2013年11月30日

2013.11.30 展覧会ふたつ(11月のまとめに替えて)

2013.11.30 展覧会ふたつ(11月のまとめに替えて)

横山大観展 -良き師、良き友-@横浜美術館

大観の回顧展は、しばしば行われており、わたしの本棚にも、
2008年に国立新美術館で行われた展覧会(没後50年記念)
の図録があったし、他でも見た記憶がある。

この2008年の展示は、大観作品に限ったものだったが、今
回は、師である岡倉天心との関係を探るとともに、同世代の
画家たちの作品をも共に展示して、相互に切磋琢磨し合い、
新時代の美術を築いて行った人々の生涯を見て行こうという
企画である。

展示替えを挟んで10月末と11月初めの2回、見に行った。

正直なところ、大観自身の作品の充実という点では、国立新
美術館での展覧会には敵わないのではないかという気がし
た。ただ、副題にある通り、天心や他の画家たちとの、相互
の影響関係を見るという点では、有意義な展示だったと思う。

岡倉天心は、明治期の美術史に於いては、多大な役割を果
した人であるが、決して、自らが実作者として優れた作品を
残したという訳ではない。
だから、名前だけは知ってはいたが、かなり理解し難い人物
であった。

今回の展示で、わずか17歳で東京大学を卒業して、フェノ
ロサの通訳として、日本美術の調査に従事、理論的な面か
ら、新時代の芸術を牽引する第一人者として活躍した人で
あることがよく分かった。

そして、その指導のもとに、明治という新時代の芸術を創出
する実際面での活躍をしたのが大観であり、その同時代に
活躍した、多くの芸術家たちだったのだ。

会場に掲げられた大観を中心とする年譜を見ていて、驚い
たことがふたつある。

ひとつは、天心と大観の年齢差が、僅か5歳であること。

そして、もうひとつは、ここに共に取り上げられた大観と同
世代、いや、むしろ後輩の画家たちの多くが、大観よりも、
ずっとずっと早くに亡くなっているということだった。

大観は当時の人としては長寿で、1937年に89歳で没。

5歳年上の天心は、1913年に50歳で亡くなっているし、大
観より10歳以上も若い今村紫紅は、1916年に36歳で亡
くなっている。

「生々流転」という有名な作品がある。(残念ながら今回は
習作の一部のみの展示だったが)、一滴の水のしずくが、
やがて大河となり、海に注いで、水蒸気として天に還るま
で(これを天に昇る龍として描く)を描いた長大な画巻だ。

その作品の中に、運命に抗えず、ただ流されて行くだけの
人の生き方と、それでもいつかは、龍となって天に駆け上
る大きな希望を秘めているという気概を見る・・・。

この作品の背景に、若くして逝った師や友の人生と、その
遺志を継いで、芸術に邁進する決意を見るのは・・・
いささか、考えすぎであろうか。

ひとつ、残念だったことがある。
いくつかの組作品が、前後期で半分ずつの展示になって
いたことだ。

日本美術の作品は、洋画に比べて素材が脆弱なので、あ
る程度以上の会期の展覧会の場合、展示替えは仕方ない。
ただ、組作品を半分ずつというのは、いかがなものか?
・・・これは、この展覧会に始まったことではないのだが。

四季図の四幅や八景図の八幅などは、全部まとめて見る
ことで、プラスアルファの感慨が得られるのではないか?
つまりは、1+1+1+1が、4ではなくて、5にも6にも感じ
られるような。

いろいろと難しい点があるのは承知の上だが、展示計画に
あたって、一考していただければ、幸いと思う。


京都 -洛中洛外図と障壁画の美-@東京国立博物館

こちらも展示替えを挟んで、10月と11月に1回ずつ、さらに
受講している美術講座の見学会で、講師の解説つきで1回、
計3回行った。(見事に東博さんに乗せられた・・)

「目玉」は、現存の洛中洛外図をすべて見せるということ
だったが、先月末にも書いた通り、一度に全部が並ぶとい
う訳ではなく、ほぼ、半々ずつの展示替えだ。

ただ、これはもともと、ひとつの組作品であるという訳では
ないし、なにより、展示期間以外のものも写真パネルを置
いてくれていたから、前記の大観展のような不満はない。
上手いやり方だと思う。(さすがに国立、予算が豊か?)

洛中洛外図の中では、前期に展示された国宝の上杉本と、
通期で展示の舟木本が、一番の注目の的だった。
前者は狩野永徳、後者は岩佐又兵衛作と伝えられる。

この二作を比べてみると、見ていて見飽きないのは、断然、
舟木本の方だ。ひとりひとりの人物が、かなり大きめに描
かれ、表情や仕草も豊かで変化に富み、見ていると、強い
物語性を感じる。

しかし、上杉本には、舟木本に勝る格調が感じられる。
全体のほとんどが金の雲に覆われて、その間から、京都
のそこここを覗き見るかたちは、まさに「選ばれし者」の特
権のようだ。

その他の作も、じっくりと詳細に見ると、興味深い面白い風
景が満載なのだが、いかんせん、混雑が・・・
3回行った中では、台風の日に行った初回がいちばん空い
ていたけれど、それでも、かなりキビシかった。
(というわけで、しばらく“封印”していた図録を買ってしまった・・・)

洛中洛外図以外では、明治初期に海外に流出した竜安寺
のふすま絵が、アメリカのふたつの美術館から里帰りし、現
在、竜安寺に保管されているもの(これも海外から買い戻し
た)とともに、一堂に展示されたことに注目だ。

これが、保存状態が非常に良好で、美しいのである。
美術史的観点からの興味もさることながら、とても良い、
目の保養であった。

他に、二条城や御所旧蔵の障壁画、そして、竜安寺石庭と
舟木本・洛中洛外図屏風の映像展示も、お見事です!とし
か言いようがない。
・・・・さすがに国立、いろんな意味で。




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2013年07月12日

2013.7.11 プーシキン美術館展@横浜美術館

2013.7.11 プーシキン美術館展 -フランス絵画300年-

主催新聞社で募集していた内覧会に、運よく当選。休館日に
ご招待いただいた。

と言っても、かなりの人数を募集しているから、内部は結構な
混雑で。・・・・盛岡の若冲の方がよほど空いていた。
ま、タダだから、文句は言えませんが。

この展覧会、当初、2011年の春に予定していたものだが、
あの震災の余波で中止になった。2年を経て、改めての開催
に漕ぎつけたわけで、関係者の努力に感謝する。

展示作品の画像を載せたいところだが、著作権法に抵触しそ
うなので止めておく。代りに、展覧会の公式HPにリンクを貼っ
ておきます。⇒ http://pushkin2013.com/

「フランス絵画300年」という副題の通り、17~8世紀、19世
紀前半、19世紀後半、そして20世紀と、時代順の4部構成
で、絵画史の流れを追う。全66作品。

パネル展示で、絵画史の概略を紹介しているのは鑑賞に役
立つし、内容も分かりやすい。

ポスターやチラシにルノワールの作品が使われているところ
を見ると、「目玉」はやはり印象派~ポスト印象派(第3章)な
のだろう。

確かに、件のルノワールを始め、モネやドガ、そしてセザンヌ、
ゴッホ、ゴーギャンと、著名な画家の作がずらっと並ぶ。

わたし自身、絵を見始めたきっかけは、やはり印象派の作品
からだったので、ルノワールの「ジャンヌ・サマリーの肖像」
や、モネの「陽だまりのライラック」などには心惹かれるもの
がある。

ただ、今回、それ以上に興味深く見たのは、第1章の古典主
義の作品だった。

この章の画家たちは、日本ではあまり名が知られていない人
が多いようだ。(いや、わたしが知らないだけなんだろう)

だが、どの作品も、物の質感や触感を如何に真実に近く現わ
すかということに力を注いでいるようで、思わず手を伸ばして
触れてみたくなるような(やりませんよ!)リアリティを感じさ
せた。 

いくつかの肖像画の着衣の布地や毛皮が感じさせる触感、
そして、アンドレ・ヴァンサン「素描ばさみを持つ青年」の素描
ばさみと中味の紙の軽い質感、さらには、風景画に見る石造
建築の重々しい質感・・・・彼らの「本物を再現」することへの
こだわりが、高度な絵画技術を生んだのだろうか。

パネル展示には、絵画史の流れと共に、この美術館のコレク
ションの元となった5人の収集家が紹介されていた。

エカテリーナ2世、ニコライ・ユスーポフ、アレクサンデル2世、
そして、セルゲイ・シチューキンとイワン・モロゾフ。

1917年のロシア革命は、この彼らのコレクションを没収し、
皇室や個人の財産から、ロシア国民の財産とした。
その際に、散逸してしまわなかったのは、確かに結構なこと
だったとは思う。

皇帝だったエカテリーナとアレクサンデル、そして公爵だった
ユスーポフのコレクションが没収されたのは、まあ、仕方ない
ことかもしれない。

しかし、シチューキンとモロゾフは実業家であり、自らの稼ぎ
(もしくは先祖の稼ぎ)で、絵画収集をしていたわけで、何の
見返りもなく、大事なコレクションを没収されてしまったという
のはさぞ残念なことだったろう。

そんなことを考えていたら、美しい作品の背後に、コレクター
たちの無念さが見えてきてしまった・・・・。

横浜美術館の前庭の、夏の日差しを目いっぱい吸い込んで
熱くなった石畳で、ちょっと、背中がゾクゾクするような気が
したのは・・・いや、単なる気のせいでしょう。

横浜展は9月16日まで。その後、神戸に巡回。

posted by JTm at 09:56| 展覧会 | 更新情報をチェックする

2013年05月30日

2013.5.29 「若冲が来てくれました」展@岩手県立美術館

2013.5.29 東日本大震災復興支援「若冲が来てくれました」展
        ~プライスコレクション 江戸絵画の美と生命~


あの震災のあと「これから先、海外の美術館や収集家はもう日
本に作品を貸し出ししてくれないのではないか?」という危惧を
抱いた・・・多くの人命が失われ、まったく先の見えない中で、な
にを呑気な!と思われるかもしれないが、“人はパンのみにて
生きるに非ず”・・・・・・ご容赦あれ。

ところが、その震災を契機として、あのプライスコレクションが、
また、来日することになった。

2006年に東京国立博物館で開催された「若冲と江戸絵画」展
に感動した者としては、ぜひ、見ておかなくては・・・と、盛岡ま
で遠征。


会場の岩手県立美術館は、盛岡の駅の繁華でない方の出口
から歩いて30分足らず・・・道はほぼ一直線で分かりやすい。

この場所で、平日の昼間、しかも雨にしては、意外にお客さん
が入っていたけれど、もちろん入場制限するほどじゃないし、
東京での展覧会を思えば、十分にゆとりをもって鑑賞出来る、
心地よい賑わいと言ったところだろうか。

来日した作品は全部で100点。前期・後期に分けての展示で、
現在は前期にあたっている。

前回の東博の展覧会は、プライスコレクションの集大成とも
言える展示だったそうなので、今回の出品作の半数以上は、
その時の出品作と重複しているが、重ならないものも20点ほ
どあるらしい。

たぶん、第五セクションに展示の物語絵、「源氏物語」や、
「義経記」に取材した作は、前回は来ていなかったかな?

二つの展覧会の図録を、パラパラと見た限りでは、メイン?
の若冲作品は、すべてが再来日のようだ。もちろん、それで
展覧会の価値が下がるわけでは決してない。

そして、前回の展示でわたしを驚かせた、ガラスケース無し
の展示(日本の絵画の展示では、めったに無い)は、今回も、
屏風7点が、“素っぴん”で飾られていて、描いた人の息づか
いまでも感じられるような感動を覚えた。


東北の復興を担って行く子どもたちに、「特に見て欲しい」と
いうプライス夫人、悦子・プライス氏の希望を入れて、子ど
もたちにも分かりやすいキャプションが付けられ、展示セク
ションごとのテーマにも工夫が凝らされている。

企画が持ち上がってからの、期間の短さを思うと、これはま
さに驚異的。関係者の努力に、頭の下がる思いだった。


この展覧会、仙台(すでに終了)、盛岡、福島と、東北の3
都市を巡回する。盛岡展は、前期が6月16日まで、後期が
6月18日~7月15日。
その後、福島展は7月27日~9月23日の予定。

前期、後期で大幅な展示替えがあるそうで・・・また、行きます。







posted by JTm at 12:13| 展覧会 | 更新情報をチェックする