2018年10月14日

2018.10.13 国立能楽堂普及公演

2018.10.13 国立能楽堂普及公演

演目
解説・能楽あんない
  「琵琶のロマン-楽器と秘曲を巡って-」
    三浦裕子(武蔵野大学・日本文学)
狂言「木六駄」(和泉流)
    シテ(太郎冠者)=三宅右近、アド(主)=三宅右矩、
    小アド(茶屋)=野村万作、(伯父)=髙澤祐介
  (休   憩)
能「絃上(けんじょう)」(金剛流)
    シテ(前・老人、後・村上天皇)=豊嶋三千春、
    ツレ(藤原師長)=金剛龍謹、(姥)=豊嶋晃嗣、
      (龍神)=豊嶋幸洋、
    ワキ(師長の従者)=福王知登、
    ワキツレ(師長の従者)=喜多雅人、中村宜成、
    アイ(龍王の眷属)=三宅近成
    囃子方 笛=一噌幸弘、小鼓=幸 正昭、
        大鼓=河村 大、太鼓=前川光長
    後見=松野恭憲、廣田幸稔
    地謡=遠藤勝實、坂本立津朗、本吉正巳、宇高竜成、
       田中敏文、宇高通成、見越文夫、宇高徳成

三浦先生の解説は、いつもとても分かりやすいのだが、
あいにくの寝不足で、途中から意識を失った。

事前に配付されたレジュメによれば、いにしえ、琵琶
の名器に、「青山」「絃上」「獅子丸」があり、その
うちの、獅子丸は龍神に献上され、絃上は村上天皇が
所有していた。

能「絃上」には、村上天皇が登場するものの、琵琶は、
龍神が持って出る獅子丸が出るのみ・・なのになぜ、
題名が「絃上」なのか?・・の解明をした・・らしい。

狂言「木六駄」。大雪の中、12頭の牛をひとりで追っ
て、峠越えをする太郎冠者。途中の茶屋で温まろうと
思うが、あいにくと酒がなく・・・。

お遣いものの酒に手をつけてしまうのは、狂言の常道。
それにしても、六駄の薪を、一駄は茶屋に進呈し、残
りの五駄は、「春の小遣いにするから売っておいてく
れ」とは!・・・もう立派な横領罪。

前かたからの眠気を引きずって、見せ場の“鶉舞”を見
損ねたのは残念至極。

休憩でなんとか蘇生して、後半は眠気もなく。

能「絃上」。琵琶の名手・藤原師長(もろなが)は、
さらにその奥義を極めるために、唐へ渡ろうとしてい
るが、出発前に須磨の浦に立ち寄る。

そこで、とある老夫婦に一夜の宿を借り、求められる
ままに琵琶を弾く。

よく分からないのだが、琵琶の音色は、雨や水に結び
付くものなのだろうか?

名手・師長が琵琶を弾くと、月が出ていたはずの須磨
の浦に、雨が降り始める。と、主人夫婦が突然に、板
屋根に苫(スゲやチガヤで編んだゴザのようなもの)
を掛ける。

なぜ?と尋ねる師長の従者に、「板に当たる雨音は、
琵琶の音調と合わないから、苫を掛けて琵琶と同じ音
調にしたのです」と。

コイツ、ただものではない・・・

実は、老人は村上天皇(この方も琵琶の名手だったら
しい)の霊で、師長に、わざわざ唐になんか行くこと
はないと伝えに来たという。

後半、天皇は、龍神を呼び出して、かつて贈った獅子
丸という琵琶を返してもらい、これを改めて師長に与
える。

龍神を呼び出すところからの“早笛”、名器・獅子丸の
音色に乗って天皇の舞う“早舞”と、スピードと緊張感
に満ちた囃子が素晴らしい。

なんだか、もう、陶然とした気分のうちに終演となる。
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2018年06月04日

2018.6.2 京都薪能@平安神宮

茂山狂言会のファンクラブのイベントで、京都の年中
行事、平安神宮の薪能を見に行ってきた。今年のテー
マは、「源義経」。

2018.6.2 第69回 京都薪能(第二日)

演目
《ナビ狂言》    茂山千五郎、山下守之
能「鞍馬天狗-白頭」(観世流)
    前シテ(山伏)=河村和重、後シテ(大天狗)=河村晴久、
    子方(牛若丸)=大江信之助、 
    ワキ(東谷の僧)=有松遼一、ワキツレ(従僧)=岡 充、
    子方(花見の稚児)=橋本和樹、林、小梅、吉浪咲紀、
            梅田祥隆、林 彩子、吉浪絢音、大江雪乃、
            吉田学史、深野百花、河村梓姫、梅田晃煕、
            味方 遥、味方 慧、吉浪和紗、吉田和史
    アイ(西谷の能力)=茂山忠三郎、
    アイ(木の葉天狗)=網谷正美、松本 薫、山口耕道、
            増田浩紀、井口竜也
    囃子方 笛=森田保美、小鼓=林 大和、
        大鼓=渡部 諭、太鼓=井上敬介
    後見=河村博重、河村晴道、
    地謡=杉浦豊彦、塚本和雄、古橋正邦、吉浪壽晃、
       分林道治、大江泰正
《火入式》     杉 市和、茂山あきら、橋本雅夫
《挨 拶》     井上裕久(京都能楽会理事長)
《ナビ狂言》    茂山千三郎、鈴木 実
能「祇王(ぎおう)」(金剛流)
    シテ(仏御前)=金剛永謹、ツレ(祇王)=金剛龍謹、
    ワキ(瀬尾太郎)=村山 弘
    囃子方 笛=杉 市和、小鼓=曽和鼓堂、大鼓=河村 大
    後見=廣田泰三、廣田幸稔、重本昌也
    地謡=松野恭憲、種田道一、豊嶋晃嗣、宇高徳成、
       和田次夫、漆垣謙次
《ナビ狂言》    茂山逸平、島田洋海
能「正尊(しょうぞん)-起請文 翔入」(観世流) 
    シテ(土佐坊正尊)=浦田保浩、
    子方(静御前)=深野和奏、
    ツレ(源義経)=浅井通昭、(江田源三)=松野浩行、
      (熊井太郎)=吉田篤史、(姉和光景)=浦田保親、
      (正尊の郎党)=宮本茂樹、浦田親義、河村和晃、
              松井美樹、大江広祐、河村浩太郎
    ワキ(武蔵坊弁慶)=原  大
    アイ(召使の女)=丸石やすし
    囃子方 笛=左鴻泰弘、小鼓=竹村英敏、
        大鼓=石井保彦、太鼓=前田 雪
    後見=深野新次郎、深野貴彦
    地謡=大江又三郎、浦部好弘、青木道喜、 
       片山伸吾、味方 團、田茂井廣道

薪能の開演前に、平安神宮に隣接するロームシアター
で、「能の世界におこしやす」という事前レクチュア
があった。簡単な解説と、謡・型・囃子の入門体験、
狂言方の“笑い”体験。
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最後に、舞拍子「嵐山」を実演していただき、全部で
約50分・・外に出たら、まだ3時だというのに、会場
入口にはすでに人の列・・いくら自由席とは言え、開
場は5時ですよ! しも、炎天下、日陰もないところ
に・・・熱心だなぁ。

団体入場のわたしたちは、一旦、解散して、5時に再
集合。団体席を確保してくださるそうで、並ばなくて
済んで大助かり。

入場開始から1時間、6時に開演。この時点ではまだ
お日さまカンカン照りで、西日が暑い。顔の半分だけ
日焼けしそうになりながら見る。
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能三曲の合間に、《ナビ狂言》として、狂言師さんた
ちが次の演目の解説をしてくれる・・これ、分かりや
すくて面白く、良い企画。

「鞍馬天狗」。平家が天下を取り、危うく命を失うと
ころだった牛若丸・・つまり、後の義経は、鞍馬山中
に預けられ遮那王と呼ばれている。

花見の季節、招待された東谷の僧や稚児が西谷を訪れ
る。と、そこへ怪しい山伏が・・・これを嫌った僧と
稚児は帰ってしまうが、ひとりだけ、美しい少年が残っ
ている・・・

この少年が牛若丸。その美しさを愛した山伏は、実は
自分は鞍馬の大天狗・・そして、貴方こそ源氏の御曹
司だと告げ、通力で各地の花の名所を見せてくれる。

さらに、大天狗は、平家を滅ぼすために貴方に兵法を
教えようと約す・・・。

牛若丸の鍛錬の様子は、アイの木の葉天狗たちが、ユー
モラスに見せ、大天狗は「平家を滅ぼすその日まで、
わたしは貴方の味方です」と。

花見の稚児が15人も登場したのはビックリ。以前、国
立能楽堂の公演で見たときは7人だったから、倍以上。
いずれも、能楽会会員さんたちのお子さんなのかな?
可愛い行列でした。

ここで、ようやく日没となり、いよいよ薪に火がつけ
られて、会場は幽玄な雰囲気?に・・それは良いが、
急激に温度が下がる・・上着は必携です。
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「祇王」。こちらは平家物語に取材するが、義経とは
直接の関係はない演目。

飛ぶ鳥落とす勢いの清盛に寵愛される白拍子・祇王。
ある日、その清盛のもとをもうひとりの白拍子・仏御
前が訪れる。

清盛は、白拍子は祇王ひとりで十分と、面会を断るが、
同じ白拍子として仏御前に同情した祇王は、その願い
をかなえてやろうと考える。

やがて、ふたり揃って清盛の前へ・・しかし、相舞を
舞ううちに、なんと、清盛は若い仏御前に心を移して
しまう・・・。

祇王の屈辱・・そして仏御前は、祇王への義理と清盛
の命令の間で引き裂かれるような複雑な思い。

このふたりの関係は、一度は平家討伐のために力を合
わせながら、その目的が達成されると対立を深めてし
まう、頼朝・義経兄弟の関係を思わせる。

表面は静かな、でも、その奥にある人々の心理を思う
と、ざわざわと胸の騒ぐ・・・そんな曲だった。

「正尊」。頼朝の命を受けて、義経の命を奪いに来た
僧兵の正尊を、義経主従が撃退する・・いわゆる「堀
川夜討」を題材にしている。

土佐坊正尊の上洛を知り、弁慶が正尊のもとを訪れる。
正尊は「熊野詣の途中」と偽るが、義経主従は信じな
い。正尊は起請文を書いて読み上げ、自分の身の証と
するのだが・・・

その夜、義経が秘かに正尊の宿舎を探らせると、案の
定、戦支度を整えている。

ここから先は、敵味方入り乱れてのチャンチャンバラ
バラ。えー?!と思うような、アクロバティックな立
ち回り。・・いやー、こんな能もあるんですね!と、
大感激。

能三曲の間に、ナビ狂言や“儀式”が入り、休憩時間の
設定がない。「途中で席を立ったり、会場外に出入り
しても構いません」と言われていたけれど、あまりに
面白くて、席を立つことなんて出来ませんでした・・。

後で、茂山家の狂言師さんに聞いた話では、「いつも
よりずっと派手」とのことだったから、初めての人で
も分かりやすく・・という演出だったのだろう。

おかげで、まったく眠くもならず、ぶっ続けで3時間
弱・・堪能しました。

この薪能、京都能楽会の自主事業だそうで、入口での
チケットもぎり、パンフレットやグッズの販売、会場
整理等々、会員のみなさんが自らなさっているそう。
・・・それで、もう、69回!
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来年の70回目も、「見に来たい!」と、本気で思って
しまった。
・・ただ、3時から並ぶのはなぁ・・・ちと勘弁。
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2018年05月13日

2018.5.12 国立能楽堂普及公演

2018.5.12 国立能楽堂普及公演

演目
解説・能楽あんない
  「足摺する俊寛、しない俊寛」
    佐伯真一(青山学院大学文学部教授)
狂言「茶壺」(大蔵流)
    シテ(すっぱ)=茂山宗彦、アド(中国方の者)=茂山 茂、
    アド(目代)=網谷正美、      後見=山下守之
  (休   憩)
能「俊寛」(金剛流)
    シテ(俊寛僧都)=宇高通成、
    ツレ(平判官康頼)=豊嶋晃嗣、(丹波少将成経)=宇高徳成、
    ワキ(赦免使)=福王和幸、アイ(船頭)=茂山千三郎
    囃子方 笛=槻宅 聡、小鼓=後藤嘉津幸、大鼓=大倉正之助
    後見=松野恭憲、豊嶋幸洋
    地謡=遠藤勝實、山田純夫、見越文夫、金剛龍謹、
       元吉正巳、種田道一、工藤 寛、宇高竜成

解説の「足摺する俊寛」は、平家物語の中に、ひと
り島に取り残された俊寛が、「幼き者の乳母や母な
どをしたふように」足摺をするという描写があるこ
とから。

佐伯先生、この俊寛の動作を実演付きで解説。この
時の俊寛は、学識高い僧でも、奢る平氏に一矢を報
いようとした英雄でもなく、ただひとり、孤島に取
り残されて、子どものように心細い弱い人間である
ことを示した。

そして、この意外なくらい透明な俊寛の姿ゆえに、
後世の作者による「それぞれの俊寛」が生まれた
・・・という、ま、そんなお話だったかと。

狂言「茶壺」。京の栂尾の茶を買い付けて、茶壺を
背負った中国方の者、兵庫の小夜野の宿の遊女の誘
いに乗って、したたかに酔い、道端に寝てしまう。

ふっと目が覚めると、外した肩掛けの一方を肩に、
隣で寝ている男がいる。

「俺のだ!」「いや、俺のだ!」と茶壺を奪い合う
ふたり・・・そこへ、目代(代官)が、仲裁に登場、
それぞれの言い分を聞くが・・・?

すっぱが秘かに相手の説明を盗み見て、そっくり真
似をする動きが愉快。こういう、お調子者の役、宗
彦さん、ホントによく似合うんだよな・・・

でも、今回は、目代の方が上手(うわて)だった。
「奪い合う物は中(仲裁人)から取る」と、ちゃっ
かり漁夫の利。

能「俊寛」。歌舞伎や文楽で見た「平家女護島」の
俊寛とは違うんだなー・・というのは、プログラム
の解説を見たので、分かってはいた。

しかし、地味ーな装束の男三人が、ただただ語り合
うだけ・・という前半は、やはりどうしても、ドラ
マチックな盛り上がりとは無縁だ。

そこに赦免使が到着し、一瞬、三人の心が浮き立つ。

しかし、赦免状に書かれた名はふたつだけ・・・
残される俊寛はもちろん、赦されるふたりだって、
決して素直には喜べない。

場の雰囲気は、また、たちまち暗ーくなってしまう。

という訳で、今回も、動きのほとんどない、謡だけ
での物語進行・・・これ、結構、厳しいです。

最後の最後に退場する俊寛は、両手を顔の前に斜め
に構える、泣きのポーズ(シオル、と言う)のまま、
長い橋掛を進んで行く。

ここに至ってようやく、ひとり取り残された俊寛の
孤独さ、寂しさが、胸に迫って感じられたのだが・・
・・・遅いよねぇ。ホント、情けない。
posted by JTm at 08:32| | 更新情報をチェックする