2018年02月18日

2018.2.16 国立能楽堂定例公演

2018.2.16 国立能楽堂定例公演 《月間特集・近代絵画と能》

演目
狂言「痩松(やせまつ)」(和泉流)
  シテ(山賊)=三宅右近、アド(女)=三宅近成  後見
  (休   憩)
能「熊野(ゆや)-花之留」(金剛流)
  シテ(熊野)=金剛永謹、ツレ(朝顔)=金剛龍謹、
  ワキ(平宗盛)=殿田謙吉、ワキツレ(従者)=則久英志
  囃子方 笛=杉 市和、小鼓=幸 正昭、大鼓=亀井広忠
  後見=宇髙通成、廣田幸稔、豊嶋幸洋
  地謡=田村 修、坂本立津朗、工藤 寛、宇髙竜成、
     元吉正巳、松野恭憲、山田伊純、宇髙徳成

「痩松」。山賊の符丁で、良い獲物があったことを“肥松”、
逆にダメな時を“痩松”と言う・・というのが題名の由来。

プログラムには特に記載もなかったが、見ているうちに、
既視感に襲われる・・・大蔵流でも同じような曲があった
ぞ、と。・・「金藤左衛門(きんとうざえもん)」がそれ。

女を長刀で脅して、持ち物を奪った山賊が、獲物を物色し
て喜んでいると、戻って来た女に、長刀を奪われて、奪っ
た物ばかりか、自分の刀や着物まで奪われてしまう・・と
いう逆転劇。

狂言の女を、甘く見てはいけません。

「熊野」。平宗盛の愛妾・熊野御前は、母の病気が重いと
知って、故郷の遠江に帰国を願うが、宗盛はこれを許さず、
清水寺に花見に誘う。

満開の花の美しさにも、熊野の心は晴れない。
やがて、宗盛の命により、熊野は舞を舞うが、そこににわ
かの村雨・・・

花散らしの雨に、熊野は舞を止め(これが小書・花之留)、
歌を一首・・「いかにせん都の花も惜しけれど馴れし東の
花や散るらん」

つまり、都の花の散るのを見るにつけ、懐かしい故郷の東
国の花(つまり母のこと)が、散ってしまうことを思う・・
というような意味だろう。

母を思う熊野の心に感じた宗盛は、熊野に帰郷を許す・・
そして、熊野は、また心変わりされては大変と、その場か
ら旅立っていくのだ。

前後のシテの変わりがなく、物語としてはすっきりと分か
りやすい構造。ただ、ほとんど動きがなく、謡と文語のセ
リフでお話が進んで行くので、ついて行くのはなかなか・・・

熊野と宗盛が清水に向かう場面は、熊野の乗る牛車を作り
物で表すのだが、正直に言うと、これがいつ登場していつ
引っ込んだのか・・・まったく記憶にない。(出てるな、
とは一瞬思った)。

この場面こそが、「特集・近代絵画と能」に合致する場面
だというのに。絵画は、下村観山作「熊野御前花見」(明
治27年、東京芸大美術館蔵)である。

我ながらナサケナイ。

ただ、最後、宗盛の気が変わっては大変とばかり、旅支度
もない花見先から、そのまま遠江へ旅立って行くというの
は、ちょっと愉快だと思った。

権力者の気まぐれを、熊野は誰よりもよく知っていたに違
いない。
posted by JTm at 09:40| | 更新情報をチェックする

2018年01月14日

2018.1.13 国立能楽堂普及公演

2018.1.13 国立能楽堂普及公演

演目
解説・能楽あんない
  「能・狂言の妖怪たち-人間との共存を廻って」
    三浦裕子(武蔵野大学・日本文学)
狂言「伯母ヶ酒(おばがさけ)」
    シテ(甥)=善竹富太郎、
    アド(伯母)=善竹十郎   後見=善竹大二郎
  (休   憩)
能「土蜘蛛(つちぐも)」
    シテ(前・僧、後・土蜘蛛の精)=廣田幸稔、
    ツレ(頼光)=種田道一、ツレ(胡蝶)=宇高徳成、
    トモ(従者)=山田伊純、
    ワキ(独武者)=福王和幸、
    ワキツレ(従者)=村瀬 提、矢野昌平、
    アイ(独武者の家人)=善竹大二郎
    囃子方 笛=槻宅 聡、小鼓=坂田正博、
        大鼓=亀井 実、太鼓=加藤洋輝
    後見=豊嶋幸洋、豊嶋晃嗣、工藤 寛
    地謡=熊谷伸一、坂本立津朗、田村 修、金剛龍謹、
       元吉正巳、宇高通成、遠藤勝實、宇高竜成

冒頭の解説で、妖怪という言葉は明治以降に使われ
るようになったこと、古代~中世においては、時の
為政者に従わず隠れ住む者たちを、異界のものとみ
なすこと・・などが語られた。

そう言えば、大江山の酒呑童子を、宇宙人とした、
SFを大昔に読んだ気がする。

「伯母ヶ酒」。酒造りを商売にする伯母は、ことの
ほかケチで、身内の甥にも、味見すらさせてくれな
い・・・呑みたくてたまらない甥は、一計を案じ、
鬼に化けて伯母を脅し、まんまと入り込むが・・・

最初に、「近所に鬼が出たから気をつけて」などと、
ニセ情報を伝え、鬼の面もあらかじめ用意しておく
周到さなのに、呑んでしまえば・・大失敗。

ホント、酔っ払いはしょうがない。

出演者ふたり、そして後見座の大二郎さん・・親子
三人共演なんだけど、息子さんふたりとお父上の、
体格の差がとても大きく・・いかなる遺伝のなせる
技か?

「土蜘蛛」。昨年11月に、黒川能でも見た。
黒川能のそれと、ストーリーはほぼ同じだが、断然、
派手である。

蜘蛛の精が投げる糸の量が、もう半端じゃない。

舞台上も、出演者の方々も、真っ白になるくらい・・
果ては、客席にまで流れている。
(今回の席は中正面だったので、わたしのところまでは来
なかったが、次回、見る機会があれば、ぜひとも正面席前
方に座りたいものだ。)

ただ、冒頭の解説を聞いたせいか、このスペクタク
ルを、なんとなく素直には楽しめない。

自分に従わず、隠れて住んでいる者たちを、為政者
は許さないのだ。力づくで排除しようとする。

人間の歴史は、戦争の歴史。

この曲の物語は、ある意味、それを肯定しているよ
うだ・・・だから、単純には喜べないのだ。

面白いことは面白かったけれど、色々と考えさせら
れたのもまた事実である。
posted by JTm at 10:01| | 更新情報をチェックする

2017年12月01日

2017.11.30 国立能楽堂企画公演

2017.11.30 国立能楽堂企画公演 働くあなたに贈る

働いてないけどね。

演目
狂言「薩摩守(さつまのかみ)」(大蔵流)
   シテ(出家)=大藏基誠、
   アド(茶屋)=大藏彌右衛門、
   アド(船頭)=大藏彌太郎
実演解説・装束付け  山科彌右衛門
  (休   憩)
能「紅葉狩(もみじがり)-鬼揃-」(観世流)
   前シテ(女)・後シテ(鬼)=観世芳伸、
   ツレ(侍女・鬼)=清水義也、角幸二郎、
      武田宗典、坂口貴信、木月宣行、
   ワキ(平維茂)=則久英志、ワキツレ(従者)=大日方寛、
   ワキツレ(勢子)=野口琢弘、御厨誠吾、
   アイ(供女)=大藏教義、アイ(武内の神)=大藏吉次郎
   囃子方 笛=竹市 学、小鼓=清水皓祐、
       大鼓=飯嶋六之佐、太鼓=大川典良
   後見=上田公威、松木千俊、野村昌司
   地謡=坂井音晴、藤波重彦、坂井音雅、浅見重好、
      武田友志、山科彌右衛門、藤波重孝、大松洋一

狂言「薩摩守」。初見である。
昔、キセル乗車のことを薩摩守と言われ、何のこっちゃ?
と思ったのを思い出す。つまり、平忠度(ただのり)が、
薩摩守であったことから、ただ乗りに掛けたシャレなの
だが・・・まさか、狂言にあるなんて・・・

どんなに古いシャレなんだ!

貧乏旅の出家が、同情した茶屋の主人から、渡し船の船
賃代わりになるシャレを教わる・・が。

狂言では、結末は目に見えている・・結局、忘れちゃう
のね。でも、向こう岸に渡るまではなんとか誤魔化した
ので、着いてしまえばそれまで。

損をしたのは船頭ばかり。

幕間?に、装束を付ける実演。着付けが三人がかり・・
後の演目には、この装束の女性が6人も出るのだ。
楽屋には、人があふれているのだろうなぁ。

能「紅葉狩」。確か、高校の古文の教科書に出ていたよ
うに思うのだが、もちろん、内容までは覚えてない。

戸隠の山中で、美女たちの紅葉狩の酒宴に出くわした平
維茂(これもち)が、勧められるままに酒を呑み、女た
ちの舞を見る・・・しかし、実はこの美女たちの正体は
鬼。

武内の神(武内宿禰)の夢のお告げでそれを知った維茂
は、授かった劔をふるっての鬼退治・・・

小書「鬼揃」は、普段はひとりだけの鬼女を、全部で6
人出すという特殊演出。前半の女たちの舞は華やかに、
後半の大立ち回りも、迫力満点!となる。

「同じ値段なら、お得感満載だねぇ」・・帰りがけにそ
んな会話が聞こえてきたが、うん、同感である。
posted by JTm at 13:58| | 更新情報をチェックする