2018年05月26日

2018.5.25 国立能楽堂狂言の会

2018.5.25 国立能楽堂狂言の会 -家・世代を越えて-

演目
狂言「舟渡聟(ふなわたしむこ)」(和泉流)
   シテ(船頭)=野村万作、
   アド(聟)=髙津祐介、小アド(船頭の妻)=野村又三郎
狂言「清水」(和泉流)
   シテ(太郎冠者)=野村 萬、アド(主人)=三宅右矩
  (休   憩)
素拍子「鞨鼓(かっこ)」
   笛=成田寛人、小鼓=森 貴史、大鼓=佃 良太郎
狂言「禰宜山伏(ねぎやまぶし)」(大蔵流)
   シテ(山伏)=山本東次郎
   アド(禰宜)=茂山千五郎、アド(茶屋)=松本 薫
   アド(大黒)=山本則重
   囃子方 笛=成田寛人、小鼓=森 貴史、
       大鼓=佃 良太郎

4月に行われることの多かったこの公演、今年はなぜか
ひと月遅れとなった。

「舟渡聟」。同じ演目でも、大蔵流と和泉流で大きく異
なる内容。大蔵流では、船頭と舅は別人で、聟の土産の
酒を船中で船頭と聟が呑み干してしまう。

しかし、和泉流では、この酒好き船頭が、実はこれから
訪ねる舅だった・・という設定。そして、聟は真面目で、
船中では酒を呑まないから、樽の中には酒が残っている。

という訳で、大蔵流では空樽を土産にする聟が恥をかく
けれど、和泉流では、客を脅して酒を呑む舅が、まさに
「穴があったら入りたい」。

そして、この舅に“鉄槌を加える”のが、その妻。大蔵流
の太郎冠者に代る役どころだが、その“わわしさ”で、笑
いを倍化させる感。

「清水」。夜になって野中の清水へ、水を汲みに行くよ
う命じられた太郎冠者が、「鬼が出た!」と言って仕事
をサボる・・・と、怒った主人が、自ら清水へ・・。

4月の春狂言で、大蔵流のを見ている。和泉流では、そ
の清水の場所が、「播磨の印南野」と特定されているよ
うだ。「首引」にも出てくる、“鬼の本場”だ。

そして、鬼の脅し言葉が、「いで喰らおう!」ではなく、
「とって噛もう!」だったのは、ちとビックリ。

「禰宜山伏」。街道の茶屋で鉢合わせした禰宜(神職)
山伏の“祈り対決”・・・傲慢な山伏を、臆病そうな禰宜
が打ち負かす。

山伏役(山本家)と、禰宜役(茂山家)の芸風の違いを
上手く活かした配役。今回の「家・世代を越えて」の中
では、一番その効果の感じられる曲だったと思う。

狂言方の人間国宝は、現在三人。和泉流2に対し、大蔵
流1だから、この企画はどうしても和泉流に偏る。
・・・今度は、異流共演も期待したいのだが。
posted by JTm at 09:01| 狂言 | 更新情報をチェックする

2018年05月01日

2018.4.30 お豆腐の和らい2018・東京公演@紀伊國屋サザンシアター

2018.4.30 お豆腐の和らい2018 新作CLASSICS狂言_
        -しんさくなのに、クラシック?-

演目
「伝統は絶えた」(ごまのはえ=作、演出)
    師匠=茂山童司、弟子=茂山千五郎
「新作サクサクトーク」
    茂山千三郎×茂山童司
  (休   憩)
「鮒ずしの憂うつ」(土田英生=作、茂山あきら=演出)
    鮒ずし=茂山宗彦、丁稚羊羹=茂山逸平、
    近江牛=童司、くさやの干物=丸石やすし、
    引き割り納豆=茂山 茂   後見=千五郎
「流れ星X(エックス)」(茂山千三郎=作、演出)
    地球人の流れ者=鈴木 実、太郎ボイボイ星人=千三郎、
    主ボイボイ星人=山下守之  後見=千五郎

「伝統は絶えた」。今回の上演作のうち、これだけは
以前に見ている。2011年のHANAGATA。ただ、あと
のトークでの話では、バージョンアップ?して、より
過激になったとか。

前回の記録を見ると、鞍馬の忍者の師弟の物語だった
ようだが、今回は同じ鞍馬でも山伏の師弟。

一子相伝の秘奥義を教えるという師匠だが、どうやら
かなりの“恍惚”状態のようで・・・ぐるぐる回る話を
なんとか引き戻そうとする弟子だったが・・?

前置きを話し終えて、「さて」と茶をすすると、さらっ
とリセットされちゃって、もう一度同じことを話し出
す師匠・・・なんか、7年前より身につまされるなぁ。

トーク。茂山家の中でも、新作を自ら書き下ろすこと
の多いふたりによる。

明治以降に書かれた作は、すべて「新作狂言」なのだ
そうだが、それももう150年。中には十分、古典的な
“新作”もあるわけで・・・だから、しんさくなのにク
ラシック。

新作を書く時には、誰が演じるのか、その演者に充て
て台本を書くことが多いそうで、「その初演の演者を
離れた時にどうか?」が、その作が残って行くかどう
かの分かれ道・・というような話があった。

落語と同じだなぁ!新作落語もまた、演者を変えて口
演されることで古典的な位置づけになって行く。

「鮒ずしの憂うつ」。滋賀県でのイベントで上演され
たが、東京進出は初めてとのこと。

鮒ずし、丁稚羊羹、近江牛と、滋賀県の名産品が次々
に登場・・・中で、丁稚羊羹というのはあまり馴染み
がないのでちょっと調べてみた。

滋賀、京都あたりでは、竹の皮に包んだ蒸し羊羹をそ
う呼ぶのだそうだ。安価なので丁稚さんが藪入りのお
土産にするから・・だとか。(ちなみに、北陸地方で
は、水羊羹を指すそうで、こちらは朝ドラ「ちりとて
ちん」に出てきた)。

近江の名産品でありながら、その臭さが災いして近頃
では嫌われる鮒ずし・・・「これからは国際化の時代」
と近江牛になじられ、手下?の丁稚羊羹にも馬鹿にさ
れて、すっかり憂うつに。

その鮒ずしを励ましに、臭い仲間がやって来る・・ク
サヤの干物と引き割り納豆。

話の中に、世界の臭い食品がたくさん登場。臭いの強
さから言えば、鮒ずしなんてごくおとなしい方・・ら
しいですよ。

「流れ星X」。トークでの千三郎さんのお話では、着
物屋さんのイベントのために書いたら、それを見た京
都府知事が、「環境問題を考えるのに最適」と、愛・
地球博(2005年)で上演することになったとか。

2065年、温暖化が進み人間が住めなくなってしまった
地球のため、移住先を探す流れ者が、ボイボイ星にた
どり着く。ここで、温暖化を食い止める「ホシヒエー
ル」なる機械のことを知った流れ者は、「それをぜひ、
貸して欲しい」と申し出るが・・・

古典の狂言には、争いを「相撲で決着をつける」とい
うパターンがたびたび登場する。それを踏まえて、T
Vゲームでの決着・・・そんなことで、地球の運命、
決めていいんですか!?

ボイボイ星人役は、顔の周りを囲むような頭巾?をつ
けているのだが、主ボイボイ星人役の山下さん、小顔
のためか、頭巾がずれて、顔が半分隠れてしまった。

片目しか、見えてないでしょ?・・・大変だねぇ。

大いに笑った楽しい一日・・・ただひとつ心配は、当
初は出演予定だった茂山あきら師が、「急病」で、出
ておられなかったこと・・・どうぞ、お大事に。
posted by JTm at 09:47| 狂言 | 更新情報をチェックする

2018年04月16日

2018.4.15 春狂言2018東京公演・昼夜@国立能楽堂

4年ぶりの春狂言・・オリンピックだね、まるで。

2018.4.15 春狂言2018東京公演・昼の部

演目
解説       丸石やすし
狂言「居杭(いぐい)」
      算置=茂山七五三、居杭=茂山慶和、
      何某=茂山宗彦      後見=茂山逸平
  (休   憩)
狂言「清水(しみず)」
      太郎冠者=茂山千三郎、
      主人=網谷正美      後見=増田浩紀
狂言「新釈 鬼の継子(おにのままこ)」(作・演出=茂山千之丞)
      鬼=茂山あきら、女=茂山童司、
      代官=逸平、太郎冠者=丸石   後見=鈴木 実
附祝言「猿唄」  鈴木 実

この日、4月15日は、“よい子の日”なんだそうだ。で、それ
にちなんで、昼の部は子どもの出てくる演目を二曲。プラス1。

「居杭」。居杭というのは少年の名。何某は居杭を可愛がる
あまり、顔を見ると頭を小突く・・それが嫌で、清水観音に
お願いして、姿を消す頭巾を得た居杭は、ちょっといたずら
心を起こして・・・。

居杭の姿が見えなくなり、心配して占い師である算置(さん
のき)を雇う・・占いの行商なんてぇのが、中世にはあった
んですねぇ。

丸石さんの解説では、「これは男色の話」とのことだった・・
うーん、元はそうかもしれないけど、今となっては、可愛い
坊やのいたずらってことでも、良いんじゃないかな?

「清水」。もう暗いというのに、森の清水まで水を汲みに行
く用を言いつけられた太郎冠者・・行くのが嫌さに、「鬼が
出た!」と、嘘をつく。

ところが、持って出た大事の桶を「森に置いて来た」と聞い
た主人は、その桶を取り返しに森へ行くと言い出して・・・。

困った太郎冠者は、清水に先回りして、鬼の面を付けて主人
を脅かす・・・なんだ、結局、清水まで行くならば、最初か
ら水を汲んで帰れば良いのにね。

狂言「新釈 鬼の継子」。古典狂言の「鬼の継子」を、故・千
之丞師が改作したものとのこと。古典の方はかなり以前に一
度見たが、新釈の方はお初。

古典狂言は、赤子を連れて里に帰る女の前に鬼が現れて、赤
子を喰おうとするのを、女が守り通す・・というような展開
だったと記憶している。

新釈の方も同じような運びだが、この女が、夫のDVに悩み、
里へ逃げて行く・・という設定になっている。

最初、鬼を恐れていた女が、鬼が自分の美しさに恋してしまっ
たと知った瞬間に、急に居丈高とも言える態度になるのが、
なんとも現代的。

そして、女は上手く鬼をたらして、代官を呼びに行く・・・
よく分からないのが、ここで赤子を“人質”として、鬼に預け
て行くことだ。

結果的には、この鬼は大変に心優しく、赤子に害を加えるよ
うなことはないのだが、さて、この時点で女の方は、そのこ
とをはっきり分かっていたのか・・・大いに疑問。

もしかしたら、この女、実は愛想の尽きた亭主の子など、も
ういらない!って、思ってたんじゃないか?と、ふと、考え
てしまった。


2018.4.15 春狂言2018東京公演・夜の部

演目
解説       茂山童司
狂言「萩大名(はぎだいみょう)」
      大名=野村万作、太郎冠者=高野和憲、
      茶屋の亭主=茂山七五三    後見=内藤 連
  (休   憩)
狂言「船渡聟(ふなわたしむこ)」
      聟=茂山逸平、舅=丸石やすし、
      太郎冠者=童司、船頭=茂山あきら  後見=鈴木 実
狂言「磁石(じしゃく)」
      男=茂山千三郎、田舎者=茂山宗彦、
      宿の亭主=網谷正美      後見=増田浩紀
附祝言「猿唄」  増田浩紀 

続いて夜の部。
「萩大名」。ゲストに和泉流の人間国宝・野村万作師を迎え
て。茶屋の亭主役の七五三師以外は、和泉流の方なので、そ
ちらの型での上演。

茂山千五郎家のそれとは、おおむね同じなんだが、微妙に違
うところがいくつか。それでも、より身分が高い“大名”より
も、召使の太郎冠者や、萩の庭を持つ茶屋の主人の方が、風
雅の道に通じている・・・という皮肉は共通。 

この大名氏、たぶん、仕事人間で余暇を楽しむ余裕などひと
つもない人なんだろうな・・・なんか、今の世にすごく多そ
うだ。

「船渡聟」。聟入りの儀式に赴く聟が、川を渡るために乗っ
た渡し船で、手土産に用意した酒を船頭にねだられて・・・
というお話。狂言にはよくあるパターンの物語で、とどのつ
まり、婿も一緒に、大酒盛りとなる。

船が進む間、“揺れるともなく揺れて”いる聟の姿に、つい、
「あくび指南」を思い出してしまったのは、落語ファンのサ
ガというべきか。

それにしても、この曲の船頭は、なぜ、長袴なんだろうか?
船を漕ぐという“労働”には、ふさわしくない格好だと思うの
だが。

「磁石」。これは初めての曲。
遠江の国の人が都見物に行こうとして、途中の近江の国で、
危うく人買いの手に落ちそうになる・・・

まったく見知らぬ男が、「知り合いだよ」と偽って近づいて
来るのを、嘘をついて正体を見破ろうとする田舎者、それを
上手く誤魔化して、知り合いだと信じさせようとする男・・・
虚々実々の駆け引きは、手に汗握る緊迫感。

ただ、最後、田舎者が「自分は磁石の精だ」と言って、男の
太刀を飲み込もうとする・・という展開は、ちょっと現代人
には受け入れにくいかなぁ。

ま、それだから、今まで見る機会がなかったのだろうけれど。

でも、太刀を飲み込もうと、「ガァーッ!」と迫るもっぴー
さん、カッコ良かったなー・・・。


ゲストに「国宝」を迎えたにもかかわらず、夜の部は昼より
も入りが薄かった・・・これじゃ、来年はまたやって貰えな
いかも?というのが、休憩時間の友人たちとの会話。

そんなことないよね、セクターさん!
よろしくお願いしますよ。
posted by JTm at 19:01| 狂言 | 更新情報をチェックする