2019年02月20日

2019.2.19 赤坂文楽@赤坂区民センター

2019.2.19 赤坂文楽 第一部・第二部

第一部 人形浄瑠璃文楽 文楽体験講座

演目
三味線演奏「海響」   鶴澤藤蔵
お話と質問コーナー     〃
三味線演奏体験    
   指導 鶴澤藤蔵&鶴澤清志郎&鶴澤清公
三味線演奏       鶴澤藤蔵
            鶴澤清志郎
            鶴澤清公

第一部は、文楽三味線のワークショップ。藤蔵師の
お話と実演、そして、客席からの参加者を募って、
三味線弾き体験。

太棹ではなく長唄の・・と言っておられたが、三味
線経験者が、客席に多くて、ちょっと驚いた。

そのためか、客席からの質問もなかなか専門的な内
容だった。

冒頭の演奏、「海響(かいきょう)」は、東日本の
震災復興祈念の意を込めて、藤蔵師が作った曲との
こと。

最後の三人の合奏は、阿古屋の三曲からと、地唄の
「雪」、そして、「野崎」でした。


第二部 人形浄瑠璃文楽 名作鑑賞

演目
文楽のお話「生写朝顔話のみどころ」
            葛西聖司
出演者トーク      豊竹呂勢太夫、鶴澤藤蔵、
            吉田玉助、吉田一輔
            (司会)葛西聖司
  (休  憩)
人形浄瑠璃文楽「生写朝顔話」
   宿屋の段     豊竹呂勢太夫、
            鶴澤藤蔵、
            鶴澤清公(琴)
   大井川の段    豊竹靖太夫
            鶴澤清志郎
    人形役割(各段共通)
     駒澤次郎左衛門・奴関助=吉田玉助
     戎屋徳右衛門=吉田玉佳
     朝顔=吉田一輔、岩代多喜多=吉田玉勢  外
    囃子 望月太明藏社中

元NHKアナウンサーの葛西氏の、名調子の解説と、
出演者4人のトークに続き、「生写朝顔話」から二場
面を上演。

すれ違い続きのメロドラマ・・葛西氏の解説によると、
「携帯電話がないから」「写真がないから」・・・
現代はどうやら、この手のメロドラマは成立しない世
の中のようだ。

でも、そういう連絡手段がない時代だからこそ、人と
人との思いの強さは今より何倍も、何十倍も強かった
のかもしれない。

前段のトークで、呂勢太夫師が「ある意味ストーカー
ですよね・・ちょっと引いちゃいます」と言っておら
れたけれど、これはやっぱり、現代人の感覚でしょう。

ただ、実はこのふたり、何もしなければフツーに順調
に結ばれていた仲。

それが、ジタバタと足掻いたがために、却って、しな
くてもいい苦労をし、さらに、死なないくてもいい多
くの人を死なせてしまう。

こりゃやっぱり、「なんだよー・・」って感じだなぁ。

この作品、あまり物語にとらわれずに、場面ごとに、
その時ごとの、人々の気持ちに寄り添って、感情移入
しつつ鑑賞するのが正解かもしれない。
posted by JTm at 08:52| 文楽 | 更新情報をチェックする

2019年02月07日

2019.2.6 人形浄瑠璃2月文楽公演@国立小劇場

2019.2.6 人形浄瑠璃2月文楽公演 第三部

演目
「鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」
  中将姫雪責の段
   太夫=(前)豊竹靖太夫、(奥)竹本千歳太夫
   三味線=(前)野澤錦糸、(奥)豊澤富助
   胡弓=(奥)野澤錦吾
   人形役割
    中将姫=吉田簔助、岩根御前=吉田簔二郎、
    浮舟=桐竹紋臣、桐の谷=吉田一輔、広嗣=吉田清五郎
    豊成卿=吉田玉也    外
  (休  憩)
「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」
  阿古屋琴責の段
   太夫 阿古屋=竹本津駒太夫、
      重忠=竹本織太夫、岩永=竹本津國太夫、
      榛沢=竹本小住太夫、水奴=竹本碩太夫
   三味線=鶴澤清介、ツレ=鶴澤清志郎
   三曲(琴・三味線・胡弓)=鶴澤寛太郎
   人形役割
    阿古屋=桐竹勘十郎、重忠=吉田玉助、
    岩永=吉田文司、榛沢=吉田玉翔  外

   囃子=望月太明藏社中

前日に続き、この日は第三部へ。なぜか、若いきれい
な女性が折檻される演目がふたつ。

「鶊山姫捨松」。中将姫と言えば当麻寺、当麻曼荼羅
が思い浮かぶ。その時代8世紀を舞台に、皇位継承争
いに巻き込まれた姫の悲劇。

悪役として登場する(名前だけだが)のが、長屋王と
いうのは驚いた。天武天皇の孫ながら、皇位継承とは
無縁の人、そのころ勢力を固めつつあった藤原氏との
政争で乱をおこし、敗れて自害した、悲劇の王子と思っ
ていたから。

そして、かつて奈良に某デパートが建築される際の発
掘調査で、そこが長屋王の邸跡とわかり、ニュースに
なったのを覚えている。今や、そのデパートすら存在
しないのだが。

この浄瑠璃の中では、わが息子を皇位継承者にとたく
らむ長屋王が、息子の乳母で右大臣藤原豊成の後妻と
なっている岩根御前と組んで、中将姫が預かる天皇守
護の仏像を取り上げようと謀る。

長い物語の一場面のみの上演なので、前後関係がよく
わからないのだが、今回上演の場面では、この仏像は
すでに岩根御前の手に渡っているらしい。

・・・えー、それじゃなんで!?と思うのだけれど、
岩根御前は知らん顔で中将姫を拷問し、仏像の行方を
吐かせようとする・・・

いやいや、これはもう、拷問のための拷問でしかない。
なんか、もう、倒錯の世界。

歌舞伎もだけれど、文楽にもこういうのあるんだなぁ。
初演は1740年とのことだが、その後の文化文政期の、
爛熟した文化の先取りのような気がする。

この演目の必見は、なんと言っても中将姫を遣う簔助
師。責められておちいった後の、細かい動きにまで神
経が行き届いて、薄幸な女性の哀れを余すところなく
描き出した。まさに息を飲む思いで見入った。

余談。雪中の責めということで、現実のニュース、寒
中に冷水を浴びせられて亡くなった少女を思う。いや
まったく、こんなの物語の中だけにして欲しい。

「壇浦兜軍記」。こちらは源平の争いが背景。頼朝の
首を狙う、平家の残党・悪七兵衛景清の行方を探る源
氏方は、景清の恋人であった阿古屋を捕えて尋問する。

理を説くばかりの重忠の尋問を、生ぬるいと批判する
岩永に、重忠は言う、「じゃ、拷問しましょ」。

しかしこの重忠の拷問は、前の演目と違って大変に優
雅。なんと、阿古屋に、三つの楽器を弾かせようとい
うのだ。

いやー、この三曲がなんとも素晴らしかった。
もちろん、実際の音色は床から来ているはずなのだが、
人形の動きと楽の音が、ものの見事にシンクロしてい
て、もう、人形が弾く楽器から音が出ているとしか見
えないし、聞こえないのだ。

人形を遣う勘十郎師と、三曲を実際に弾いた寛太郎師
との、本当に見事なコラボレーション。いいもの見せ
て(聞かせて)いただきました。

この演目、主要人物を遣う主遣いがすべて裃を着用、
そして、阿古屋の人形は、左と足も出遣いで、いつも
は黒衣の陰にあるお顔を、しっかりと拝見・・ついで
なら、プログラムに名前も載せておいて欲しかったな。    
posted by JTm at 19:19| 文楽 | 更新情報をチェックする

2019.2.5 人形浄瑠璃2月文楽公演@国立小劇場

2019.2.5 人形浄瑠璃2月文楽公演 第一部・第二部

第一部演目
「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」
  石部宿屋の段(二代野澤喜左衛門=作曲)
   太夫=豊竹芳穂太夫、ツレ=豊竹亘太夫
   三味線=野澤勝平、ツレ=野澤錦吾
  六角堂の段
   太夫 お絹=豊竹希太夫、長吉=豊竹咲寿太夫。
      儀兵衛=竹本文字栄太夫
   三味線=竹澤團吾
  (休  憩)
  帯屋の段
   太夫=(前)豊竹呂勢太夫、(切)豊竹咲太夫
   三味線=(前)鶴澤清治、(切)鶴澤燕三
  道行朧の桂川
   太夫 お半=竹本織太夫、長右衛門=豊竹睦太夫、
      竹本小住太夫、竹本碩太夫
   三味線=竹澤宗助、鶴澤清馗、鶴澤清公、
       鶴澤燕二郎、鶴澤清允
   人形役割(各段共通)
    お半=豊松清十郎、長右衛門=吉田玉男、
    丁稚長吉=吉田文昇、女房お絹=吉田勘彌、
    母おとせ=桐竹勘壽、親繁斎=吉田玉輝、
    弟儀兵衛=吉田玉佳     外
   囃子=望月太明藏社中

第二部演目
「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」
  大経師内の段(五代鶴澤燕三=補曲)
   太夫=(中)豊竹希太夫、(奥)竹本文字久太夫
   三味線=(中)鶴澤清𠀋、(奥)鶴澤藤蔵
  (休  憩)
  岡崎村梅龍内の段(五代鶴澤燕三=補曲・作曲)
   太夫=(中)豊竹睦太夫、(奥)豊竹呂太夫
   三味線=(中)鶴澤友之助、(奥)竹澤團七
  奥丹波隠れ家の段(五代鶴澤燕三=作曲)
   太夫 茂兵衛・梅龍=竹本三輪太夫、
      おさん・助右衛門=竹本南都太夫、
      万歳・役人=豊竹咲寿太夫
   三味線=鶴澤清友
   人形役割(各段共通)
    おさん=吉田和生、茂兵衛=吉田玉志、
    大経師以春=吉田玉勢、下女玉=吉田蓑紫郎、
    赤松梅龍=吉田玉也    外
   囃子=望月太明藏社中

第一部、「桂川連理柵」。落語ファンにとっては、上方落語
「どうらんの幸助」に出てくるアレ、という物語である。

40歳に近い長右衛門と、14歳のお半がひょんなことから関
係を持ち、お半は身重に・・って、これ、犯罪でしょ。

ただ、裏には複雑な因果関係がある。
まず、長右衛門はもともと捨て子だったのだが、お半の生家・
信濃屋で5歳まで養育され、その後、隣家の帯屋に養子とし
て迎えられた。

そんなことから、その後に信濃屋に生まれたお半とは兄妹の
ような関係にあったと想定される。しかし、本当のきょうだ
いではない・・・となれば、おませな女の子の考えることは
決まっている。

お半の述懐に、「小さい時からお前(長右衛門)をまわし、
祇園参りや北野さん、物見見物後追うて、手を引かれたり負
われたり・・人が尋ねりゃ長さんが(親たちより)たんとい
としと言うた時、やんがて女夫にならんしよと・・」とある
のを見ても、お半はとうから長右衛門が好きだったのだ。

このふたりの関係は、なんとなく、「お初徳兵衛」(これま
た落語の話ですいません)を思わせる・・石部の宿での出来
事は、四万六千日に首尾の松に舫った屋根舟での出来事に通
じるのだ。

もうひとつの因果関係は、長右衛門のかつての色事にある。
彼は、15年前、馴染みになった芸妓と心中を図って、女を死
なせ、自分だけ生き残ったのだった。

その後も、女房のお絹の寛容をいいことに、遊びを続けてい
たようで、結局、女が好きなんだよね、こいつ。石部の宿で
お半を寝床に入れてしまったら、手を出さずにはすまないヤ
ツなんです。

そして、お半の妊娠と預かった刀の紛失という、のっぴきな
らない出来事に遭遇した時、かつて死なせた女を思い出す・・
その出来事は15年前、お半の年齢は14歳・・そうか、あの
娘はあの女の生まれ変わりなんだ・・と、彼は思う。

いやいや、怖い話・・・お半も怖いし、祟った芸妓も怖い。
そして、貞淑な女房のお絹だって、もしかしたら心に嫉妬の
炎を燃やしているかもしれないし、継母のおとせときたら、
顔(かしらの名が悪婆というくらい)からして、大いに怖い。

女はみんな怖くって、男は馬鹿。そんな中で、阿呆のはずの
丁稚だけが、妙に悪知恵を働かせるというのが、なんとも皮
肉だった。

太夫、三味線とも、若手中心の座組のなかで、帯屋の切の咲
太夫師が、さすが!の貫禄。1月の大阪公演での休演から、
元気に復帰してくださったのがなにより嬉しい。

そして、三味線の燕三師、道行の段の5人の師匠方の演奏の
印象が強く、今も耳の奥に残っているようだ。

第二部、「大経師昔暦」。大経師というのは、朝廷に出入り
する表具師で、暦の発行権を与えられているという。

その大経師の妻であるおさんが、手代の茂兵衛と密通し、不
義の罪で処刑されたという実際の事件に取材した作品である。

冒頭、おさんが女中のお玉と、飼い猫を遊ばせながら、猫の
恋にことよせて、自らの行く末を暗示するような会話を交わ
す・・ここの猫が、とっても可愛くて、猫好きには嬉しい。

そしてこの会話と続く場面で、登場人物の関係が明らかになっ
てくる・・おさんの夫・以春は女中のお玉に言い寄っている、
お玉は茂兵衛が好きだがカタブツの茂兵衛春はすげない、そ
して、重手代の助右衛門はおさんに横恋慕している・・った
く、どうなってるの?この家!

夫の以春を懲らしめようと、おさんとお玉が寝床を交換した
のが運の尽き、その夜に限って、忍んで来たのは茂兵衛・・
・・うーん、これ、不義とか不倫とかじゃなくて、出会いが
しらの事故だよねぇ。

しかし、身分制度の厳しい時代、そして男尊女卑の時代には、
こんな“事故”でも、裁かれずにはおかれない。

事件が発覚するや、おさんと茂兵衛は着の身着のままで出奔、
ふたりの仲を取り持った罪で、女中のお玉も請人の伯父・梅
龍のもとに返される。

お玉を心配するおさんが、茂兵衛と共にその伯父の家を訪れ、
おさんのことを案ずる両親もまた、その地を訪ねてくる。

ここであきらかになるのは、おさんの生い立ち。おさんの実
家は、なんの商売なのかよくわからなかったが、あまり景気
がよくないようで、借金も嵩み、家屋敷を人手に渡す瀬戸際
に来ている。

なので、ひとり娘のおさんに婿を迎えてあとをとらせても苦
労させるばかりと、あえて嫁に出した。ろくな支度も持参金
もなしに、「あなたの娘なら」というだけでもらってくれた
大経師・以春に、老親は義理を感じているのだ。

ああ・・でも、お父さん、その大経師殿に、貴方の娘さんは
さんざん、苦労させられているんですよ、と、現代の我々は
つい思ってしまうのだが・・・それは、近松の世界ではない
のだよね。

この段の最後、物干しの柱に寄るおさんと茂兵衛の影が、ま
るで磔柱に架けられたように見えたり、戸口から顔を出すお
玉の頭の影が、極門首のように見えたりと、不吉な未来を暗
示する・・・

これ、素晴らしい場面だと思うのだが、残念ながら、わたし
の席からは、おさんの影しか見ることが出来なかった・・も
う少し、真ん中の席にすればよかったな。

最後の段は、茂兵衛の故郷・奥丹波に潜むふたりのもとに、
役人がやって来る。近松の原作では史実とは違って、このあ
と、ふたりは命を助けられるのだそうだが、今回はその場面
の上演はなし。

うーん、可哀想だけれど、ふたりが捕らえられるところで終
わる方が、余韻が残って正解かな・・ひとりだけ先に死んで
しまう、お玉さんのためにも、この方が良い。

こちらも第一部同様、若手の太夫が頑張ったが、一番印象深
かったのは、やはりベテラン、梅龍内の後半の呂太夫師。
おさんの父・道順の、娘への愛情と婚家への義理の間で、引
き裂かれる心が悲しかった。
posted by JTm at 15:01| 文楽 | 更新情報をチェックする