2019年05月14日

2019.5.13 人形浄瑠璃5月文楽公演@国立小劇場(その1)

2019.5.13 人形浄瑠璃5月文楽公演 第一部

演目
通し狂言「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」
     近松半二、松田ばく、栄善平、近松東南=合作
 大 序 大内の段
    太夫 竹本碩太夫、豊竹亘太夫、
       竹本小住太夫、豊竹咲寿太夫
    三味線 鶴澤清允、鶴澤燕二郎、
        野澤錦吾、鶴澤清公
  同  小松原の段(野澤松之輔=補曲)
    太夫 久我之助=豊竹芳穂太夫、雛鳥=豊竹咲寿太夫、
       小菊=竹本南都太夫、桔梗=竹本文字栄太夫、
       玄蕃=竹本津國太夫、采女=竹本小住太夫
    三味線 竹澤團吾
  同  蝦夷子館の段(野澤松之輔=補曲)
    太夫=(口)豊竹亘太夫、(奥)竹本三輪太夫
    三味線=(口)鶴澤清公、(奥)鶴澤清友
  <大序人形役割>
    蘇我蝦夷子=吉田玉佳、中納言行主=吉田清五郎、
    後室定高=吉田玉誉、久我之助=吉田玉助、
    雛鳥=吉田簔紫郎、蘇我入鹿=吉田文司  外
 二段目 猿沢池の段(野澤松之輔=補曲)
    太夫=豊竹希太夫、三味線=鶴澤友之助
  (休  憩)
 二段目 鹿殺しの段(七代鶴澤寛治=補曲)
    太夫=竹本碩太夫、三味線=野澤錦吾
  同  掛乞の段
    太夫=豊竹睦太夫、三味線=鶴澤寛太郎
  同  万歳の段
    太夫=竹本織太夫、三味線=鶴澤清志郎、ツレ=鶴澤清允
  同  芝六忠義の段
    太夫=豊竹咲太夫、三味線=鶴澤燕三
  <二段目人形役割>
    天智帝=吉田勘彌、猟師芝六=吉田玉也、
    倅・三作=桐竹勘次郎、女房お雉=吉田簔二郎、
    藤原淡海(不比等)=豊松清十郎  外
  (休  憩)
 三段目 太宰館の段
    太夫=豊竹靖太夫、三味線=野澤錦吾
  <人形役割>
    大判事清澄=吉田玉男、後室定高=吉田和生、
    蘇我入鹿=吉田文司  外
  囃子=望月太明藏社中

「妹背山」を文楽で見るのは、2016年に大阪に遠征したの
が最初で、今回は3年ぶり2度目となる。

前回見た時は、二段目と三段目の上演順を入れ替えており、
第一部の最後に「妹山背山の段」が来ていたが、今回は原作
の順番通りの上演・・そのため、正直言って、第一部には山
場がないなー・・という感じは否めない。

ただ、話はやはり、順番通りの方が分かりやすい。大阪公演
の時は、急に思い立って日帰りで行った経緯もあり、筋を追
うだけで四苦八苦した記憶がある。

大序では、主要登場人物とその置かれた立場が明らかになる。

天智帝は病のため視力を失っており、それにつけ込んで天下
を牛耳ろうと謀るのが蘇我蝦夷子(えみじ)である。対する
のは藤原鎌足・・鎌足の娘・采女は、帝と恋仲で、それを逆
にとられて、鎌足は蝦夷子に、朝廷から追われる。

そして、小松原の段は、のちの悲劇の元となる若い男女の出
会い。対立する家の出とも知らず、一瞬にして恋に落ちるふ
たり・・・

さらに蝦夷子館では、大逆転が待っている。父の蝦夷子の策
略を嫌って、自ら死を選んだはずの入鹿が、実は父を上回る
大悪人であった・・というのだ。(“ラスボス”なんて書いている
向きもあるが、わたしは好きじゃない。ゲームやらないし)

二段目は、入鹿の魔の手を逃れた帝が、流浪の身となってい
る。しかし、目が見えない帝は、そのことを知らず、猟師・
芝六の貧しい家を、内裏だと思っている。

上つ方たちと、庶民のちぐはぐなやり取りが可笑しい。

しかし、そんな気楽な場面はすぐに終わり、なぜかこっそり
と鹿を狩った芝六の一家に、悲劇が襲いかかる。なにせ、奈
良の鹿たせから・・殺したら石子詰。落語にもある通り。

芝六はなぜ鹿を狩ったのか・・その理由が明らかになるのは
まだずーっと先。

この二段目までで第一部が終わる?と思ったら、最後に三段
目の冒頭がついていた。

天下をほしいままにする入鹿が、太宰館(小松原で出会った
恋人たちの女の方、雛鳥の家)を訪れ、太宰と対立関係にあ
る大判事(同じく、男の方久我之助の父)を呼び出す。

太宰の後室(未亡人)定高(さだか。雛鳥の母)と、大判事、
このふたりに、難題を突き付ける入鹿。

定高には、「雛鳥を入内させよ」・・つまり、自分の妻にし
たいってこと。

大判事には、采女の付人だった久我之助が采女を匿っている
に違いない、そうでないと言うなら、久我之助を入鹿の朝廷
に出仕させよと。

久我之助に一途な雛鳥が入鹿の妻になることなど出来はしな
いし、采女を通じて鎌足・淡海親子とともに天智帝を助ける
久我之助が、入鹿に仕えることも無理。

というわけで、ふたりの親が、入鹿の権勢と親としての情愛
の板挟みになったところで、第一部は終了となる。

山場が第二部に集中するためか、第一部は、太夫・三味線と
も、“若手奮闘公演”の様相。特に最後の太宰館の靖太夫師の
頑張りに拍手。

そして、大阪公演の時には病気休演だった咲太夫師が、二段
目の切、芝六忠義で、元気な姿を見せてくれたことが嬉しかっ
た・・やっばり、ビシッ!と、締まりますねぇ。
posted by JTm at 19:38| 文楽 | 更新情報をチェックする

2019年05月12日

2019.5.12 狂言季期@セルリアン能楽堂

2019.5.12 狂言季期(きょうげんきご)

演目
狂言「昆布売」
  大名=茂山宗彦、
  昆布売=茂山 茂、   後見=鈴木 実
狂言「居杭(いぐい)」
  居杭=茂山慶和、何某=島田洋海、
  陰陽師=茂山七五三、  後見=鈴木
  (休  憩)
狂言「狸腹鼓(たぬきのはらつづみ)」
  伯母実ハ狸=茂山逸平、
  喜惣汰=茂山千五郎   後見=七五三、宗彦
  囃子方 笛=竹市 学、小鼓=大倉源次郎、
      大鼓=亀井広忠、太鼓=前川光範
附祝言「猿唄」   茂山七五三、茂山宗彦

今まで3回、京都で開催されていたこの会・・その
時だって見に行ったのだから、東京開催となれば、
当然・・ましてや、「狸」の披きだし。

まずは、軽め?の2曲。

「昆布売」。都へ向かう道で出会い、同行すること
になった大名と昆布売。実は大名には秘かな思惑が
・・この昆布売を従者変わりにしようというのだ。

でもね・・見知らぬ相手に、刀を預けてしまうのが、
どんなに危険なことか。

たちまち立場は逆転し、大名は昆布を売らされる破
目に・・ところがこれがだんだん楽しくなって・・・

関西弁で「いちびる」っていうのかな?そんな役が、
宗彦さんは素敵にハマってる。

「居杭」。今回の公演の主役、逸平さんの長男、
慶和(よしかず)君と、お祖父ちゃんの七五三師に
島田さんが加わって。

居杭という少年には可愛がってくれる知人・何某が
いるが、会うたびに頭を小突かれるのが不満。清水
様にお願いすると、頭巾をひとつ、授けてくれた。

これが実は、かぶると姿が消える頭巾。嬉しがった
居杭は、何某や陰陽師を、とことん揶揄ってしまう・・・

実は見えているのに、見えていないことにして、物
語は展開。これ、まさに「“つもり”の演劇」の極致。

そして、「狸腹鼓」。披きというのは、重要な演目
を初めて演じることを言う。茂山家の場合、対象と
なる演目は、「那須語」「釣狐」「花子」「狸腹鼓」
等々。

この曲のことは、以前にも何度か書いている。「釣
狐」とよく似た展開で、眷属を射殺された狸が、猟
師・喜惣太の伯母の尼に化けて、彼を諫める。

この伯母が甥に語る詞が、かなり難しくて、今まで
さっぱり分からなかったのだが、今回、え?と思う
ところが。

それは「雪山童子」という単語。これは、釈迦の前
世譚、いわゆるジャータカと呼ばれる説話のひとつ。

ただ、最後に登場したのは帝釈天ではなく、毘盧遮
那仏だったようだが。

これ、つい最近、仏教美術の講座のテキストに出て
きたのです。

こういうの・・・なんだか嬉しい。

あの、尼の詞、もう少し調べてみようっと。
posted by JTm at 22:00| 狂言 | 更新情報をチェックする

2019年05月11日

2019.5.10 露の新治落語会@深川江戸資料館

2019.5.10 露の新治落語会

演目
露の新幸       東の旅
露の新治       兵庫船
露の新幸       時うどん
露の新治       ちりとてちん
柳家さん喬      笠碁
  (仲 入 り)
さん喬&新治     (トーク)
露の新治       大丸屋騒動
       (三味線:田村かよ、鳴物:新幸)

新治師のお弟子の新幸さんが、開演時間前に
上がる・・「昔の上方の落語会の様子を再現」
と後から新治師が言っておられたが、東京の
寄席でも同じ・・これもまた、上方落語から
取り入れた習慣ということなのだろう。

で、新幸「東の旅」。東の旅は伊勢詣りの旅
・・東京の感覚では伊勢は西なんだけどな。

その中から、奈良名所そして、大仏の眼を修
理する親子のくだり。まだまだ入ってくる人
が多かったこともあり、場内がざわついて、
正直、半分も聞き取れない。

大道で演じたという、上方落語発祥のころの
雰囲気をちょっとだけ味わった。

新治「兵庫船」。たぶん2014年以来。大雪の
中で聞いたんだったな。最後に登場して鱶を
欺くのが、講釈師じゃなくて本物の蒲鉾屋・・
そうか、そうだった・・と、やっと思い出す。

新幸「時うどん」。上方らしいふたりバージョ
ンの時うどん。お江戸の時そばに比べて、断
然笑いが多いのは確か。

ただ、凍てついた夜の情景、そこですする熱
いそば・・という、思わずツバを飲む時そば
の世界にも、捨てがたいものはある。

両方あっていいんじゃない?

新治「ちりとてちん」。こちらはお初。いき
なり大橋さんという、「ふぐ鍋」と同じ名の
お客が登場したのにはちと驚く。

「なにかの会が中止になってあつらえた御馳
走が余った」という前提は無く、訪れた客を
もてなすうちに、腐った豆腐が登場・・

そして、この豆腐を「折に入れて紙を掛け、
『ちりとてちん』と品名を書く」というくだ
りも珍しい。たいていは空き瓶に入れるから。

妙なものを食べさせられた男の悶絶ぶりは、
意外におとなしい感じで、東京の演者の方が
(誰とは言わない)派手だなーと思った。

ゲスト・さん喬「笠碁」。新治師との交流に
ついてのマクラから、長い付き合いの碁友の
噺へ。

ここのところ、宮戸川から続けて笠碁という
かたちで何度か聞いたけれど、今回は純粋に
笠碁のみ。

ひとりが店の前を行ったり来たりし、もうひ
とりがそれを見て一喜一憂する、その場面の
表情の変化がなんとも楽しい。

サゲは、かぶり笠で終わらずに、ぐるっと回っ
て「待った!」に戻った。

仲入り後のトークは、東北だけでなく熊本で
も復興支援活動をしているおふたりの、様々
な思いを・・15分ほど。

新治「大丸屋騒動」。3回目で、大体の筋は
覚えていたけれど・・そうか、オチはこんな
だったっけ。それまでの深刻な内容をさっぱ
りと切り捨てる、なんとも馬鹿らしい・・
ま、だからこそ落語なんだけれど。

妖刀・村正に操られているかのように、次々
に人を殺める宗三郎の眼が、もう、狂気とし
か感じられないくらいの迫力。

個人的な話で申し訳ないが、前回9月のこの
会の時、突然に膝に激痛が来て、その後ひと
月も杖ついて歩く羽目になったのだった。

今回は?・・と心配しながら出かけたけれど、
おかげさまで無事帰宅。よかったよかった・・
posted by JTm at 10:11| 落語 | 更新情報をチェックする