2019年12月18日

2019.12.17 国立劇場十二月歌舞伎公演

2019.12.17 国立劇場十二月歌舞伎公演

演目
「近江源氏先陣館―盛綱陣屋―」(近松半二=作)1幕
  (配役)佐々木盛綱=松本白鸚、母微妙=上村吉弥、
      盛綱妻早瀬=市川高麗蔵、高綱妻篝火=中村魁春、
      和田兵衛=坂東彌十郎、北條時政=坂東楽善、
      高綱倅小四郎=松本幸一郎   外
  (休  憩)
「蝙蝠の安さん」―チャールズ・チャップリン生誕130周年
   チャールズ・チャップリン=原作(映画『街の灯』より)
   木村錦花=脚色    4幕8場
 序 幕   両国大仏興行の場
 二幕目 
  第一場  大川端の場
  第二場  上総屋の奥座敷の場
  第三場  八丁堀の長屋の場
  第四場  奥山の相撲の場
 三幕目   
  第一場  上総屋の奥座敷の場
  第二場  茅場町薬師堂裏の場
 大 詰   浅草奥山の茶店の場
  (配役)蝙蝠の安=松本幸四郎、花売りのお花=坂東新悟、
      上総屋新兵衛=市川猿弥    外

「近江源氏先陣館」。歌舞伎・文楽で「陣屋」と言えば
熊谷か盛綱か・・というところだが、今月は文楽で「熊
谷」を、歌舞伎で「盛綱」を・・という上演。
さて、意識してのことなのかどうか。

敵味方に分かれた、真田信之・信繁(幸村)兄弟をモデ
ルに、時代を鎌倉時代に置き換えて書かれた作。

智将佐々木高綱を、兄盛綱とともに召し抱えたいと思う
北條時政は、高綱の息子、小四郎が捕らえられたのを幸
い、高綱を味方に引き入れようと考える。

しかし、忠義の士、高綱は、とうにこのことを予想、逆
手にとっての策略を・・・

対する兄、盛綱は、弟に子ゆえの不忠をさせたくないと、
人質の小四郎に、切腹をさせようとするのだが・・。

あー・・これもまた、親のために子どもが犠牲になる話
だったなぁ・・なんか、許しがたいよ。

・・とは思いつつ、小四郎役の松本幸一郎くんのかわい
らしさ、その可愛い孫に切腹をさせようとする、祖母微
妙(ミミョウと読む)の苦衷が、心に迫って、ハンカチを握り
しめる・・・ホント、ここのところ、涙もろくなって・・

「蝙蝠の安さん」。蝙蝠安といえば、「与話情浮名横櫛」
(お富与三郎)に登場する小悪党の名前だけれど、ここ
では、ただお名前拝借だけで、特段の関係はない。

チャップリンの映画『街の灯』が原作、というのも驚き
だが、実は映画が日本で公開される3年も前に、映画の
脚本を基に歌舞伎で上演されていた・・というのは、もっ
と驚く。

脚色の木村錦花という方、どこかで聞いた名と思ったが、
先月歌舞伎座で上演の「研辰の討たれ」の作者だった。

物語は『街の灯』と同じで、貧しい盲目の花売り娘と、
もっと貧しい浮浪者同然の男との心の交流。

オープニングの石像開幕を大仏に置き換えたり、掛けボ
クシングを相撲に変えたりと、工夫に富んだ脚色。
チャップリンの帽子そっくりのお釜をかぶって見せたり
するのも面白く、時代も国も違う物語ながら、違和感は
感じない。

自らもチャップリンの大ファンだという幸四郎丈が、あ
のパントマイムの名手の仕草の味わいを、しっかり自分
のものにしていたことに大いに感心した。

そして、「盛綱陣屋」では戦いの様子を知らせる注進役
をコミカルに演じた猿弥丈が、人は好いが酒癖の悪い大
金持ちの上総屋を、これまた愉快に演じた。

近頃、アニメを原作にした新作歌舞伎が大流行だが、個
人的にはあまり関心が持てずにいる。
でも、こうした風潮は、決して今に始まったことではな
くて、昭和の初めにすでにこんな例があったんだ・・と、
目からウロコの落ちた思いではある。面白かった。
posted by JTm at 16:11| 芝居 | 更新情報をチェックする