2018年07月23日

2018.7月 納涼茂山狂言祭2018東京公演@国立能楽堂

2018.7.21 納涼茂山狂言祭2018東京公演(第一日)

演目
お話(解説)      茂山逸平
狂言「右近左近(おこさこ)」
    右近=茂山 茂、
    女房=茂山千五郎、後見=島田洋海
狂言「千鳥」
    太郎冠者=茂山七五三、主人=丸石やすし、
    酒屋=茂山あきら、後見=増田浩紀
  (休   憩)
狂言「彦市ばなし」(木下順二=作、武智鉄二=演出)
    彦市=逸平、天狗の子=茂山童司、
    殿様=茂山宗彦、後見=千五郎、茂、島田、増田
    笛=栗林祐輔
附祝言「猿唄」     茂山千五郎

「右近左近」。狂言には珍しい、女房の浮気話・・・
なのだそうだ。隣家の左近の牛に畑を荒らされた右近
は、代官に訴えに行くことに。気の弱い右近は、女房
相手に、訴えの予行演習。ところが、女房はなぜか左
近贔屓で・・・。

冒頭の解説の逸平さんは、「女房の浮気が本当として
演じる時と、ただそう臭わせるだけの時と、二通りの
演じ方がある」とのことだったが・・・千五郎師の女
房は、あまりにもオッカナクて、左近さんだって、ち
と尻込みするんじゃない?という感じ。

なので、“浮気”は、女房が勝手に左近に熱を上げてる
だけなんじゃないかなー・・と、思った次第。

「千鳥」。大好きな演目の上、七五三・あきら両師の
顔合わせと言うのも、なんとも嬉しい。

以前のツケも払う当てがないのに、さらにひと樽の酒
を「とってこい」と命じられた太郎冠者・・酒屋の主
人の話好きを良いことに、祭りの様子を面白おかしく
言い立てて、みごと、酒の奪取に成功!

言ってみれば、詐欺の話なんだけど、愛敬たっぷりの
太郎冠者は、どうにも憎めない。騙された酒屋の主人
も、意外に、怒ってはいないみたいで・・愉快。

「彦市ばなし」。熊本の民話をもとに、劇作家の木下
順二が書いた作で、当初は新劇で上演され、のちに、
武智鉄二が狂言として演出した。ただ、セリフは、狂
言の“標準語”には直さず、もとの熊本弁のセリフを、
そのまま使っている。

“うそつき”を自認する彦市、天狗の子を騙して隠れ蓑
を取り上げたが、天狗の親の報復が怖くなり、通りか
かった殿様を利用して、なんとか逃れようと画策・・

この殿様のキャラが良い。一見、お馬鹿っぼいのに、
実はちゃんと、真理を見抜いてる?という感じを漂わ
せ、愛敬たっぷりで憎めない。・・こういうの、宗彦
さん、はまり役!

最後、彦市と天狗の子の“水中対決”は、いかにも狂言
らしい、“つもり”の演出。これを陸から眺めている、
殿様のおおどかさが、これまた楽しかった。


2018.7.22 納涼茂山狂言祭2018東京公演(第二日)

演目
お話(解説)      茂山あきら
狂言「末広かり(すえひろがり)」
    果報者=茂山千作、太郎冠者=茂山 茂、
    すっぱ=丸石やすし、後見=増田浩紀
復曲狂言「独り松茸」(台本制作=茂山千之丞)
    男=茂山あきら
  (休   憩)
狂言「狸腹鼓(たぬきのはらつづみ)」
    尼=茂山千五郎、
    喜惣太=茂山童司、後見=丸石、茂
    囃子方 笛=松田弘之、小鼓=田邊恭資、
        大鼓=大倉慶乃助、太鼓=林雄一郎
附祝言「猿唄」     茂山 茂

二日目はあきら師の解説から。冷房の普及していない
時代には、狂言師は夏はお休みで、装束や面の虫干し
などしていた・・というお話(ボヤキ?)も。

「末広かり」。主催の会社は、今年、創立30周年だそ
うで、それを(こっそりと)言祝ぐ演目とか。

扇子と傘を取り違えるという内容は、教科書などでも
有名。リクエストの理由にも「教科書にあったあの演
目を見てみたい」というのが多いそうな。

太郎冠者を騙す“すっぱ”が、おまけとして、「主人の
機嫌が悪い時にご機嫌を直すための囃子もの」を教え
てくれる・・・なんと、ご念の入ったことか。

そして、まんまとそれに乗せられて、浮かれてしまう
果報者・・太郎冠者の囃子に合わせて、ビクッ、ビクッ
と、身体が動き始めるのが、なんとも楽しい。

「独り松茸」。和泉流にはあるひとり狂言を、大蔵流
でも・・と考えた千之丞(もうすぐ先代になる)師が、
今は途絶えてしまった大蔵流別派の台本をもとに、復
曲した。

男が山に松茸狩りに行く・・山道を登り、蛇に怯え、
あちこち松茸を探し回った後、見事な松茸を見つけて、
それを肴に一杯・・という物語を、たったひとりで、
しかも、舞台装置や小道具もないままに演じる・・・。

それなのに、見ている方には、その山道や大きな松茸
が、ちゃんと見えて来る・・・落語とおんなじ。

「狸腹鼓」。あの、井伊直弼が台本を作り、井伊家お
抱えだった茂山千五郎に演じさせたという、千五郎家
にのみ伝わる演目。

畑を荒らす狸を射る喜惣太のもとに、尼の伯母が現れ、
殺生の愚を説く。・・実はこの伯母、若い眷属を救お
うとする古狸が化けたもので・・・

狐と猟師の対決を描く「釣狐」と、よく似た物語では
あるが、後半、正体を見破った喜惣太が、「腹鼓を聞
かせてくれれば許す」と言うのが、なんかとってもほ
んわかした雰囲気。

狐vs.猟師の、鋭い緊迫感とはまったく違う、民話的な
感じ・・落語でも、狸は道化役だよなーとふと思った。

喜惣太役の童司さん、年末に三世千之丞を襲名する。
前日の「彦市~」の天狗の子の可愛らしさ、この日の
喜惣太の凛々しさと、毛色の違う二役を見事に演じて、
襲名への“決意”を感じさせた。
12月、楽しみにしてます。
posted by JTm at 10:08| 狂言 | 更新情報をチェックする

2018年05月26日

2018.5.25 国立能楽堂狂言の会

2018.5.25 国立能楽堂狂言の会 -家・世代を越えて-

演目
狂言「舟渡聟(ふなわたしむこ)」(和泉流)
   シテ(船頭)=野村万作、
   アド(聟)=髙津祐介、小アド(船頭の妻)=野村又三郎
狂言「清水」(和泉流)
   シテ(太郎冠者)=野村 萬、アド(主人)=三宅右矩
  (休   憩)
素拍子「鞨鼓(かっこ)」
   笛=成田寛人、小鼓=森 貴史、大鼓=佃 良太郎
狂言「禰宜山伏(ねぎやまぶし)」(大蔵流)
   シテ(山伏)=山本東次郎
   アド(禰宜)=茂山千五郎、アド(茶屋)=松本 薫
   アド(大黒)=山本則重
   囃子方 笛=成田寛人、小鼓=森 貴史、
       大鼓=佃 良太郎

4月に行われることの多かったこの公演、今年はなぜか
ひと月遅れとなった。

「舟渡聟」。同じ演目でも、大蔵流と和泉流で大きく異
なる内容。大蔵流では、船頭と舅は別人で、聟の土産の
酒を船中で船頭と聟が呑み干してしまう。

しかし、和泉流では、この酒好き船頭が、実はこれから
訪ねる舅だった・・という設定。そして、聟は真面目で、
船中では酒を呑まないから、樽の中には酒が残っている。

という訳で、大蔵流では空樽を土産にする聟が恥をかく
けれど、和泉流では、客を脅して酒を呑む舅が、まさに
「穴があったら入りたい」。

そして、この舅に“鉄槌を加える”のが、その妻。大蔵流
の太郎冠者に代る役どころだが、その“わわしさ”で、笑
いを倍化させる感。

「清水」。夜になって野中の清水へ、水を汲みに行くよ
う命じられた太郎冠者が、「鬼が出た!」と言って仕事
をサボる・・・と、怒った主人が、自ら清水へ・・。

4月の春狂言で、大蔵流のを見ている。和泉流では、そ
の清水の場所が、「播磨の印南野」と特定されているよ
うだ。「首引」にも出てくる、“鬼の本場”だ。

そして、鬼の脅し言葉が、「いで喰らおう!」ではなく、
「とって噛もう!」だったのは、ちとビックリ。

「禰宜山伏」。街道の茶屋で鉢合わせした禰宜(神職)
山伏の“祈り対決”・・・傲慢な山伏を、臆病そうな禰宜
が打ち負かす。

山伏役(山本家)と、禰宜役(茂山家)の芸風の違いを
上手く活かした配役。今回の「家・世代を越えて」の中
では、一番その効果の感じられる曲だったと思う。

狂言方の人間国宝は、現在三人。和泉流2に対し、大蔵
流1だから、この企画はどうしても和泉流に偏る。
・・・今度は、異流共演も期待したいのだが。
posted by JTm at 09:01| 狂言 | 更新情報をチェックする

2018年05月01日

2018.4.30 お豆腐の和らい2018・東京公演@紀伊國屋サザンシアター

2018.4.30 お豆腐の和らい2018 新作CLASSICS狂言_
        -しんさくなのに、クラシック?-

演目
「伝統は絶えた」(ごまのはえ=作、演出)
    師匠=茂山童司、弟子=茂山千五郎
「新作サクサクトーク」
    茂山千三郎×茂山童司
  (休   憩)
「鮒ずしの憂うつ」(土田英生=作、茂山あきら=演出)
    鮒ずし=茂山宗彦、丁稚羊羹=茂山逸平、
    近江牛=童司、くさやの干物=丸石やすし、
    引き割り納豆=茂山 茂   後見=千五郎
「流れ星X(エックス)」(茂山千三郎=作、演出)
    地球人の流れ者=鈴木 実、太郎ボイボイ星人=千三郎、
    主ボイボイ星人=山下守之  後見=千五郎

「伝統は絶えた」。今回の上演作のうち、これだけは
以前に見ている。2011年のHANAGATA。ただ、あと
のトークでの話では、バージョンアップ?して、より
過激になったとか。

前回の記録を見ると、鞍馬の忍者の師弟の物語だった
ようだが、今回は同じ鞍馬でも山伏の師弟。

一子相伝の秘奥義を教えるという師匠だが、どうやら
かなりの“恍惚”状態のようで・・・ぐるぐる回る話を
なんとか引き戻そうとする弟子だったが・・?

前置きを話し終えて、「さて」と茶をすすると、さらっ
とリセットされちゃって、もう一度同じことを話し出
す師匠・・・なんか、7年前より身につまされるなぁ。

トーク。茂山家の中でも、新作を自ら書き下ろすこと
の多いふたりによる。

明治以降に書かれた作は、すべて「新作狂言」なのだ
そうだが、それももう150年。中には十分、古典的な
“新作”もあるわけで・・・だから、しんさくなのにク
ラシック。

新作を書く時には、誰が演じるのか、その演者に充て
て台本を書くことが多いそうで、「その初演の演者を
離れた時にどうか?」が、その作が残って行くかどう
かの分かれ道・・というような話があった。

落語と同じだなぁ!新作落語もまた、演者を変えて口
演されることで古典的な位置づけになって行く。

「鮒ずしの憂うつ」。滋賀県でのイベントで上演され
たが、東京進出は初めてとのこと。

鮒ずし、丁稚羊羹、近江牛と、滋賀県の名産品が次々
に登場・・・中で、丁稚羊羹というのはあまり馴染み
がないのでちょっと調べてみた。

滋賀、京都あたりでは、竹の皮に包んだ蒸し羊羹をそ
う呼ぶのだそうだ。安価なので丁稚さんが藪入りのお
土産にするから・・だとか。(ちなみに、北陸地方で
は、水羊羹を指すそうで、こちらは朝ドラ「ちりとて
ちん」に出てきた)。

近江の名産品でありながら、その臭さが災いして近頃
では嫌われる鮒ずし・・・「これからは国際化の時代」
と近江牛になじられ、手下?の丁稚羊羹にも馬鹿にさ
れて、すっかり憂うつに。

その鮒ずしを励ましに、臭い仲間がやって来る・・ク
サヤの干物と引き割り納豆。

話の中に、世界の臭い食品がたくさん登場。臭いの強
さから言えば、鮒ずしなんてごくおとなしい方・・ら
しいですよ。

「流れ星X」。トークでの千三郎さんのお話では、着
物屋さんのイベントのために書いたら、それを見た京
都府知事が、「環境問題を考えるのに最適」と、愛・
地球博(2005年)で上演することになったとか。

2065年、温暖化が進み人間が住めなくなってしまった
地球のため、移住先を探す流れ者が、ボイボイ星にた
どり着く。ここで、温暖化を食い止める「ホシヒエー
ル」なる機械のことを知った流れ者は、「それをぜひ、
貸して欲しい」と申し出るが・・・

古典の狂言には、争いを「相撲で決着をつける」とい
うパターンがたびたび登場する。それを踏まえて、T
Vゲームでの決着・・・そんなことで、地球の運命、
決めていいんですか!?

ボイボイ星人役は、顔の周りを囲むような頭巾?をつ
けているのだが、主ボイボイ星人役の山下さん、小顔
のためか、頭巾がずれて、顔が半分隠れてしまった。

片目しか、見えてないでしょ?・・・大変だねぇ。

大いに笑った楽しい一日・・・ただひとつ心配は、当
初は出演予定だった茂山あきら師が、「急病」で、出
ておられなかったこと・・・どうぞ、お大事に。
posted by JTm at 09:47| 狂言 | 更新情報をチェックする