとなく、落語の「景清」を思い出す。

咲太夫師の休演は残念だったけれど、「先代萩」で二
段を語った織太夫師、そして、「壺坂」の後段の靖太
夫師、呂勢太夫師と、若手の太夫はみんな良かった。

そして、それを支えるベテランの三味線が、いずれも
大変素晴らしかったのは、もちろん言うまでもない。
posted by JTm at 09:37| 文楽 | 更新情報をチェックする

2019年01月15日

2019.1.13 新春天空狂言@大槻能楽堂

2019.1.13 新春天空狂言 
    -三世茂山千之丞襲名記念公演- 第一部・第二部

第一部演目
「三番三(さんばそう)」
    三番三=茂山千之丞
    千歳=茂山あきら
    囃子方 笛=竹市 学、
        小鼓=大倉源次郎、上田敦史、清水和音
        大鼓=亀井広忠
    後見=丸石やすし
  (休   憩)
新春スペシャルトーク  大倉源次郎
            亀井広忠
            茂山千三郎
狂言「二人大名」
    大名甲=茂山宗彦、大名乙=茂山 茂、
    道通り人=茂山七五三、 後見=増田浩紀
狂言「仁王」
    博奕打=千三郎、その仲間=あきら、
    近所の者=島田洋海、井口竜也、鈴木 実、宗彦、茂
    足の悪い男=丸石、  後見=千之丞、増田
附祝言「猿唄」    茂山千之丞、増田浩紀

第二部演目
新春トーク      茂山あきら
狂言「福の神」
    福の神=茂山千作、
    参詣人=茂山千三郎、茂山宗彦、
    地謡=茂山 茂、島田洋海、増田浩紀、山下守之
    後見=井口竜也
狂言「鎌腹(かまばら)」
    太郎=茂山千之丞、女房=あきら、
    仲裁人=丸石やすし、  後見=鈴木 実
  (休   憩)
狂言「木六駄(きろくだ)」
    太郎冠者=茂山七五三、主人=茂、
    茶屋=茂山千五郎、伯父=千三郎、 後見=島田
附祝言「猿唄」    島田洋海

例年より遅めの開催となった天空狂言・・移動の運賃が
安くて済むから、個人的には大歓迎・・なんですが。

天空に、千之丞の三番三が帰って来た!

2000年の正月にスタートしたこの天空狂言は、先代千之
丞師の「三番三」で始まった。それから毎年、同師のこの
演目で開幕していたのだったが、2010年、同師が亡くな
られて、直後の2011年は、現・千作(当時千五郎)師が
代演、翌年から数年は孫の童司さんが演じた。

わたしは、この、先代の最後の天空を拝見している。貴重
な経験ではあるけれど、たった1回しか見られなかった・・
と思えば、返す返すも口惜しい・・もっと早くに、狂言と
出合っていれば・・。

そして、昨年末、三世千之丞の誕生。となれば、当然、今
年の天空のスタートは、新・千之丞による「三番三」。

期待が大きいのは、当然のことながらわたしだけではなく、
ほぼ、満席の大盛況。

客席の期待を一身に背負っての三番三は、若々しく清新な
中に、「襲名」という大きな節目を経て、また一段、高い
ところに達したな・・という充実を感じさせた。

新年の幕開けにふさわしい清々しさが、会場にあふれる。

お馴染みの新春トークは、ゲストを交えてのスペシャル版。
大倉源次郎師は、1957年生、能楽囃子方大蔵流小鼓の宗家。
亀井広忠師は、1974年生、能楽囃子方葛野流大鼓方家元。

お話は、先代千之丞師の思い出や、翁・三番三上演の裏?
話を中心に。翁の前は、精進潔斎して朝には水垢離をとっ
て臨む・・とか。

「二人大名」。どんな初心者が見ても、絶対に笑える、テッ
パン的演目だと思うのだが、意外に遭遇率は高くなく、茂
山家の公演では2010年の春以来。

連れだって都へ上る大名(といってもちょっとした地方豪
族程度)ふたり、従者がいないのを嘆き、たまたま通りか
かった者に、まんまと太刀を持たせるが・・・

決して刃物を安易に他人に渡してはいけない・・というこ
とを、狂言の登場人物は、なぜか学ばない。後半、脅され
た大名ふたりが、ニワトリや犬の真似をさせられたり、俗
謡に合わせて起上り小法師を演じさせられたり。

「仁王」。こちらは上演頻度がかなり高い。仁王尊が降臨
したと偽って、供物を騙し盗ろうとするふたりの博奕打・・
集まった“信者”たちが、セコイ?供物で身勝手な願いを祈
るのが、なんとも可笑しい。

この信者役の立衆は、プログラムには3人しか書かれてい
なかったけれど、前の演目で大名を演じた宗彦・茂の両名
が急遽加わる・・・今年もまた、ファンサービスに熱心な
茂山家、です。

1時間ほどのインターバルで、第二部へ。

二部のトークは、新・千之丞のパパ、あきら師。先代の息
子にして、当代の父、という立場。裏話として、「楽屋で
はまだだれも、千之丞とは呼ばない」と。

当代千五郎師襲名の時も、同じような状況だったそうで、
「いずれ慣れるでしょう」・・だそうです。

「福の神」。これも新年にふさわしい、祝祭に満ちた演目。
当代千作師も、先代に続き、直面(ひためん=素顔)で福
の神を演じることにしたようで。

「鎌腹」。こちらは一転して、わわしい女房に攻め立てら
れて、自殺を試みる・・という、正月らしからぬ演目。
先代千之丞師がお好きだった演目らしい。

あきら師の太郎は何度も見ている(当たり役です)が、今
回は女房に回って、新千之丞を立てる。祖父、父と伝わる、
まさに“家の芸”ということで。

「木六駄」。難曲と言われる割には、意外によく見る演目。
七五三師の太郎冠者は、2017年春以来。

難曲という所以は、何もない空間に、12頭の牛を追って山
道を行く様子を見せなくてはならないから。七五三師の太
郎冠者は、個々の牛たちに十分に目を配り、一頭一頭を、
とても可愛がっているなー・・という感じが、よく伝わっ
てくる。

名演である。

以下余談。
第一部の「仁王」で、急遽、立衆に加わった宗彦さんと茂
さんの“お供物”が、第二部の演目の衣装だったことが判明。
宗彦さんのは、「木六駄」で太郎冠者が着ける蓑。茂さん
のは、「鎌腹」の女房が締める帯・・でした。
posted by JTm at 18:33| 狂言 | 更新情報をチェックする

2019年01月12日

2019.1.12 一朝会@浅草見番

2019.1.12 第10回 一朝会

演目
春風亭きいち     代脈
春風亭一左      代書屋
春風亭一朝      宿屋の富
  (仲 入 り)
春風亭一朝      藪入り
       (三味線:金山はる)

年明けからずっと二ッ目さんの会が続いていて、真打の
師匠の会は、今年お初。寒い中、頑張って並ぶ。

きいち「代脈」。二ッ目昇進への意欲満々は、前々日の
研精会と同じ。マクラも振ってましたねぇ・・前回は遅
れて入ったからマクラは聞き逃したのかな?

「代脈」は、師匠の一之輔師もよく演る噺だけれども、
一之輔師のとはまたひと味違う感じ・・すでに、自分の
個性を前面に出している?

一左「代書屋」。オチから察するところ、いわゆる雲助
師の型かな?・・これと言って、悪いところはないのに、
なぜかあまり笑えない・・ま、よくあるパターンではあ
りますが。代書屋の渋い表情が、似合いすぎるのかも?

一朝の二席。
「宿屋の富」。文無し男と富を売った宿の亭主が、こも
ごもに当たりくじの番号を確認する場面が、実に面白く、
それが繰り返されることで効果が倍以上になるんだ・・
ということを発見した感じ。

最後、宿の亭主と客の「約束通り分けてくれるんですよ
ね?」「いくらでもやるよ、1両でも2両でも」・・と
いうやりとりが・・・あれ、あったかなぁ・・・?

とわからなくなるくらい、金というものへの執着が、意
外に薄くて、軽く明るく楽しい、一朝師匠らしい噺。

「藪入り」。こちらはまさしく季節もの。お父っつぁん
とおっ母さんの、亀ちゃんへの深い深い愛情が、もう、
言葉の端々ににじみ出ていて、それだけで嬉しくなる。

父の愛は山よりも高く、母の愛は海よりも深い・・とい
うことを、“落語で”納得させる、すてきな一席だった。
posted by JTm at 19:13| 落語 | 更新情報をチェックする