2019年07月17日

2019.7.16 映画「新聞記者」@角川シネマ有楽町

2019.7.16 映画「新聞記者」

監督  藤井直人
原案  望月衣塑子
脚本  詩森ろば・高石明彦・藤井直人
出演  シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、田中哲司 外

現政権に、真っ向から挑んだと評判の映画・・これは
選挙に行く前に、ぜひ見なければと思った。

誤報報道がもとで自殺した父を持つ女性記者吉岡は、
首相が強く後押しする大学院大学が建設されるとの情
報を得、詳細を調査することに。

一方、外務省から内閣情報調査室に出向中の杉原は、
外務省時代の上司の自殺にショックを受ける・・その
死の真相を探る杉原は、上司がこの大学の一件に関係
していることに気づき・・・

現政権と企業との癒着、大学に名を借りて実は生物化
学兵器の開発につながる機関を創設しようとする動き、
さらに、その政権に反対する者たちを、嘘の情報操作
で圧迫し、果ては自殺に追い込む・・なりふり構わぬ
「正義」。

あまりにも、あまりにも重い内容で、見ていて息苦し
くなり、正直、途中で見るのをやめようと思った。

しかし、ここでやめたら負け!という気持ちもあり、
頑張って最後まで見続けた。

最後、映画は結論を出さない。

結末は、見る者の心の内にある。

「さあ、あなたはどうしますか?」・・その問いかけ
ですべては終わる。

長期安定政権こそが国を守る道という主張がある・・
そのためには、嘘も欺瞞も、でっち上げも、何でも許
される、と。

本当にそうだろうか?
その嘘や欺瞞やでっち上げで守られるのは、「国」な
のだろうか?

国全体を犠牲にして、一部の誰かを守っているのでは
ないのか?

よしんば、それによって守られるのが国であったとし
ても、そんな汚い手段でなければ、守ることが出来な
い「国」に、本当に守る価値はあるのだろうか?

その問いは、あまりに重い。だが・・答はもう決まっ
ている・・そうではないか?

映画の中のひとつひとつの事象が、現実の出来事に、
ピタッとあてはまることもあって、映画化そして公開
には、様々な困難があったと聞く。

政権トップのスキャンダルを追った記者たちの物語と
して、われわれ世代が一番に思い出すのは、アメリカ
大統領ニクソン氏を辞任に追い込んだ、ワシントンポ
スト紙の取材だ。

「大統領の陰謀」として、映画化され、世界的に大ヒッ
トした。

もっとも、この映画は、ニクソン辞任後の制作・公開
だから、最初から「正義」の立場で受け入れられたの
だった。

「新聞記者」は、あくまでフィクションでありながら、
現在の実際の政権に、真っ向からもの申す映画である。

その意味で、「大統領の陰謀」より一段上の映画であ
ると、わたしは思う。

日本の女優陣がしり込みするなかで、敢然と主役に挑
んだシム・ウンギョン氏・・韓国の女優さんで、TV
ドラマでも活躍しているとのことだが、寡聞にして知
らなかった。

吉岡記者は、取り立てて美人というわけでもなく、ファッ
ションもどちらかと言えば野暮ったい。決して華やか
なエリートではない。ツィッターで自分への反響をい
ちいちチェックするなど、人間的な面も垣間見せる。

しかし、真相の追求への意欲は本当にすごい。常にまっ
すぐな視線には、強い意志の力を感じさせる・・

この役を演じることを渋った日本の女優さんが、いっ
たい誰なのか、わたしは知らないが、惜しいことをし
たものである。

杉原役の松坂桃李氏、朝ドラ「梅ちゃん先生」以来、
ちょっととぼけたところのある甘い二枚目という印象
が強かったが、この杉原役で新たな役柄をつかんだよ
うに思う。

上司の重圧や脅しに耐えながら、生まれたばかりの娘
に恥じない生き方を選ぼうとする姿は、感動的だった。

そして、その上司・多田を演じる田中哲司氏。TVの
刑事ものドラマでは、正義感の強い真面目な刑事役で
お馴染みだった。今回の役もまた、「正義」を貫こう
としてはいる。

しかし、その「正義」は、果たして本当の「正義」な
のか・・・すべてを計算しつくして、冷酷な判断を下
し、手段を選ばず目的を果たす姿に、背筋が寒くなっ
た。名演技である。
posted by JTm at 14:10| 映画 | 更新情報をチェックする

2019年03月29日

2019.3.28 映画「よあけの焚き火」@ポレポレ東中野

2019.3.28 映画「よあけの焚き火」

監督・脚本・編集 土井康一
出演 大藏基誠、大藏康誠、鎌田らい樹、坂田 明
音楽 坂田 学

アフタートーク  土井康一×坂田 学

9日に立合狂言会でチラシを貰い、見たいと思ったが
都合がつかず諦めていた。ところが思いがけなく上映
期間が延長されていて、なんとか間に合った。

大蔵流狂言方の伝統を継ぐ親子・・息子が10歳になっ
機に、山中の古家に籠っての「狂言合宿」。

父もまた、その父から、同じように「特訓」を受けた。

ふたりだけの生活に、留守中の山小屋の世話をしてく
れているらしい老人と、その美しい孫娘?が時折、顔
を見せる。

この少女、どうやら大きな災害(東日本の震災を想定
しているようだが、はっきりとは語られない)で、家
も家族も失ったらしい。

心に傷を抱え、前に踏み出すことが出来ずにいる少女
が、わずか10歳で650年続く伝統芸能の道に踏み出し
た少年とその父を見て、何を思い、どう行動したか・・

それが映画の主題・・なのだろう。アフタートークで
も、監督の土井氏は、「狂言方の映画を撮ったつもり
はない」と言っていたし。

ただ、狂言好きなわたしにとっては、これはやはり、
狂言方の映画だった。

初めての「合宿」に、当初、緊張しっぱなしだった父
と子が、日を重ねるにつれて、次第に笑顔を取り戻し
て行き、日常の会話を狂言のセリフで交わす。

ふたりが「附子」のセリフで、味噌汁を食べる場面や、
雪の積もった道を「こちへ来い、こちへ来い」「参り
まする、参りまする」と歩き、「えいえい、やっとな!」
と、雪玉をぶつけ合う場面など、実に楽しい。

「家族を失った少女の立場から、強いきずなで結ばれ
ている親子を見る」ことが目的で、「たまたまそこに
狂言方を配役した」という話だったけれど、これは、
やはり、狂言でなくてはダメだったのではないか。

狂言の持つ「笑い」の力が、少女の笑顔に直結した・・
わたしにはそんなふうに感じられた。
posted by JTm at 09:50| 映画 | 更新情報をチェックする

2017年03月17日

2017.3.17 映画 文楽「冥途の飛脚」@東京都写真美術館

2017.3.17 映画 文楽「冥途の飛脚」

監督=マーティ・グロス
音楽=武満 徹
1979年制作、2011年デジタルリマスター
出演
淡路町の段 
   太夫=五世竹本織太夫(のち、五世竹本源太夫)
   三味線=五世鶴澤燕三
封印切の段
   太夫=四世竹本越路太夫
   三味線=鶴澤清治
新口村の段~『恋飛脚大和往来』より~
   太夫=九世竹本文字太夫(のち、七世竹本住太夫)
   三味線=四世野澤錦糸
 <人形役割>
   忠兵衛=初代吉田玉男、梅川=三世吉田蓑助、
   八右衛門/孫右衛門=二世桐竹勘十郎、
   妙閑=吉田文雀  外

先月の文楽公演の時、半蔵門駅近くで、雪の降る中、
配っていたチラシ・・・なぜ、劇場に置いてもらわ
なかったのかな?・・・に釣られて見に行く。

チラシにも書かれていたが、上記に記した出演者は、
全員が、その時かその後、人間国宝に認定されてい
る方ばかり・・・そして、そのほとんどが、故人だ。
(ご存命の方は3名。さらに現役は2名だけ)

この時代に、文楽に“目覚めて”いなかった者として
は、まさに、よくぞ記録してくださいました!である。

それを成し遂げた監督が、カナダ人というのにも驚
いた。日本人より日本の伝統に関心を持つ海外の方
は多いけれど、特設舞台を作って、これだけの豪華
メンバーを揃えて、映画を撮ってしまうなんて・・・

残念ながら、多くの出演者は、わたしには未知の方
であったが、その、至芸の一端を、確かに感じ取る
ことが出来た、と思う。

幸せな体験だった。

恵比寿ガーデンプレイス内の東京都写真美術館ホー
ルで、31日まで上映中。連日、10:20~。
21(火)、26(日)、27(月)はお休み。
posted by JTm at 21:10| 映画 | 更新情報をチェックする