2012年11月30日

2012.11.30 「尊厳の芸術」展@東京藝術大学大学美術館(兼11月のまとめ)

2012.11.30 「尊厳の芸術“The Art of Gamam”」展(兼11月のまとめ)

NHKの番組で紹介されていて興味を持った。

太平洋戦争中の米国で、強制収容所暮しを余儀なくされた日系ア
メリカ人の方たちが、収容所での厳しい生活の中で作り上げた、
数々の作品を展示。

展示は、4部構成になっている。
第1章   生活に必要なもの
第2章   生活を彩るもの
第3章   生活の記録
第4章   故国の文化

すべての財産を失って、砂漠の荒地の中に隔離され、先の見えない
不安の中で、一生懸命に日々の“普通の生活”を作りだそうとした
人たちの、必死の思いが、ひしひしと感じられる展示だった。

そして、生活に必要な最低限の品物の中にも、出来る限りの芸術性
をつけ加えずにはいられない、自分を表現したいという人間の欲求
・・・・生きるためにギリギリの生活の中でも、それが失われずにある
ということに、なんとも言えない感動を覚えた。

たとえば、第一章に展示された、いくつかの小引出し。今で言うレター
ケース程度の小さなものだが、表面を木象嵌風の模様で飾ったり、
引き手に、トランプの4つの模様をあしらったり。・・・ただ、小物入れ
として使うだけなら、まったく不要な飾りである。

さらに、レース編みの手提袋の木の持ち手には、なんと、収容所の
景色が描かれているではないか・・・別に、普通に無地のままでもよ
いだろうに、それになぜ、収容所の景色なのか・・・。

そして、第2章の、おびただしい数のピンブローチ。おしゃれして出か
ける機会などなくたって、女性たちはこういう可愛らしいアクセサリー
を身近に置きたいものなのだなぁ・・・。

本当に小さな、米粒ほどの貝殻を、丹念に丹念につなぎ合わせて、
可愛らしい花を形作る・・・ひまわりのタネをきっちりと丸く並べて、
大輪の?菊を咲かせる・・・美しく彩られた可愛い小鳥たちは、細い
脚まで、手を抜くことなく作られている・・・。

第3章は、写真を撮ることを禁じられた、収容所内の日常生活のあ
れこれを、絵で伝える貴重な資料だし、第4章は、二度と帰ること
が出来ないかもしれない、遠い故国への純粋な愛情を感じさせた。

“The Art of Gaman”・・・我慢の芸術という副題は、この展覧会が
アメリカで開催された時の題名だそうだ。これがNHK「クローズ
アップ現代」で紹介されたことから、今回の日本展が実現した由。

東京展は、12月9日まで。入場無料。月曜休館。
その後、福島、仙台、沖縄、広島に巡回するとのこと。


急激に冷え込んで、何年ぶりかのひどい風邪をひき込んだ11月。
その締めくくりにふさわしい?、重い内容の展覧会だった・・・。

実はこの日、もうひとつ、上野の美術展をハシゴするつもりだったが、
この展覧会のあとでは、心が騒いで、もう、見る気になれなかった。
・・・結局、時間調整片がた、水天宮まで歩く。夕刻の冷気にあたって、
ようやく、心が静まった感じ。





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2012年07月26日

2012.7.25 館長・庵野秀明 特撮博物館@東京都現代美術館

2012.7.25 館長・庵野秀明 特撮博物館  ミニチュアで見る昭和平成の技

まったくの門外漢で存じ上げなかったが、庵野秀明という方は、アニメ
映画の監督として、著名な方らしい。「エヴァンゲリオン」が代表作らし
いが、わたしは、名前は聞いたことあるなぁ・・・という程度。

その程度の知識しかない者が、なぜこの展覧会を見に行くことになった
かというと、「エヴァの原点はウルトラマンと巨神兵だ!」という惹句の、
もっぱら、後半部分に惹かれたから・・・。

「ウルトラマン」、それに先立つ「ウルトラQ」は、TVの特撮ドラマの原点
とも言えるシリーズだと思うが、まさに、その放送第一回を見ていた世
代・・・・なんである。

それに、巨神兵・・・「ナウシカ」のあれ?

というわけで、やって来ました、東京都現代美術館。区内にありながら、
めったに訪れることのない美術館・・・・現代美術は、とっつきにくい・・。

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展示は、一階と地下二階に分かれており、一階では、初期の特撮映画や
TVドラマに使用されたミニチュアを中心に展示。飛行機やら戦艦やら
潜水艦やら・・・それらのミックスやら。もちろん、怪獣もウルトラマンも。

夏休みとあって、親子連れの姿も多いが、夢中になって展示品を論じて
いるのは、もっぱらお父さんのようだ・・・。(もっとも、小学生の子ども
を連れてるのだから、リアルタイムで見ていた世代ではなさそうだけれど)

怪獣映画の数々、ゴジラやガメラ、モスラにキングギドラ、そして大魔
神などは、さすがに懐かしい。TVでは、最初のウルトラマン・・・
だが、割合と早い時期に、怪獣への興味を失ってしまったわたしに解る
のは、せいぜいでこのあたりまで。

それにしても、これらのミニチュアの精巧なこと!部品の一つ一つを手
作りし、何度も試行を重ねて組み立てていった物であることがよく判る。

一階の最後が、短篇映画「巨神兵東京に現る!」の上映。10分弱の作
品。理由などなにもなく、突然に東京に現れた巨神兵が、街を破壊し
つくす様を、ただ延々と見せる・・・

最後に、聖書の言葉をもじって、7日間で世界を壊した「神」のわざを
示す字幕が示されるのが・・・なんだか、とって付けたような。
ナレーション(「名探偵コナン」の灰原哀の声)が女声で、最初は「あ
たし」という一人称を使っていたのに、最後で「ぼく」になるのにも、
違和感を感じた。

ま、いいんです、これは。要するに、CGによらない初期の特撮のやり
方で、作って見せたかったってものだから。

地下の第二会場は、この短篇映画のメイキング映像を中心に、往年
の特撮スタジオの倉庫の再現や、撮影に使ったミニチュアセットを
展示。こちらの方がわたしには興味深かった。

最後のミニチュアセットのコーナーだけは、写真撮影がOKで。

このセットを0725(2).jpg
窓から覗くと、こんなふうに。0725(3).jpg

巨神兵に破壊される東京の街・・・館長・庵野氏の等身大パネルも。
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壊されたところ。0725(5).jpg

小さな小さな小道具たち・・・一切の手抜きなし。0725(6).jpg


ウルトラマンの胸のランプ・・・色が変わる時に、いちいちカヴァーを開けて
中の色セロファンを交換していたって、知ってました? しかも、そのラ
ンプを点けるために、ウルトラマンの脇の下に電池ボックスがあったんだ
そうで・・・・いやぁー、知らなかったな・・・。

「巨神兵~」の映画を見ながら、わたしが早い時期に特撮ものから離れて
しまった訳の一つは、「怪獣に破壊されつくした街が、来週になるとまた
元の通りに復元されてる」ということだった。

だが、今、こうして、手作業でその番組作りを担っていた方たちのことを
知ると、見続けていれば良かったな・・・と、頭デッカチの子どもだった
我が身を反省。

現代美術館の展示は、10月8日(月・祝)まで。詳細は、下記のHPで。

http://www.ntv.co.jp/tokusatsu/index.html





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2012年07月13日

2012.7.12 マウリッツハイス美術館展@東京都美術館

2012.7.12 マウリッツハイス美術館展

0711.jpg

話題の展覧会である。混雑は必至だと思い、雨の降りだした午後に
なって、行くことにした。

午後2時少し過ぎに着いてみると、入場10分待ちの掲示。ロッカー
にもまだ空きがあったし、想像していたよりは、マシかな?
・・・念のために、会場整理の係員に尋ねてみる・・・

いつごろが空いていますか?

もちろん、はっきりした答えは返って来ない。確約は出来ない話だ
からね。でも、聞きとったことを総合し、わたしの想像を加えて判断
したところでは、狙い目は、「お天気の悪い、月~木曜日の午後3
時半以降」ではないかと思う。

もちろん、会期が終わりに近づくにつれて、時間も曜日も関係なく、
大混雑になるのは、十分に予想される事態なので、なるべく早いう
ちに、お出かけになられますよう・・・。


オランダのマウリッツハイス美術館が、全面休館で改装工事に入っ
たため、話題のフェルメールを始め、ルーベンスやレンブラント等、
大家の作がまとめて出品されている。

フェルメールは、実は二点ある。「真珠の耳飾りの少女」は、この展
覧会の“目玉”だが、そのほかに、若いころに描いた歴史画(と解説
があったが、ギリシア・ローマ神話に題材をとった作)が、一点。
こちらの作は、19世紀まで他の画家の作とされていたそうだ。修復
の際に、偽署名の下から、フェルメールの署名が発見されたとか。

偽署名をつけるのは、作品の価値を高く見せるためと考えると、フェ
ルメールという画家の評価が、19世紀前半の段階では、必ずしも高
くはなかったということをうかがわせて、その意味で興味深い。

「真珠の耳飾りの少女」は、以前は「青いターバンの女」と呼ばれて
いたのではなかったか? 鮮やかなブルーが印象的だ。意外に小
さな絵で、人々の頭越しに覗くような位置から見ると、生身の少女が、
まさにそこにいて、こちらを振り返っているかのようだ。

1階部分の展示室のほぼ半分を使ってこの一点だけを展示、係員を
常置させて混雑を上手くさばいていたことは評価したい。

レンブラントは、肖像画を中心に6点。10年以上も前に京都で行わ
れた「大レンブラント展」で見た作も。この京都の展覧会は、日本国
内では他に巡回せず、京都まで日帰りしたことを思い出す。

この「大レンブラント」では、マウリッツハイスから日本まで来た作品
が一点だけだったことを考えると、今回、6点も出品されていることは、
もっと話題になってもよいような気がする。

フェルメールばかりが注目されている感があり、レンブラントには
いささかお気の毒というべきか。

全48点という出品数は、決して多くはないが、作品のレベルは高く、
個人的好みでは、とくに肖像画に優品が多かったと思う。
リニューアル記念にふさわしい、リキの入った展示である。

2年の休館を経て、この春、新装オープンした東京都美術館。
その後、最初の特別展とあって、中がどう変わったのか?にも、興
味があった。

入口が地下1階で、1階2階と、三層の展示室になっている構造は
そのまま。ただ、移動は階段ではなく、エスカレーターとエレベー
ターになった。以前は多くの客が集まる展覧会だと、人の流れが
滞りがちだったが、そのあたりは解消されたようだ(もっとも、今
回は、展示数が少なかったので、幸いしていたのかもしれない)。

ただ、残念なのは、以前は、地下1階から地上1階に続く階段の
あるスペースが、吹き抜けの天井の高い展示室だったのだが、そ
れが無くなってしまったこと。

個人的には、このスペースをどう使うかが、キュレーターの腕の
見せどころ、もっと言えば、展覧会の価値を決めるとすら思って
いた。

その(わたしにとって)大事なスペースが無くなってしまったのは、
本当に残念・・・世に多くの美術館がある中で、館としての特色を
打ち出すのに重要な要素を、自ら放棄してしまったように思える
のだが・・・さて?

マウリッツハイス美術館展は、9月17日まで。月曜休み。
午前9時半~午後5時半(金曜は午後8時)。7・8月の第三水曜
日は、65歳以上無料(混雑が予想されますとのこと)

9月末からは、神戸にも巡回する由。



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