2019年01月20日

2019.1.19 お正月@座・高円寺1

2019.1.19 玉造小劇店配給芝居vol.24 「お正月」

「お正月」 (作・演出=わかぎゑふ)
   出演 桂 憲一、野田晋市、山像かおり、コング桑田、
      美津乃あわ、うえだひろし、茂山宗彦、水町レイコ、
      有馬自由、浅野彰一、是常祐美  外

いつもなら、役名とともに俳優さんの名を書くところ
だが、この芝居に限っては、あまり意味がなさそうな
ので、役名は省略する。

ま、ひとつにはひとり二役がほとんどで長くなりすぎ
るということもあるのだが・・。

ただ、それ以上に、この芝居、主人公は決して人間で
はない・・という気がしたからだ。

主人公は、最初から最後まで舞台となる、ある一軒の
家の座敷であり、明治から平成、100年を超える時の
流れである。

この座敷の、年ごとの正月元日の情景が、早いテンポ
で次々に展開する。

ひとりの男が翌年には結婚して妻とふたりに・・そし
て、次の場面ではすでに3人の娘を持つ・・というよ
うに。

そうして移って行く時代の流れ、背景が、人々の会話
の中で浮かび上がってくる。

最初の場面は明治5年、維新からわずか5年後。やが
て日清戦争、日露戦争を経て、時代は大正へ。

大正デモクラシーの“春”も束の間、関東大震災・・昭
和に入って、日中戦争から太平洋戦争、自由だった人
の心までが、戦時色一色に染まっていく日々。

それが一転、敗戦後のアメリカナイズと、人々の豹変
(職業軍人だった次男坊が、進駐軍出入りのジャズ歌
手のマネージャーになっている)ぶり。

そして、ついに関東大震災に被災しして、安全な大阪
に嫁に来たと言っていた女性が、71年後、阪神淡路の
震災に合い、この家を手放すことに。

これで終わり?と思ったら、最後にもう一場面。

家はどうやら買い手がつかなかったのか、東日本大震
災の翌年、補修されて、岩手・大槌町からの移住者に、
貸し出されることに。

この新しい居住者を迎える、2012年の元日がラスト
シーンだ。

この芝居、前回上演は、15年前とのことなので、この
あとの大団円的場面は、おそらく、今回の補筆だろう。

各世代の「お正月」をつなぐのが、この一家、鈴木家
の、各代のおせち料理、特に、高野豆腐の煮物。これ
が薄味だったり濃い味だったり、甘かったり辛かった
り・・・と、時代によって種々様々ながら・・どれも
みな、決して美味しそうとは言えないシロモノ・・って
のが、なんとも愉快だ。

ケラケラ笑いながら、この家が、我らが日本が経てき
た、長いようで短い、変化が多いようであまり変わら
ない、100年という歳月について、いろいろと考える
ことが多かった。

以下は余談。
元日の話ということで、女優陣はみなさん晴れ着姿。
男優さんはだいたい、黒のスーツだったが、最後の場
面で、日系三世のケントとして登場する、茂山宗彦さ
んだけが、着物を着て登場した。

その姿が、なんとも自然で、どの女優さんのお着物姿
より、決まっていたなぁ・・という印象。さすがは、
狂言師!・・と、もっぴーファンは、大満足。

 IMG_4377.JPG 最後の挨拶。
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2018年12月12日

2018.12.11 国立劇場十二月歌舞伎公演

2018.12.11 国立劇場十二月歌舞伎公演

演目
通し狂言「増補双級巴ー石川五右衛門ー」
       四幕九場   三世瀬川如皐=作
 発 端     芥川の場
 序 幕     壬生村次左衛門内の場
          浄瑠璃=竹本葵太夫、三味線=鶴澤寿治郎
  (休  憩)
 二幕目 第一場 大手並木松原の場
     第二場 松並木行列の場
 三幕目 第一場 志賀都足利別館奥御殿の場
          浄瑠璃=竹本道太夫、三味線=豊澤勝二郎
     第二場    同   奥庭の場
     第三場 木屋町二階の場
          大薩摩=鳥羽屋里長事 大薩摩文清太夫林雀
          三味線=稀音家新之助
  (休  憩)
 大 詰 第一場 五右衛門隠家の場
          浄瑠璃=竹本樹太夫、竹本葵太夫
          三味線=鶴澤祐二、鶴澤寿治郎
     第二場 藤の森明神捕物の場
          浄瑠璃=竹本樹太夫、三味線=鶴澤祐二
  (配役)石川五右衛門=中村吉右衛門、次左衛門=中村歌六、
      此下藤吉郎久吉=尾上菊之助、足利義輝=中村錦之助、
      傾城芙蓉・五右衛門女房おたき=中村芝雀  外

「増補双級巴(ぞうほふたつどもえ)」は、三世瀬川如皐が、
先行の“五右衛門物”をいくつかつなぎ合わせるようなかたち
で創作した作品だそうで、嘉永4(1851)年、江戸中村座初
演。ただしこの外題が用いられたのは、10年後の再演(文久
元年、江戸守田座)時からとのこと。

この「つなぎ合わせ」の結果、ということなのか、発端から
三幕二場までと、それ以降がまったく別物のような印象。

時代物的雰囲気と、世話物の要素、両方を楽しめる、一粒で
二度美味しい演目と言えるかもしれない。

前段で、五右衛門の生い立ちが明らかになるのには少々びっ
くり。実は西国の大名のご落胤とか、子どものころから手癖
が悪く、奉公先から金を盗んで蓄電したとか・・なんか、先
月の天一坊や、落語「双蝶々」の長吉を思い出す。

父と兄の確執の犠牲になるように命を落とす、妹の小冬が哀
れだ・・演じる中村米吉丈の、なんと可憐なことか。

自らの出自を知った五右衛門は、天下取りを目指す。手はじ
めに天皇家から足利義輝への勅状を奪い、ご勅使に化ける。
その偽勅使の行列が、久吉の一行とすれ違う・・まんまと、
久吉をだまし果せたと、声を出さずに笑う五右衛門・・吉右
衛門丈の“大きさ”を感じる。

このふたりが、義輝の別宅で対決・・と、実はふたりはかつ
てのワル仲間だったことが分かり・・・

でもね、これが実は全部、夢!・・・えー、うっそぉ!

隠れ家の二階で昼寝から目覚めた五右衛門と、下を通りかか
る久吉。この場面は、“五右衛門物”の白眉「金門(楼門)五
三桐」のパロディだ。

豪華な南禅寺山門とは全く異なる、質素なしもたやというそ
の対照が、奇妙に可笑しい。

大詰は、なんと、五右衛門の家庭生活が描かれる。先妻が生
んだ子である五郎市を、五右衛門の後妻、おたきがいじめ抜
く。この場面は、最近よく聞くニュースを思い出し、正直、
見るのが辛い。

しかし、実はおたきには、ある思惑が・・・
だが、その思いが明らかになった時にはもう遅いのだ。

結局、五右衛門はお縄になり、「世に盗人の種はつきまじ」
と辞世を残すことに。

大詰、五郎市を演じる子役が、実に達者で感心する。ダブル
キャストだが、この日の出演は、プログラムの写真から判断
すると、安藤然くん・・かな? よく頑張りました。

よく頑張ったといえば、御年74歳の吉右衛門丈もまた然り。
つづら抜けの宙乗り、そして大詰の立ち回りと、大活躍だ。
・・・お疲れさまでした。

もちろん、裏方さんや、立ち回りのからみの三階さんたちの
力もとっても大きいけれどね。
posted by JTm at 09:46| 芝居 | 更新情報をチェックする

2018年11月15日

2018.11.14 国立劇場十一月歌舞伎公演

2018.11.14 国立劇場十一月歌舞伎公演

演目
通し狂言「名高大岡越前裁(なもたかしおおおかさばき)」
         六幕九場     河竹黙阿弥=作
 序 幕 第一場 紀州平沢村お三住居の場
     第二場 紀州加田の浦の場
  (休   憩)
 二幕目     美濃長洞常楽院本堂の場
  (休   憩)
 三幕目 第一場 大岡邸奥の間の場
     第二場 同  無常門の場
     第三場 小石川水戸家奥殿の場
  (休   憩)
 四幕目     南町奉行屋敷内広書院の場
  (休   憩)
 五幕目     大岡邸奥の間庭先の場
          浄瑠璃=竹本葵太夫、三味線=鶴澤慎治
 大 詰     大岡役宅奥殿の場
  (配役)大岡越前守忠相=中村梅玉、天一坊=市川右團次、
      山内伊賀亮=坂東彌十郎、大岡妻小沢=中村魁春、
      下男久助・池田大助=坂東彦三郎、
      徳川綱條=坂東楽善、大岡忠右衛門=市川右近 外

河竹黙阿弥が、明治になってから書いた作だそうで、
神田伯山(初代)の講談「天一坊」を下敷きにしてい
る。元の外題は「扇音々大岡政談(おうぎびょうしお
おおかせいだん)」と言い、明治8(1875)年初演。

国立劇場では昭和47(1972)年に復活上演しているそ
うだが、さすがに見ていない。今回は外題を変えて、
46年ぶりの上演である。

天一坊事件というのは、大岡政談の中でも有名な物語
で、講談こそ聞いたことがないが、TV時代劇などで
あらすじは知っている。

実際にあった事件ではあるが、実は大岡忠相はほとん
ど関与しなかったらしい。ま、それを言っちゃあオシ
マイだけれど。

八代将軍吉宗には、本当にご落胤がいて、でも、その
子は、出産と同時に母もろとも亡くなった・・という
設定。

序幕に登場するお三という婆さんが、そのご落胤の祖
母にあたる人物で、吉宗のお墨付きと証拠の刀(葵の
紋章がちりばめられたこしらえ)を、持っている。

後に天一坊となる僧・法沢は、序幕ではこのお三に、
好きな酒を持って行ってやろうという、気のいい若者
であるが、酔ったお三から、死んだ孫(つまりご落胤)
の話を聞き、証拠の品まで見せられて、ふと、悪心を
抱く。

この、ふとしたきっかけで悪に捕らわれて行く、法沢
の心の動きを右團次丈が丁寧に見せる。

お三を殺した法沢は、ついでに師匠である感応院住職
まで毒殺。・・・自分の身元を知る人間を消して、ご
落胤に成りすまそうとする。

ここで、感応院の下男久助と、下女のお霜という駆け
落ちカップルが登場するのだが、これが何だかよくわ
からない。

前回上演時の台本を整理したというのだが、整理しす
ぎちゃってない?・・このふたり、なぜ、駆け落ちを?

訳がわからないが、このふたりは最後に重要な役目を
果たすことになるので、カットするわけには行かない。

ともあれ、これを上手く利用した法沢は、住職殺しの
罪を久助になすりつけたばかりか、自分もまた、久助
に殺されたと偽装する。

やがて、美濃国までやって来た法沢は、ご落胤を自称
して、常楽院という寺に滞在。ここで、悪僧・天忠と、
山内伊賀亮という、“ブレーン”に出会う。

三幕目でようやく、大岡様の登場。

天一坊と名を変えた法沢は、すでに老中の吟味で、真
実、ご落胤に違いないと認められている。しかし、大
岡はひとり疑問を抱き、再吟味を願うが、上様のご不
興を買って、閉門蟄居を命じられる。

このままだと、翌日には切腹を命じられる・・死ぬこ
とは構わないが、偽ご落胤をこのままには出来ない。
大岡は、死人に化けて、無常門(死者が出た時に、閉
門中でも唯一出入りを許される門)から脱出、水戸家
の力を借りて、ついに、再吟味を認められる。

四幕目、広書院は、大岡と伊賀亮・天一坊の直接対決。

ふとしたことから悪心に捕らわれた天一坊は、意外に
底の浅い悪党で、伊賀亮にしてみれば、「豎子ともに
謀るに足らず」の思いだったのではないか?・・と思
いつつ見ていた。

ここでは、伊賀亮の周到さが勝り、なかなか尻尾を出
させることが出来ない。次の五幕目では、大岡は、妻
子とともに切腹の瀬戸際である。

正しいことをしていると信じているのに、妻子まで道
連れにして死ななくてはならない、大岡の無念さが、
ひしひしと心に迫る。大岡の息子・忠右衛門の健気さ
も手伝って、涙があふれて困った。忠右衛門役、市川
右近ちゃん・・かわいいし。

最後、あわや!というところで、紀州に探索に行った
部下たちが帰着し、やれやれ・・となるのは、なんだ
か、TVの娯楽時代劇みたいだけれど、やっぱり、こ
こは素直に拍手ーー!

・・だけど、10日で紀州まで往復出来るんですかね?
現地で探索もしなくちゃならないのに。
(なーんて言うのは、野暮です、野暮)

そして、大詰、大団円。
住職殺し、法沢殺しの罪を着せられていた久助は、ど
うやら捕らえられて入牢中だった模様。(殺しの罪な
ら死罪だと思うけど・・まだ処刑されてなくてヨカッタ)

この久助・お霜夫婦との対決で、天一坊=法沢が明ら
かとなり、めでたし、めでたし・・という次第。

大岡忠相役の梅玉丈、いつもながらスッキリとしたた
たずまい。これが、正邪を見極める役どころにピッタ
リで、きりっと一本芯の通った、見事なお奉行様ぶり
でした。

一階席は、花道の向こうと、上手側ブロックに高校生
らしき団体が入っていたが、そのほかの一般客は、あ
まり多くない・・・おかげで見やすかったのはありが
たいが、大向こうからの掛声が、ひとつも無かったの
は、とても残念だった。
posted by JTm at 22:37| 芝居 | 更新情報をチェックする