2020年02月26日

2020.2.25 赤坂文楽@赤坂区民センター

2020.2.25 赤坂文楽#22 関取千両幟

演目
挨拶と解説       葛西聖司
トーク         鶴澤藤蔵
            豊竹睦太夫
            吉田玉助、吉田一輔
  (休  憩)
人形浄瑠璃文楽『関取千両幟』
 猪名川内より相撲場の段
  太夫  おとわ=豊竹睦太夫、猪名川=豊竹靖太夫、
      鉄ヶ嶽・外=竹本碩太夫
  三味線 鶴澤藤蔵、鶴澤清志郎(胡弓も)
  人形  猪名川=吉田玉助、おとわ=吉田一輔、
      鉄ヶ嶽=吉田玉佳    外

前半は、司会の葛西聖司氏の解説、そして出演者たちの
座談で、本日の演目を紹介し、聞きどころ、見どころを
丁寧に紹介・・初心者としてはありがたいが、見慣れて
いる人にはご不満もあったようで・・隣席がやかましい。

気の毒だが、嫌なら、後半の実演までロビーで待てば?
と言いたくなる。会場に入ったからには、静かに聞いて
欲しいものである。

「関取千両幟」は、素浄瑠璃で一度、本公演で二度見て
いる。でも、いつもこの「猪名川内から相撲場」のとこ
ろだけ・・それだけ、名場面なのだろう。

前半の猪名川内は、ふたりの相撲取り、猪名川と鉄ヶ嶽
の会話・・猪名川は主筋の若者のために、200両という
金を工面するか、支払いを待ってもらうかしなくてはな
らない。

その口利きを鉄ヶ嶽に頼みたい・・鉄ヶ嶽の方は、なん
とか猪名川に勝ちたい・・
「魚心あれば、水心」・・迷いながらも八百長相撲の決
心をする猪名川。

このやりとりを秘かに聞いていたのが、猪名川の女房・
おとわ。亭主の髪を梳きながら、その心を慮って、こち
らもなにやら決心を・・

舞台転換の間に、三味線弾きの見せ場、「曲弾き」。

三味線で櫓太鼓の音を再現し、撥を投げたり、三味線を
頭上に持ち上げたり、逆さに立てたりして、曲芸ばりの
弾き方を見せる・・鮮やか。

後半の相撲場は、すでに相撲が終わったところ。どうや
ら、猪名川対鉄ヶ嶽の勝負の最中に、「懸賞金200両!」
の声がかかって、猪名川は正々堂々の相撲に勝ったらし
い・・

懸賞の声を掛けた大坂屋が、駕籠を伴ってやって来る・・
挨拶をする猪名川・・「金主の旦那は駕籠の中だよ」。

猪名川がひと言礼をと、駕籠のたれを上げると、乗って
いたのは女房のおとわ。

おとわは、苦界に身を沈めて、夫の苦悩を救ったのだ。

駕籠の中のおとわと、猪名川との別れ・・この幕切れが
なんとも味わい深かった。

当初、出演を予定されていた呂勢太夫師が、病気療養の
ために休演というのは残念だった。

が、睦太夫師の声には、当初の予定の猪名川より、女性
のおとわの方が合っているように思うし、一番若い太夫
の、碩太夫師の活躍の場が増えたのも結構だったと思う。

いつもはほぼ満席の赤坂文楽だが、今回は空席が目立つ。
・・コロナウィルスで断念した人もおられたのだろう。
一日も早い収束を祈るしかない。
posted by JTm at 11:51| 文楽 | 更新情報をチェックする

2020年02月14日

2020.2.13 人形浄瑠璃二月文楽公演@国立小劇場(その2)

月曜日に続いての文楽公演・・二部・三部を続けて見る。

2020.2.13 人形浄瑠璃二月文楽公演 第二部

演目
「新版歌祭文」
 野崎村の段   
   中  太夫=豊竹睦太夫、三味線=野澤勝平
   前  太夫=竹本織太夫、三味線=鶴澤清治
   切  太夫=豊竹咲太夫、三味線=鶴澤燕三
                ツレ=鶴澤燕二郎
 人形役割
  おみつ=吉田蓑二郎、久作=桐竹勘壽、久松=吉田玉助、
  お染=吉田清五郎、母お勝=桐竹紋臣、船頭=吉田玉誉 外
  (休  憩)
竹本津駒太夫改め六代目竹本錣太夫 襲名披露口上」豊竹呂太夫
竹本津駒太夫改め六代目竹本錣太夫襲名披露狂言
「傾城反魂香」
 土佐将監閑居の段
   口  太夫=豊竹希太夫、三味線=竹澤團吾
   奥  太夫=竹本津駒太夫改め六代目竹本錣太夫
      三味線=竹澤宗助、ツレ=鶴澤寛太郎
 人形役割
  浮世又平=桐竹勘十郎、おとく=豊松清十郎、
  土佐将監=吉田玉也、奥方=吉田文昇、修理之介=吉田玉勢 外
 囃子 望月太明藏社中

「新版歌祭文」。かなり上演回数の多い演目で、この
ブログにもすでに何度か書いている。

久松を巡る、幼馴染の田舎娘・おみつと、奉公先のお
嬢様・お染の恋のさやあて。

美しく派手なお染と、地味でごく家庭的なおみつ・・
若い久松の前では、おみつに勝ち目は・・ないよなぁ。

結局、恋する相手の幸せを祈って、おみつは身をひき、
尼になる。お染と久松は、身分の差を越えて結ばれる
暗示で物語は終わるのだが・・

他人の犠牲の上に立つ幸せ・・と考えると、決して盤
石ではないような気がしてならない・・。

最後、三味線が二丁になって、いわゆる「野崎の送り」
を迫力一杯に演奏・・歌舞伎だと、おみつがお染と久
松を見送る場面なのだが・・文楽ではそうはならない
のね・・これ、何度見ても「え?」ってなっちゃう。

・・・ちょっと物足りないかなぁ。

「傾城反魂香」。新錣太夫の襲名披露ということで、
大阪と同じように、呂太夫師による口上がつく。
・・内容は、大阪の時と同じでした。・・おいど、ね・・

大阪公演は見事に“落ちて”しまったので、今回は心し
て見る。

吃音というハンディを負った又平が、絵の師匠に土佐
の苗字を授けてもらおうと懇願する。しかし、師の将
監は、画業による手柄がないからと、これを認めない。

師が土佐の名を弟子に許すのは、決して温情や同情で
は出来ない事なのだ。

その厳しさはわかるけれど、又平のハンディをことさ
らあげつらうような言い方をするのは、なんだか聞い
ていて苦しくなる。

もっとも、プログラムの解説によれば、近松の手にな
る原作では、もっとひどいセリフがあるそうなので・・
まぁ、しょうがないか・・と思うことにしよう。

新・錣太夫師は、呂太夫師の口上のお話そのままの、
生真面目で手堅い語り。又平の吃音が治るという結末
は、確かに少々ご都合主義的だが、めでたい席には、
ふさわしいと言えるだろう。


2020.2.13 人形浄瑠璃二月文楽公演 第三部

演目
「傾城恋飛脚」
 新口村の段
   口  太夫=豊竹亘太夫、三味線=鶴澤友之助
   奥  太夫=豊竹呂太夫、三味線=鶴澤清介
 人形役割
  忠兵衛=吉田玉佳、梅川=吉田勘彌、孫右衛門=吉田玉也、
  八右衛門=吉田玉峻、忠三女房=吉田蓑一郎  外
  (休  憩)
「鳴響安宅新関」
 勧進帳の段
   太夫 弁慶=豊竹藤太夫、富樫=竹本織太夫、義経=豊竹芳穂太夫、
      伊勢・片岡=竹本南都太夫、駿河・常陸坊=竹本文字栄太夫、
      番卒=豊竹亘太夫、竹本碩太夫
   三味線 鶴澤藤蔵、鶴澤清志郎、鶴澤清𠀋、鶴澤清公、
       野澤錦吾、鶴澤清允、鶴澤清方
 人形役割
  弁慶=吉田玉男、富樫=吉田玉志、義経=吉田文昇  外
 囃子 望月太明藏社中

「傾城恋飛脚」。こちらも何度目かの遭遇・・もっと
も、近松原作の「冥途の飛脚」と、その改作であるこ
の作と、かなりごっちゃになっているのだが。

預かった金に手を付けてしまい、死を覚悟の逃避行を
続ける梅川と忠兵衛は、死ぬ前にひと目、忠兵衛の父
の顔を見たいと、故郷の新口村にやって来る。

お互いに思い合いながらも、様々な義理に縛られて、
直接には顔を合わせられない父と子・・目隠しをして
父に抱き着く忠兵衛の目隠しを、梅川がそっとほどく。

これは、詞章にはない重要な動きなのだそうだ。
人の情けが、義理やしがらみを乗り越える・・見る人
の情に訴える、優れた演出であろう。

「鳴響安宅新関」。これも2014年に一度、遭遇してい
る。その時は気づかなかったようだが、弁慶の人形を
主遣いばかりでなく、左遣いも足遣いも、黒衣を着ず、
出遣いで演じていることに、今回は気づいた。

プログラムの解説には、後半の海辺になって変わると
あったが、今回は、最初から三人とも出遣いだった。

これ、見ていて面白かった。三人の連携した動きが、
よく見えるのだ。・・もっとも、全部の人形をこの形
で遣ったら、却って混乱するかも?だけど。

もともと能の「安宅」をもとに書かれただけあって、
富樫と弁慶のやり取りは、息詰まるような迫力・・し
かし、文楽ならでは・・と思うのは、後半の、七丁の
三味線による合奏である。

帰宅して夕刊を見たら、ちょうどこの公演の劇評が出
ていた。それによると、明治時代の改作により、「語
り物から音楽に軸足を移した」のだそうだ。
(朝日新聞2/13夕刊、内山美樹子氏)

頭の中で、ずーっと三味線が鳴り響いている・・そう
か、演題の「鳴響」は、これのことなんだ・・。
posted by JTm at 14:26| 文楽 | 更新情報をチェックする

2020年02月11日

2020.2.10 人形浄瑠璃2月文楽公演@国立小劇場

2020.2.10 人形浄瑠璃2月文楽公演 第一部

演目
「菅原伝授手習鑑」
  吉田社頭車曳の段
   太夫 松王丸=豊竹芳穂太夫、梅王丸=豊竹靖太夫、
      桜丸=豊竹咲寿太夫、杉王丸=竹本碩太夫、
      時平=竹本津國太夫
   三味線 鶴澤清友
  (休  憩)
  佐太村茶筅酒の段
   太夫=竹本三輪太夫、三味線=竹澤團七
  同  喧嘩の段
   太夫=竹本小住太夫、三味線=鶴澤清馗
  同  訴訟の段
   太夫=豊竹靖太夫、三味線=野澤錦糸
  同  桜丸切腹の段
   太夫=竹本千歳太夫、三味線=豊澤富助
 人形役割(注記以外は格段共通)
   梅王丸=吉田文司、松王丸=吉田玉輝、杉王丸=吉田玉翔、
   桜丸(車曳)=吉田蓑紫郎、同(佐太村)=吉田蓑助、
   左大臣時平=吉田勘市、白太夫=吉田和生、
   八重=桐竹勘十郎、千代=豊松清十郎、春=吉田一輔  外
 囃子=望月太明藏社中

延享3(1745)年初演。初代竹田出雲等の合作により書かれた
この作品は、当時、大坂で三つ子が生まれたというニュース
を取り入れているのだそうだ。

自然妊娠で三つ子が生まれる確率は、6400分の1なのだとか。
数字を見ただけでも珍しいことはわかるし、ましてや、医学
の発達していなかった時代、その三つ子が揃って元気に育つ
確率は、もっとずっと低かったことだろう。

珍しくめでたい三つ子とあって、その親は禁裏から扶持をい
ただき、三人の子は御所に召し抱えられる・・と、三つ子の
親・白太夫は語る(佐太村茶筅酒の段)。

しかし、この物語の発端では、三つ子たちの運命は大きく隔
たっている。

梅王丸の仕えた菅丞相は政敵の左大臣・時平の讒言によって
失脚、桜丸が仕える斎世(ときよ)親王は、菅丞相の娘と駆
け落ち・・つまり、このふたりは職を失っている。

ひとり松王丸だけは、左大臣・時平に仕えていたため、権力
側となって、他のふたりとは対立しているわけだ。

この、三人の現在の状況を、見事に紹介するのが車曳の段で、
多数の太夫が、ひとりひと役を語る形式が、上手く活かされ
ており、初心者にも大変分かりやすい。

そして、太夫の席がひとつ、当初は空席になっていて、あと
から松王丸役の太夫が、陰から声を発しつつ座につくという
演出も、非常に効果的で面白いと思った。

後半の佐太村は、斎世親王と菅丞相の娘・刈屋姫の仲を取り
持って、丞相失脚の一因を作ってしまった桜丸の後悔、各々
の主人に忠義を尽くす梅王丸と松王丸の対立、そして、三人
の子を案じる、父親・白太夫の苦悩を描く。

今回は、その場面を四分割して4人の太夫に割り振ったが、
初演の時は、ひとりの太夫が通して語ったのだそうだ・・そ
の上演時間、約2時間・・・うーん、ちょっと見てみたい。

人形の方も、若手とベテランを上手く配して、見ごたえがあ
る。そして、佐太村の桜丸を蓑助師・・ほとんど動きのない
表現の難しい役は、やはり、この人以外には考えられない。

二部、三部は、今週後半に観劇予定。
posted by JTm at 10:36| 文楽 | 更新情報をチェックする