2018.10.10 国立劇場十月歌舞伎公演
演目
通し狂言「平家女護島(へいけにょごのしま)」三幕四場
近松門左衛門=作
序 幕 六波羅清盛館の場
(休 憩)
第二幕 鬼界ヶ島の場
(休 憩)
第三幕 敷名の浦磯部の場
同 御座船の場
(配役)平清盛・俊寛僧都=中村芝翫、
東屋=片岡孝太郎、有王丸=中村福之助、
成経=中村松江、海女千鳥=坂東新悟、
教経・丹左衛門基康=中村橋之助、
瀬尾太郎兼康=中村亀鶴、
後白河法皇=中村東蔵 外
第二幕の鬼界ヶ島の場、通称「俊寛」のみが上演され
ることが多いが、昨年2月の文楽に続き、今回は、歌
舞伎での通し公演。
平成7年の再演とのことで、前回は確か、吉右衛門丈
が清盛と俊寛を演じたと記憶している。
平家に対する謀反を企てた罪で、絶海の孤島に流され
た三人・・待ちに待ったご赦免船が到着して、嬉しや、
都へ帰れる・・と浮き立つ気持ちが、一転して・・
というのが、「俊寛」のあらすじだが、今回は、その
俊寛の留守を守る妻・東屋に、清盛が言い寄る前段と、
ご赦免船が、清盛&後白河法皇の乗る御座船に行き合
う後段が付いた。
第一幕、東屋と清盛の物語は、文楽では東屋の首を、
教経が清盛に示す、なかなかエグイ場面があったよう
に思うが、さすがに歌舞伎では割愛。人形と違って、
生身の人間だから、さすがに行き過ぎ・・ということ
なのだろう。
第二幕、鬼界ヶ島では、千鳥役の新悟丈と許婚の成経
役の松江丈に、初々しいカップルの風情・・・俊寛が、
千鳥を我が子のように思ってしまう気持ちに同調でき
る感じ。
そして、最後に、自ら望んでとは言え、次第に離れて
行く船を見送る俊寛の絶望感が、ひしひしと伝わって
来る。印象的な幕切れ。
ただやっぱり、ここが印象的であればあるほど、後の
幕は、付けたりだなぁ・・という感慨が無きにしも非
ず。
休憩が25分とやや長めのせいもあってか、ここで帰ろ
うとして職員に押し止められているお客さんもいたく
らい。
でも、第三幕は、千鳥の活躍と、有王丸の大立ち回り
で、きちんと、飽きさせない作りになっている。だか
ら、二幕で帰らないで、ちゃんと最後まで見てね。
清盛と俊寛、二役を務める芝翫丈・・申し訳ないが、
憎々しい清盛の方が、断然、似合い。そう言えば、最
近、TVドラマでも、悪役が多いよなー・・・。
そして、あまりしどころはないものの、後白河法皇役
の東蔵丈が、気品ある法皇様で、舞台を引き締めてい
た感じ。白塗りのためもあってか、御年80歳とは思え
ない若々しさだった。