2020年01月26日

2020.1.25 出雲の神楽@国立小劇場

2020.1.25 民俗芸能公演 出雲の神楽・第一部

演目
佐陀神能  島根県松江市・佐陀神能保存会
 「入申(いりもうす)」
 七座「御座(ござ)」
    舞=西山 彰 
    囃子方 鼕長太鼓=石橋淳一、締太鼓=宮川康秀、
        笛=川谷房光、銅拍子=松尾真己
 (解説)  錦田剛志(島根県・万九千神社宮司)
 神能「三韓(さんかん)」
    武内宿禰=幡垣俊輔、神功皇后=板橋貴男、
    神主/百済王=幡垣裕行、神子=長谷川みゆ、 
    高麗王=西山 彰、新羅王=中村暢夫
    囃子方 大鼕=石橋淳一、大鼓・銅拍子=宮川康秀、
        小鼓・笛=松尾真己、川谷房光
  (休 憩)
大土地神楽  島根県出雲市・大土地神楽保存会神楽方
 七座「悪切(あくぎり)」
    神官=園山隆一
    囃子方 大鼕=坂本伸仁、
        小太鼓=水師正雄、安達拓矢、板垣 努、
        笛=大村 聡、安田晋也、杉谷勇樹
 (解説)  錦田剛志
 神能「八戸(やと)」
    素戔嗚尊=(前)栗田和弘、(後)福代 純、
    足名椎=桐山和弘、手名椎=春日 卓、
    稲田姫=大梶明美、八岐大蛇=日野昌幸
    囃子方 大鼕=水師正雄、
        小太鼓=坂本伸仁、安達拓矢、板垣 努
        笛=大村 聡、安田晋也、杉谷勇樹


2020.1.25 民俗芸能公演 出雲の神楽・第二部

演目
大土地神楽
 「入申」
 七座「茣蓙舞(ござまい)」
    下照姫命=小田沙和子、御多福=小田武司
    囃子方 大鼕=坂本伸仁、
        小太鼓=桐山和弘、園山隆一、板垣 努、
        笛=大村 聡、日野昌幸、荒木奏人
 (解説)  錦田剛志
 神能「野見宿禰(のみのすくね)」
    野見宿禰=安達拓矢、当麻蹴速=福代 純、
    行事=安田晋也
    囃子方 大鼕=水師正雄
        小太鼓=桐山和弘、園山隆一、春日 卓
        笛=大村 聡、日野昌幸、荒木奏人
  (休  憩)
佐陀神能
 七座「剣舞(けんまい)」
    舞=幡垣裕行、幡垣俊輔、板橋貴男、中村暢夫、
    囃子方 鼕長太鼓=石橋淳一、締太鼓=宮川康秀、
        笛=川谷房光、銅拍子=松尾真己
 (解説)  錦田剛志
 神能「八重垣(やえがき)」
    奏仁=西山 彰、奇稲田姫=朝山慎二郎、
    素戔嗚尊=幡垣俊輔、大蛇=中村暢夫、
    後見=池田俊貴
    囃子方 締太鼓=石橋淳一、大鼓・銅拍子=宮川康秀、
        小鼓・笛=松尾真己、川谷房光
 「成就神楽(じょうじゅかぐら)」

旅先などで、偶然に神楽を見る機会があって興味を持ち、
東京で公演のある際は、なるべく見るようにしている。

今回は、出雲大社のお膝元、島根県に伝わる出雲神楽か
ら、松江市の佐陀神能(さだしんのう)と、出雲市の大
土地神楽(おおどちかぐら)の公演。

佐陀神能は、出雲国の二の宮、つまり出雲大社に次ぐ、
格式のある佐太神社に伝わる神楽で、それだけに、神道
との結びつきが強く、神事としての格式を保持している。

一方、大土地神楽は、出雲大社に近い大土地荒神社に伝
わる神楽である。江戸時代までの神楽は、もっぱら神職
によって演じられてきたが、この大土地神楽は、すでに
江戸時代の末には、神職ではない氏子たちに継承された。

それだけに、観衆を意識した、娯楽としての要素が強く
見られる。

・・という、対照的なふたつの神楽を、二部にわたって
見る。

どちらの神楽にも、神事として行われる「七座」と、神
話の歌劇化ともいえる「神能」の二種類の演目が伝わり、
佐陀神能には、さらに「式三番」も伝承されている。

以上が、解説とプログラムからの受け売りです。

個人的に、見比べたいと思ったのは、「八戸」と「八重
垣」で、どちらも、素戔嗚尊の大蛇退治を題材とする。

大土地の「八戸」では、大蛇はなぜか手足のあるトカゲ
みたいな形で、鯉のぼりの模様のようなウロコ模様の着
ぐるみで大暴れ・・対する素戔嗚尊も、汗だくの大立ち
回り・・・

一方、佐陀の「八重垣」では、大蛇は立ち姿で、歌舞伎
の衣装のような、三角を並べた鱗模様の衣装・・大振り
の面には、目が、なんと16個!(八頭の大蛇だから・・)

そして、この大蛇と戦うのは、もっぱら素戔嗚尊の部下
の奏仁で、尊は最後の最後に、とどめを刺すだけ。

この一事だけでも、ふたつの神楽の性格の違いがよく見
える・・面白い公演でした。

もうひとつ、大土地神楽の「悪切」がすごかった・・か
なりテンポが速く、動きの大きな舞を、35分間、ひとり
で舞うのである。
・・なんだか、見ている方が、息切れして酸欠になりそ
うだった。 
posted by JTm at 11:21| 雑記 | 更新情報をチェックする

2020.1.24 国立能楽堂狂言の会

2020.1.24 国立能楽堂狂言の会

演目
狂言「三本の柱」(大蔵流)
   シテ(果報者)=善竹忠重、
   アド(太郎冠者)=善竹富太郎、(次郎冠者)=善竹忠亮、
     (三郎冠者)=茂山忠三郎、 後見=善竹大二郎
   囃子方 笛=栗林祐輔、小鼓=鳥山直也、
       大鼓=佃良太郎、太鼓=林雄一郎   
狂言「法師ヶ母(ほうしがはは)」(和泉流)
   シテ(夫)=野村万作、アド(妻)=野村萬斎
   囃子方 笛=栗林祐輔、小鼓=鳥山直也、大鼓=佃良太郎
   地謡=中村修一、石田幸雄、高野和憲、内藤 連
  (休  憩)
新作狂言「彦市ばなし」(大蔵流)
   シテ(彦市)=茂山千五郎、
   アド(天狗の子)=茂山千之丞、(殿様)=茂山逸平
   囃子方 笛=栗林祐輔     後見=茂山 茂

「三本の柱」。昨年11月に、山本東次郎家の公演で
見たが、同じ大蔵流ということもあり、筋立ては変
わらない。

ただ、果報者(主人)が、「三本の柱を三人で二本
ずつ」持つようにと言いつけるのは、「三人の者の
知恵を試すため」という独白があった。
・・これ、初耳のような?・・聞き損ねただけ?

「法師ヶ母」。以前に見たような気がするが、記録
に出てこない。見たとしても、おそらく大蔵流で、
和泉流ではお初かと思う。

酔っぱらった亭主が帰宅して、女房に文句をつける・・
なんだか、落語の「替り目」みたいな始まり。
ただ、落語と違って、この亭主、なかなか強い(あ
とで酔った勢いと判明するが)。女房に離縁を申し
渡すのである。

泣きながら去る女房・・心にかかるのは愛しいわが
子のこと・・題名の「法師」は、金法師つまり、赤
子のことである。

翌朝、酔いのさめた亭主は、女房を探してさまよう
・・これ、「隅田川」など、能の物狂いもののパロ
ディなのだそうだ。
ここから、能がかりの謡の連続となり・・うーん、
ちと難しいです。

余談だが、離縁される女房が、亭主に対して、離縁
の印を要求するのが興味深い・・慰謝料かな?

「彦市ばなし」。劇作家・木下順二が新劇のために
書いた脚本を、そのまま、狂言にしたという新作・・
と言っても、狂言での初演は1955年だそうだから、
もう60年以上前のことだ

熊本の民話・彦一(昔話ではこの字)ばなしをもと
に、セリフもすべて熊本弁(作者の意思により改変
出来ないとのこと)であるが、そのまま狂言のセリ
フとして、まったく違和感はない。
(むしろ新劇の方が馴染まないのでは?という気がするが、
見たことがないのでわからない)

嘘つき名人を自認する彦市が、天狗の子を騙して隠
れ蓑を手に入れる。親天狗の報復を恐れた彦市は、
さらに一計を案じて、殿様をも巻き込み・・

彦市のキャラクターは、上手いことやって楽しよう
とするが失敗し、自分の嘘の糊塗に汲々とする・・
というもの。お調子者だがどこか憎めない。

それ以上に憎めないのが、彦市の嘘をまんまと信じ
て、河童が釣られるのを楽しみにしている殿様。
言ってしまえば、とんだ馬鹿殿なんだけれど、おお
どかで愛嬌のある、可愛らしいお殿様である。

この公演に先立って、21日に「『彦市ばなし』と新
作狂言の流れ」と題する講演会(講師:能楽研究家・
小田幸子氏)があり、受講することが出来た。

その中で、この殿様のキャラクターが、新劇と狂言
では大きく違う・・という話があった。
新劇では、殿様は馬鹿にされ疎まれ批判されるべき
対象として描かれる・・のだそうだ。

セリフはまったく同じなのに、狂言と新劇でそんな
に違って来るというのは、もちろん演出の違いであ
り、特に狂言には「大名」という役どころが昔から
あるので、その伝統的キャラクターに寄せている・・
ということだった。

それはもちろんそうなのだろう・・でも、もうひと
つ、この違いを生む大きな要素があったのではない
かと、わたしには思える。

それは、初演時の殿様役が、四世茂山千作師であっ
たということだ。

舞台にいるだけで、見る人を幸せにしてくれた、あ
の四世千作師個人の魅力が、この殿様の性格を決定
した・・そんな気がしてならない。
posted by JTm at 09:35| 狂言 | 更新情報をチェックする