2020年02月15日

2020.2.15 立合狂言会@国立能楽堂

2020.2.15 第六回 立合狂言会 太郎冠者八番勝負

演目
ご挨拶と解説     世話人 大藏彌太郎、野村又三郎
狂言「口真似」(大蔵流・山本東次郎家)
  太郎冠者=山本凛太郎、主人=山本泰太郎、
  客=山本則孝、    後見=大藏彌太郎
狂言「舟ふな」(和泉流・狂言共同社)
  太郎冠者=鹿島俊裕、
  主人=井上松次郎、  後見=野村又三郎
狂言「千鳥」(大蔵流・茂山忠三郎家)
  太郎冠者=茂山忠三郎、主=山本善之、
  酒屋=岡村宏懇、   後見=大藏彌太郎
狂言「文荷(ふみにない)」(大蔵流・茂山千五郎家)
  太郎冠者=茂山千五郎、次郎冠者=鈴木 実、
  主=島田洋海、    後見=大藏彌太郎
  (休  憩)
解説      野村又三郎、大藏彌太郎
        (狂言小舞競演「七つになる子」)
狂言「清水」(大蔵流・善竹家)
  太郎冠者=善竹大二郎、
  主=善竹富太郎、   後見=大藏彌太郎
狂言「不見不聞(みずきかず)」(和泉流・野村又三郎家)
  太郎冠者=野口隆行、主=野村信朗、
  菊市=奥津健太郎、  後見=野村又三郎
狂言「太刀奪」(大蔵流・大藏彌右衛門家)
  太郎冠者=大藏教義、主人=大藏基誠、
  通りの者=吉田信海、 後見=大藏彌太郎
狂言「長刀応答(なぎなたあしらい)」
  太郎冠者=野村万之丞、主=野村万蔵、
  花見客=能村晶人、河野祐紀、野村拳之介、
      野村眞之介、 後見=野村又三郎 外1
附祝言「猿唄」  出演者全員

第5回目までの世話人、野村万蔵、茂山千三郎両師から、
大藏彌太郎、野村又三郎両師にバトンタッチしたそうで、
それにともなって?、今までの、同じ演目を各家ごとに
競演というスタイルから、プログラムが変更に。

今回は、狂言の“大立者”太郎冠者をシテ(主役)とする
演目での、各家競演。昨年まで参加の、三宅狂言会が不
参加なのは・・なぜでしょう?

「口真似」。わたしにとって、ここのところお馴染みに
なりつつある山本東次郎家・・主人役の泰太郎師は、次
期当主候補ナンバーワンで、凛太郎さんはそのご長男だ。

演目「口真似」は、分かりやすく単純明快で誰でもが笑
えるお話・・良い酒を手に入れた主人が、召使の太郎冠
者に、ともに飲む客人を迎えに行かせるが・・・

これ、もしかしたら、自分が飲みたかった太郎冠者の嫌
がらせ?・・・どっちにせよ、気の毒なのはお客人。
・・ま、ただ酒に釣られて来たのも悪いんだけど。

「舟ふな」。こちらは仲の良い主従の、からかい合いの
ような言葉遊び。渡し場で「ふなやーい!」と舟を呼ぶ
太郎冠者に、「ふなではないふねだ!」と叱る主人・・
が、古歌や謡を引いての“実証合戦”は、どうやら太郎冠
者に分があるような・・・?

この演目を見るたびに思い出すのは、某上方落語の中の
喜六・清八の掛け合い・・曰く、「大坂には“ばし”はあ
るが“はし”はない」・・。と。

確かに、心斎橋、天神橋、難波橋・・みんな“ばし”です。

上につく言葉との関係で、文脈の中では、個別に言う時
と違ってしまう・・そこを上手く利用した脚本。

「千鳥」。この演目の太郎冠者は、本当に“良い仕事”し
ますなぁ・・・金もないのに「客があるから酒屋に行っ
て酒をひと樽取って(買ってではなく)来いと言う主人
の命・・これを、見事にしてのける。

しかしこれも、仲良しで話好きの酒屋の存在があればこ
そ。愛嬌たっぷりに酒屋を“篭絡”する、太郎冠者役・茂
山忠三郎師の魅力が満開。

「文荷」。同僚の次郎冠者とともに、主人の文を届ける
太郎冠者・・この文が、どうしてだか、滅法、重くて・・
どうやら、この文、恋文らしい・・しかも、相手は同性
の恋人?

男同士の恋は、中世にあっても奇妙なものと思われたの
かな?・・・太郎冠者、次郎冠者が、恋文を読んで盛り
上がれば盛り上がるほど、主人の悲哀を感じる。

休憩後、ふたたび登場の世話人さんおふたりで、お馴染
みの小舞競演・・同じ曲でも、全然違う舞・・不協和音
もまた楽し。

「清水」。夕暮れの時刻に、清水に水を汲みに行けと命
じられた太郎冠者が。なんとか行かずに済ませようと考
えるが・・・

なんのことはない、決局、太郎冠者は清水への道を、何
度もたどることに・・・最初から、ちゃんと水汲みに行
けばよかったのにね・・ま、それでは狂言が成り立たな
いけれど。

「不見不聞」。視覚障害、聴覚障害を揶揄した内容で、
現在では、一般の公演ではまず、上演されない・・と。
(この日、NHK「にっぽんの芸能」の録画が行われて
いたが、この演目は、「絶対に放送されません」)

耳の遠い太郎冠者ひとりに留守番をさせるのを不安に思
う主人が、なんと、座頭の菊市を“助っ人”に。
・・これがもう、なんで?と思わざるを得ない。どうせ
頼むなら、健常者に頼めよ、と。

そして、障害をかかえるふたりが、互いに助け合うので
はなく、逆に相手を攻撃しあうのはなぜなのか。
・・笑いながらも、なんだかもの悲しくなる演目。

「太刀奪」。田舎者の持つ太刀を、主人がほめたことか
ら、太郎冠者はこの太刀を奪い取ろうと思い立つ・・えー、
それ、ダメでしょ!?

しかしこの男、決して間抜けな田舎者ではないようで、
太郎冠者は逆にとっつかまって、主人から借りた刀を奪
われる破目に・・。

今度は主従で刀を奪い返そうとするふたり・・しかし・・

結局、一番間抜けなのは、太刀を持つ田舎者ではなく、
太郎冠者?・・その間抜けさ加減が、また憎めないんだ
けれど。

「長刀応答」。和泉流にだけ伝わり、めったに上演され
ることのない稀曲とのこと。

題名の長刀応答(あしらい)は、長刀を使う時のように、
左右に受け流して適当にあしらう意味だそうだが、それ
を知らない太郎冠者は、本物の長刀を・・

留守を預ける太郎冠者に、主人は(客が来たら)「長刀
あしらいで」と言いつけて出かける。
折から、主人の家の庭は花の盛りで、花見客が次々に・・

とんだ勘違いもの・・狂言にはよくあるパターン。
シテの万之丞師に、昨年までの世話人でもある父の万蔵
師が主人役で付き合い、立衆の花見客には、万之丞師の
弟さんたちも参加・・そして、テーマも花見で、大いに
明るく華やかに・・

えー、なぜ、あまり上演されないの?と、ちょっと不思
議な感じだった。

最後は、恒例の撮影タイムもたったけれど、今回は残念
ながら、カメラを忘れました・・。
posted by JTm at 20:46| 狂言 | 更新情報をチェックする