2019年05月26日

2019.5.25 東次郎家伝十二番@横浜能楽堂

2019.5.25 東次郎家伝十二番 第二回

演目
狂言「抜殻(ぬけがら)」
  シテ(太郎冠者)=山本則秀、
  アド(主)=山本則重、  後見=山本則俊
  (休  憩)
狂言「花盗人」
  シテ(三位)=山本東次郎、
  アド(何某)=山本泰太郎、
  立衆(花見の客)=山本則孝、山本則重、
      山本凛太郎、寺本雅一、若松 隆
  後見=山本修三郎

「抜殻」。茂山千五郎家の公演では何度か見ている。
物語自体は同じである。

使いを命じられた太郎冠者だが、いつも使いの前に
呑ませてくれる酒を、今日は主人が忘れている・・・

前半は、なんとか酒のことを主人に思い出して貰お
うと、行きつ戻りつする太郎冠者の苦心・・呑んべぇ
のひとりとして共感多し。

後半は、使いの途中で眠り込んでしまった太郎冠者
を、主人が懲らしめる・・こっそりと鬼の面をかぶ
せるのだ。

自分が鬼になってしまったと思い込み、驚き慌てる
太郎冠者。

最後、いっそ死んでしまおうと泉に飛び込もうとす
ると、その勢いで面が外れ・・・
「鬼の面が泉に落ちている」ではなく「鬼の抜殻が・・」
という発想が面白い・・鬼は実在しているのだ。

プログラムに「主人が毎回使いの前に酒を飲ませる
のは、相手が同性の恋人なので恥ずかしいから」と
いう主旨の説明があったが・・へぇー、知らなかった。

狂言「花盗人」。下屋敷の桜が見事に咲いたからと、
客を連れた主人が訪れると、なんと、桜の枝が折ら
れている。

きっとまた来る・・とみんなで待ち構えていると、
そこに現れたのはひとりの出家。

前日、折り取った枝を気に入りの稚児にやったとこ
ろ、今度はもっと大枝を!とねだられてしまい、ま
たまた来てしまったのだ・・

え、これもまた同性の恋人!?・・今回はそういう
テーマなのか?

捕らえられ桜の木の根元に縛られた出家(三位)は、
あれこれと古歌を引いて、花盗人の言訳をする。

それがなかなか面白いと、主人や客たちは喜んで、
ついには共に酒盛りに・・

「花盗人に罪はない」・・なーんて鷹揚に構えてい
ると、最後に一発、強烈なパンチを喰らいます。

狂言らしい皮肉さ。
そう、何を盗もうと、盗人は盗人。悪い事は悪いと
きちんとしなくちゃね。
posted by JTm at 09:02| 狂言 | 更新情報をチェックする

2019年05月25日

2019.5.24 国立能楽堂狂言の会

2019.5.24 国立能楽堂狂言の会 -家・世代を越えて-

演目
素囃子「神舞」
   笛=小野寺竜一、小鼓=森 貴史、
   大鼓=大倉栄次郎、太鼓=大川典良
狂言「末広かり」(和泉流)
   シテ(果報者)=野村 萬、
   アド(太郎冠者)=野口隆行、小アド(すっぱ)=佐藤友彦
   囃子方 笛=小野寺竜一、小鼓=森 貴史、
           大鼓=大倉栄次郎、太鼓=大川典良
  (休  憩)
狂言「二人袴」(大蔵流)
   シテ(親)=山本東次郎、アド(舅)=山本則俊、
   アド(太郎冠者)=大藏教義、アド(聟)=大藏基誠
狂言「蝸牛」(和泉流)
   シテ(太郎冠者)=野村万作、
   アド(山伏)=井上松次郎、小アド(主)=奥津健太郎
   囃子方 笛=小野寺竜一、小鼓=森 貴史、大鼓=大倉栄次郎
   
国立能楽堂の狂言の会、春はいつも三人の人間国宝と、
同流でも他家の若手の競演で。今回の演目は、かなり
ポピュラーで分かりやすいものが並んだ。

「末広かり」。「附子」と並んで教科書にも出ている
(らしい)有名な曲。これを御年89歳の萬師が演じる
のだから、落語で言えば、大真打が前座噺を演じるよ
うなものか。

騙されたとはいえ、扇と傘を間違える太郎冠者はとん
だ与太郎だけれど、これ、言ってみれば“催眠商法”み
たいな感じかな?

太郎冠者の必死の?囃子ものに、浮かれて身体が動き
出してしまう主人が、なんとも可愛らしい。

「二人袴」。小柄な東次郎師の親に、背の高い基誠師
の息子(聟)という組み合わせが、まず秀逸。

そして、この大きな息子が、「聟入りなんてイヤ」と
駄々をこね、「弁慶の人形を買って・・犬ころも欲し
い」と言い出すのだから、ふるってる。

この場面、わたしはいつも落語「明烏」の若旦那を思
い出すなぁ。

東次郎師演じる父親は、いかにも優しそうで息子を甘
やかしている・・なるほど、だからこんなふうに育っ
ちゃったんだねと、納得した次第。

「蝸牛」。これもまた、粗忽な太郎冠者がこともあろ
うに、カタツムリと山伏を取り違えるという・・ま、
現実にはあり得ないお話。

そのあり得なさを、まったく感じず素直に笑っていら
れるのは、やはり、演者の力だろう。

山伏をカタツムリと信じた太郎冠者が、「忙しい」と
言う山伏に「他の約束を取り消してぜひともうちへ」
と言うと、「背負ってくれるなら行く」と山伏。

山伏役の松次郎師は、かなりの重量級・・万作師、つ
ぶれちゃうよ!

これもまた、家・世代を越えての共演の成果か。

そして、見慣れた大蔵流の「蝸牛」とは、結末が少し
違う・・これはわたしには新発見だった。

最後、大蔵流では主人もまた、囃子に浮かれて踊り出
すのだけれど、和泉流では主人は最後まで冷静なまま。

もっとも、主人まで浮かれるとなると、「末広かり」
に似すぎちゃうから・・これで良かったってことかな。


萬師89歳、万作師87歳、東次郎師82歳(いずれも観
劇日の満年齢)。ますますのご活躍を!
posted by JTm at 09:48| 狂言 | 更新情報をチェックする

2019年05月24日

2019.5.23 さん喬ひとりきり三夜@日本橋劇場(その3)

2019.5.23 さん喬ひとりきり三夜 第三夜

演目
柳家小はだ       道灌
柳家さん喬       笠碁
  (仲 入 り)
柳家さん喬       宮戸川
  〃         船徳
         (三味線:太田その)

さん喬師匠、三日目のネタ出しは「宮戸川」。
前二日に比べると、通しでも1時間と、格段に短
い(笑)噺なので、さて、どうなるか・・

まずは前座から・・最終日、初の!男性が・・。

小はだ「道灌」。最初に習う噺だし、もう演り慣
れているはずで、表情や仕草はもう十分に面白い
んだけど、途中、急ぎすぎ?という感が。

江戸っ子は早口ってことなんだろうが・・慌てる
必要はないんじゃないかな?

さん喬「笠碁」。しばらく前から、宮戸川の前半
を笠碁につなげる試みをしていたが、今回はその
逆パターン。

とは言え、「お花半七、駆け落ちしたって?」と
いうセリフで始まるのだから、物語としてはこち
らが後になるわけで。

先日、露の新治師の会でも聞いた。ふたりの碁仇
が、仲良く喧嘩する微笑ましさは、何度聞いても
嬉しくなる。

さん喬「宮戸川」。半七が碁・将棋に凝って遅く
なる・・という発端が、笠碁からのつながりかな?

さん喬師の宮戸川は、お花ちゃんがなかなか積極
的で、これ、お弟子さんたちにも継承されている
みたい。

通しで後半まで聞くのは、たぶんお初。雲助師ほ
どではないが、鳴物も入れて芝居調に。そしても
ちろん、喬太郎師ほど陰惨にでもなく。

ただ、気を失ったお花を介抱しようと抱き上げた
男たちの「あったけぇな・・」という呟きに、こ
の暖かさがふっと、彼らの劣情を呼び起こしてし
まう怖さを感じた。

最後が夢オチなのは同じだけれど、その夢がどこ
からどこまでなのか?が、他の演者とは違う独自
なところ。驚いた。

ここで終わりと思ったが、拍手する暇も与えずに、
「若旦那、船頭になりたいって?」と、「船徳」
につなげた。

おお!・・・大川つながりか。

発端の船頭たちと親方のやり取りは割愛で、15分
程度の短い噺だったけれど、格好だけは一人前の
徳さん船頭・・大笑い。


この三日間、振返ってみると、なんか、さん喬師
匠が演りたいことを演りたいように・・という三
日間だった気がする。

特筆したいのは、三味線の使い方の上手さ。これ、
もちろんさん喬師匠自身の演出なんだろう、実に
効果的。

そして、それに応えたその師匠(第一夜・三夜)、
きょう師匠(第二夜)も素晴らしかった。
プログラムに、おふたりのお名前をきちんと載せ
てくれた、主催者の方にもお礼を申し上げたい。
posted by JTm at 08:56| 落語 | 更新情報をチェックする