2019年04月28日

2019.4.27 国立能楽堂企画公演

2019.4.27 国立能楽堂企画公演 -特集・対決-

演目
狂言「惣八(そうはち)」(大蔵流)
  シテ(惣八)=善竹十郎、
  シテ(出家)=山本東次郎、アド(有徳人)=山本則俊
  (休  憩)
能「正尊(しょうぞん)」
  シテ(土佐坊正尊)=宝生和英(シテ方宝生流)、
  ツレ(武蔵坊弁慶)=金剛龍謹(シテ方金剛流)、
  ツレ(源義経)=観世淳夫(シテ方観世流)、
  ツレ(姉和光景)=佐野 登(シテ方宝生流)、
  子方(静御前)=廣田明幸、
  立衆(正尊の郎党)=野月 聡、辰巳大二郎、川瀬隆士、
  立衆(義経の郎党)=豊嶋晃嗣、宇高竜成、宇高徳成、
  アイ(侍女)=山本泰太郎、
  囃子方 笛=杉信太朗、小鼓=森澤勇司、
      大鼓=柿原弘和、太鼓=金春國直
  後見=金剛永謹、東川光夫、水上 優、清水寛二、
  地謡=田崎 甫、大友 順、金森隆晋、武田孝史、
     當山淳司、辰巳満次郎、内藤飛能、小倉伸二郎

“平成最後の”能楽堂企画公演は、異なる家や流派の
競演で、狂言と能。テーマの「対決」は、もちろん、
一義的には曲の内容によるのだろうけれど、この配
役を見ると、「家」「流派」の対決という意味も?

「惣八」。ある有徳人が、出家と料理人を募集・・
そこに応募してきたふたり、実は元・出家の料理人
と、元・料理人の出家。しかも、ふたりとも新米で・・

魚の名も知らぬ料理人と、お経の四角い字が読めな
い出家・・これは役に立ちませぬ。
で、ふたりは一計を案じ・・・?

ふたりが仕事を交換することで、なんだ解決じゃな
い!と、安心するのは現代的感覚。

出家が衣(ころも)姿でナマグサ物を扱い、料理人
がさっきまで魚をいじった手で尊い経巻を持つ・・
なんてことは、信心深い中世の人には許せないこと。

最初から、得意な技で雇われていれば、なんの問題
もなかったのだろうに・・と、思うのだけれど。

普通は、出家と惣八のどちらかをシテ、もう一方を
アドとするようだが、今回は、同じ大蔵流の中では
あるが、善竹家と山本家、両シテの“対決”で。

「正尊」。兄頼朝と不和になった義経に、頼朝から
の刺客として土佐坊正尊が差し向けられる。

前半は、主人を守ろうとする武蔵坊弁慶と正尊との
対決、後半は、義経の居る堀川の館を正尊の一党が
襲い、チャンチャンバラバラの激戦に。

昨年6月に、京都の薪能で見て、面白かった印象が
あり、再度見たいと思った次第。

今回も、前半の起請文をめぐる静かな対決と、後半
の派手な立ち回り、どちらも息詰まる熱戦。

演出は宝生流のものだそうで、正尊は自ら起請文を
読み上げる。そしてシテ方三流の異流共演・競演で。

なんか、国立ならではのプログラムではないか?
posted by JTm at 09:43| | 更新情報をチェックする

2019年04月21日

2019.4.20 東次郎家伝十二番@横浜能楽堂

2019.4.20 東次郎家伝十二番 第一回

今年度、月一回のペースで、山本東次郎師の会が行わ
れると聞き、何をさておいてもと、半年ずつ×2の年
間チケットを確保・・・そして、初回。

演目
「翁(おきな)」(金春流)
    翁=山井綱雄、三番三=山本東次郎、
    千歳=山本凛太郎
    囃子方 笛=竹市 学、大鼓=安福光雄、
        小鼓 頭取=鵜澤洋太郎、
           脇鼓=古賀裕己、吉阪一郎、
        太鼓=桜井 均、
    後見=櫻間金記、横山紳一
    地謡=中村昌弘、辻井八郎、井上貴覚、本田光洋、
       本田芳樹、吉場廣明、後藤和也、山中一馬
 「三社風流( さんじゃふりゅう)」(大蔵流)
    天照大神=山本則俊、
    春日明神=山本泰太郎、八幡大菩薩=山本則孝
    狂言後見=山本則秀、若松 隆、
    風流地謡=山本則重、加藤 元、山本修三郎、寺本雅一、
         小川一幸、水木武郎、伊藤 敦、伊藤 哲、
         大河原敬、渡邊直人

告知のチラシなどには、「翁」と「三社風流」が並んで
書かれていたので、てっきり翁の他に狂言が一曲演じら
れるのだ・・と、(恥ずかしながら)思い込んでいた。

この「三社風流」というのが、実は、「翁」で狂言方が
舞う「三番三」の後半を、異なった演出で演じるものと
知ったのは、会場に入って配られたプログラムを見てか
らのこと・・・早めに入ってヨカッタ。

「能にして能にあらず」と言われる「翁」は、かつては
天下泰平を祈願して年頭に演じられたそうだが、現在で
は、大きな会の冒頭に演じられることが多いようだ。

いずれにせよ、天下泰平、五穀豊穣を祈る祝祭の曲だ。

開演時間が近づくと、橋掛の揚幕の中で、切火を切る音。
期待がどんどんと高まる中で、面箱を捧げ持つ千歳が登
場し、続いてまだ直面の“翁”が・・さらに、三番三、囃
子方、地謡方、後見と続く。皆さん烏帽子に直垂、長袴。

そして、今回はこのあとに、さらに、狂言後見と風流の
地謡方が続き、橋掛までずらーっと人が並んだ。

場内の緊張が、一気に高まり、ピーン!と張り詰めた雰
囲気・・もう、肌がピリピリするくらい。

その中で、千歳の若々しい舞、そしてその舞の間に白色
尉の面をつけた翁の、荘重な舞が続く。

正直言って、謡の詞はほとんど聞き取れなくて意味も分
からない。・・国立能楽堂と違って字幕も無いし。

しかしそれでも、緊張感、高揚感は、はっきりと感じ取
れるし、それがまたたまらなく心地よい。

陶酔に浸るうちに、翁は退場し、代って裂帛の掛声とと
もに三番三の舞が始まる・・まずは、「揉の段」と呼ば
れる躍動的な舞・・これも、天下泰平を寿ぐ舞だそうだ。

そして後半、千歳と三番三のユーモラスなやり取りの後、
三番三は今度は黒色尉の面をつけ、手に鈴を持って「鈴
の段」を舞うのだが、今回はここからが「三社風流」と
なる。

風流とは、「翁」に付随して上演される芸能とのことで、
いくつか種類があるようだが、今ではほとんど演じられ
ることはないらしい。

中でこの「三社風流」は、翁後半の「三番三」に付随す
るもので、17世紀の記録本から、1988年に東次郎師が
復曲、上演した。

後半の舞にかかる前に、三番三は黒色尉の面だけでなく、
鎧(具足)を身に着ける。この具足を着けるということ
には、天下泰平を妨げる悪魔を降伏する意味があるそう
で、それを知った三社の神が、自分たちも力を合わせよ
うと、ご来臨になるのである。

つまり、三社の神々は、三番三の応援団である。

鈴の段は、右手に持った鈴を軽快に鳴らしながら、早い
テンポで足拍子を踏む・・これを、具足を着けて舞う・・・

御年81歳(来月には82歳!)の東次郎師の身体能力の
高さは驚くばかりです。

いやー、実に面白く感動的な公演だった・・来月以降
も大いに楽しみです。


そして、翌日の今日、これを書きながら思った。

東次郎師が、「三社風流」を復曲した1988年は、昭
和63年。実質的に昭和の最後の年である。
(もちろん、上演時にはそんなことはわかっていなかったはずだが)

そして今、その次の時代・平成が、まさに終わろうと
しているわけで、今、この時に「三社風流」を演じた
いと思われた意図のひとつは、ここにあったのではな
いだろうか。

平成の最後に、この曲を見られたことは、大変幸運だっ
た。目前に迫った「令和」の時代も、どうか、天下泰
平であって欲しいものである。
posted by JTm at 15:06| | 更新情報をチェックする

2019年04月04日

2019.4.3 国立能楽堂定例公演

2019.4.3 国立能楽堂定例公演

演目
狂言「仏師」(大蔵流)
   シテ(すっぱ)=山本則重、
   アド(田舎者)=山本則俊、 後見有
  (休   憩)
能「一角仙人」(観世流)
   シテ(一角仙人)=観世芳伸、
   ツレ(施陀夫人)=上田公威、
   子方(龍神)=谷本悠太朗、谷本康介、
   ワキ(官人)=大日方寛、
   ワキツレ(輿舁)=野口能弘、野口琢弘、
   アイ(仙人)=山本則孝
   囃子方 笛=森田保美、小鼓=幸 正昭、
       大鼓=安福光雄、太鼓=上田慎也
   後見=山階彌左衛門、坂口貴信、谷本健吾
   地謡=武田宗典、藤波重孝、坂井音晴、松本千俊、
      木月宣行、浅見重好、角幸二郎、藤波重彦

「仏師」。地元に持仏堂を建立した田舎者が、仏像を買いに
都の街へ・・と、すっぱ(詐欺師)に目をつけられて・・?

田舎者(でんじゃもの、と読む)が、すっぱに騙されるとい
うのは、狂言にはよくある話。でも、このすっぱ、中にはご
く間抜けなのも。

この話のすっぱは、仏像を彫ることが出来ずに、自らが仏像
に化ける・・こんなのすぐバレるでしょ。無理、無理。

「一角仙人」。龍神とのいざこざから、一角仙人は龍神たち
を岩屋に封じ込める。そのため雨が降らなくなって困った皇
帝は、絶世の美女を遣わして、仙人を籠絡・・・

このあらすじで分かるように、これ、歌舞伎十八番「鳴神」
の元になった作品です。

驚いたのは、物語の舞台が天竺、つまりインドってこと。
プログラムの解説によれば、インドの説話にルーツがあるの
だそうだ。

歌舞伎の「鳴神」では、上人と雲絶間姫の色事が、かなり直
截に描かれるけれど、能の仙人は美女と酒を酌み交わし、共
に舞って酔いつぶれてしまう・・美女はあっさり退場。

それでも、通力は失われて、龍神は岩屋を破って飛び出し、
仙人と対決・・通力を失った仙人は敗れる。

ふたりの龍神役は、今年12歳と9歳のご兄弟。勇ましい立ち
回りでした。
posted by JTm at 09:31| | 更新情報をチェックする